第4話 教導


 授業は倒れた二人、主に黒条先生の復帰を待つため、残りの生徒は自習となった。ジンは二人を追うように後から保健室へと向かった。

「黒条先生いますか?」

 ガララッと扉を開けてそのまま質問を飛ばす。そこには藤里先生が居た。

「あら二度目ましてね。先生ならもう起きてるわよ」

 指さす先にはベッドの上で頭を抱える黒条先生の姿があった。

「何してるんですか?」

「自己嫌悪だよ! クソッまさか初日から生徒と引き分けるとかありえねぇ……」

「あはは、負けず嫌いなんですね」

「教師の沽券に関わる問題だぞこれは!」

「あれ、そういえば碧崎さんは?」

「話逸らしやがって……アイツなら俺より先に復帰しやがってどっかいったらしいぞ」

 黒条先生の言葉を肯定するように藤里先生が頷く。

「じゃあ丁度良かった。先生と二人で話がしたかったんです」

「あら、じゃあ私はおじゃまかしら」

「あ、いえ藤里先生なら、誰にも言わなさそうですし」

「まあ口は堅い方ね」

 黒条先生が頭を掻く。

「で? なんだよ話って」

 ジンは頭を下げる。

「先生! お願いします! 俺を〈上級者ハイクラス〉にして下さい!」

「……は?」

「俺、宝玉先輩に負けた事が悔しいんです。だから〈上限者〉の先生に教えを請いに来ました」

「ああ……そういう事ね……」

 黒条先生はしばらく思案したような様子で、その後パンッと手を打った。

「よし、いいだろう。ついてこい」

「あら黒条先生、授業はいいのかしら? まだ下校時間には早いわよ」

「いいのいいの、つーかあんな無様さらしてすごすごと教室戻れるかよ。ほとぼり冷めるまで俺は教室に顔出さねー」

「あらそれじゃDクラスはずっと自習かしら。可哀想に」

「誰がずっとなんて言ったよ。こいつの修行が終わるまでだ。〈上級者〉一人連れ帰ればクラスの連中も俺らの事見直すだろうさ」

 ジンが目を輝かせる。

「先生……!」

「おう任せとけ。必ずお前を〈上級者〉にしてやる。ただし命懸けなのは覚悟しとけ?」

「はい!」

 ベッドから飛び出す黒条先生。そのまま外へと向かう。ジンはそれを追う。藤里先生がそれを目で追いながら。

「また保健室ここの世話にならないようにね」

「「わかってます!」」

 保健室から二人声を揃えて出て言った。

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