おばあさん
増田朋美
おばあさん
おばあさん
パリ市内にも、雪がふって、大変寒い季節がやってきた。こうなると、一日中暖炉に薪をくべて、暖炉のそばから離れられない季節になってくるのである。寒い中で、みんな学校にいったり、仕事にいったりして、それぞれの日をすごしている。
そんな中、モーム家では、とても深刻な問題がおきていた。
「あーあ、またかあ。」
トラーは、食べ物がたくさん入っている食器を眺めながら、ため息をついていった。
「また、ご飯を食べてくれなくなっちゃったわ。残すどころか、全くといっていいほどご飯にてをつけてない。」
トラーの近くにいたチボーは、彼女がおかしくならないか、心配でたまらなかった。水穂さんがこちらにやってきてから、トラーが彼の世話を率先して引き受けているけど、彼女自信も精神疾患を持っているのを忘れないでもらいたい、と、チボーは思ってしまうのである。
「まあ、味が濃すぎるんだと、杉ちゃんはいっていたけど、日本の料理は味が薄いから、僕たちが追い付かなくて当たり前じゃないの。」
「そうだけど!」
トラーは、いつもの高い声でいった。
「あたしだってわかってるわよ、水穂、このまま食べないでいたら、どんどん弱っていっちゃうわよ!」
「そうだけどね。」
トラーにこういわれたら、チボーは君のことが心配だと言うことができなかったのである。
「杉ちゃんは、塩味で十分だといっていたけど、チキンブイヨンつかわなきゃ、お粥だってつくれないわよ、それくらい、わかるでしょ?」
「まあねえ、そうだけどね。」
「どの料理の本にだって、塩だけでお粥を作る方法なんて何も書いてないわ。こんなに、料理のことは気を付けているのに何がわるかったのよ!」
トラーの言う通り、彼女は、大量の料理の本を買い込んで勉強はしていた。チボーは、もうこうなったら、ちゃんと言わなくちゃならないなと、思い立ち、トラーに言い聞かせるつもりで、こういうのだった。
「だけど、君が買い込んだ本は、みんな健康な人を狙ってる本だろう?水穂さんのような特殊な病気のひとには、当てはまらないんだよ。君が一生懸命、水穂さんの世話をしたいのは、わかるけど、素人にはできないこともあるんだってば!」
「酷いこと言うわね!」
トラーは、予想外のことをいった。
「そんなこと言って、だれがご飯を食べさせるのよ。」
「そういうことじゃないよ。食べさせるとかそういうことじゃなくて、それよりも、作る相手が、どういうひとかを考えなくちゃ。君が買ってきた料理の本は、全部健康な人向きに描かれたものなんだ。そうじゃなくて、水穂さんみたいな、病気の人向けの食べ物をつくる本を、買ってこなくちゃ。」
「そんなもの、どこにあるというのかしら。」
「だから、よくある本屋さんには売っていないよ。買うんだったら、もっと、専門的なものを売っている本屋さんに行かなくちゃ。」
二人がそういうことを言い合っていると、一階の客用寝室の中から、誰かがひどくせき込んでいる声が聞こえてきた。
「すぐ行かなくちゃ。」
「ええ。」
トラーとチボーは、急いで、客用寝室にすっ飛んでいった。水穂さんと言って、ドアを開けると、水穂さんは、ベッドに寝たまませき込んでいる。二人は急いで、水穂さんの背中をたたくなどして、何とか、出すべきものを出しやすくしてやっているが、二人が知っている出すものは出ない。
「あたし、ベーカー先生呼んでくるわ。」
「僕は、杉ちゃんと君のお兄さんに連絡を。」
トラーは急いで玄関先から飛び出していった。一方チボーも、急いでスマートフォンを出して、電話をダイヤルする。
数分後に、トラーと一緒にベーカー先生がやってきた。ベーカー先生は、何やら深刻な顔だ。急いで水穂さんに薬を飲ませ、せき込むのをやめさせる。其れと同時に、だすべきものが大量に出たので、チボーもトラーも、一寸引いてしまったくらいだ。幸い、ベーカー先生が、口元にタオルを当ててくれたので、布団は汚さずに済んだ。直ぐに薬は効いて、水穂さんは、静かに眠り始めてしまった。ベーカー先生がかけ布団をかけなおしてやっていると、
「おい。大変だってなんだ?」
杉ちゃんとマークさんが、急いで部屋に入ってくる。ベーカー先生が、又何か言ったが、すぐにマークさんが、
「以前見た時よりも衰弱していますね。」
と、通訳したので、杉ちゃんもすぐわかる。
「まあそうなんだよ。どうしても、ご飯をたべてくれないで、今日で何日たつんだろ。早くご飯をたべて、体力付けてもらいたいものですね。このままじゃ、憚りさえも、ままならなくなる。」
杉ちゃんが、直ぐいうと、ベーカー先生は、マークさんの通訳を通して、それに気が付いた。
「そうですそうです。このままですと、排泄どころか、衰弱しすぎて、死んでしまいます。其れを、何とかするために、」
「そうか、早くご飯を食わさないとダメってことだな。」
と、ベーカー先生がそういう意味のことを言っているのをさえぎって、杉ちゃんが言った。
「しかしね。ここからが問題だ。よくこいつ、あ、失礼。トラーちゃんがご飯を一生懸命作ってくれているんだけど、ここでの味付けの基本は大体チキンだろ。水穂さんにとって、チキンとか、牛肉は、非常に敵対すべき食べ物であるというわけで。」
「だったら、何を食べさせたらいいのかしら、、、。」
杉ちゃんの発言に、トラーは大きなため息をついた。
「日本では、彼は何を食べて居ましたか?」
不意に、ベーカー先生がそういうことを聞いた。マークさんの通訳により、
「えーとねえ。まず初めに、たくあん一切れと、納豆と豆腐。あと野菜の漬物とか、そういうものだ。あとは、そばとか、、、。」
と、杉ちゃんは、そう答えた。
「納豆と豆腐位なら、最近の日本食が流行っているということで、こっちにもあるかもしれませんが、つけものという食べものは、こちらにはないですね。」
と、チボーがいかにも現実的なことをつぶやいた。
「何とか作るわけにはいかないのかしら?」
とトラーが聞くと、
「いやあ、漬物は作れないよ。だってまず初めに漬物の基盤となる、糠というものをつくらなきゃできないよ。こっちでは、糠を用意することはできないでしょ。」
と、杉ちゃんが言った。
「夏になれば、アボカドも手に入るんですけどね。でも、今は冬だし、アボカドは、どこの店にもありません。ほら、森のバターと言われてすごく栄養があるという果物なんですが。」
と、マークさんがいった。
「そうですね。あれは肉と同じくらい、貴重なたんぱく源として、こういうひどいアレルギーのある人には、素晴らしい食べ物なんですけどね。今は真冬だし、アボカドは、手に入らないでしょうね。」
ベーカー先生は、深刻な顔をして、そういう意味の事を言った。
「まあ、とにかくですね。漬物はここでは作れない。納豆や、豆腐もここで手に入れるのは難しいだろう。かろうじてあるとしては、そば粉が少し売っている程度だよな。しょうがない。そば粉を買ってきて、それでそば切りをつくって食わせることにするか。」
と、杉ちゃんは言っているが、よくそういう風に頭を切り替えられるなとほかのみんなは、あきれてしまうのであった。
「あとは、そばのつゆが手に入ればいいけれど、それは無理だよな。醤油もポン酢もないんだからな。」
「ごめんなさい。日本では、ずいぶん食べるものが沢山あるのね。こっちは、そば粉しかないなんて、はずかしい限りだわ。」
杉ちゃんがそういうことを言うと、トラーが小さい声でそういうことを言った。
「謝らなくたっていいんだよ。ないものを数えずに、あるものを数えて生きていく、って、ある文献にも描いてあったぜ。其れは、気にしないでいいの。あるものをとにかく、使っていけばそれでいいのさ。」
「そうなんですね。杉ちゃんはどこまで言っても明るいんですね。」
マークさんは、大きなため息をついた。
「明るくなくちゃしょうがないだろ。何でも明るく生きていかなくちゃ、くよくよしたってしょうがない。其れは、どこの国に住んでいても同じ。」
杉ちゃんはカラカラと笑う。
「とにかくですね。栄養剤を処方しておきますが、食べ物で栄養を取ることを、忘れないでくださいね。薬は、あくまでも、補助的なもので、人間の本来の動く動力は、食べ物でなければなりません。それは、はっきりしてください。」
ベーカー先生は、処方箋を書いて、マークさんに渡した。
「それでは、今回は、これで失礼いたしますが、まだ何かありましたら、直ぐに連絡をください。まだ、油断はできませんからね。」
マークさんの通訳で、それを理解した杉ちゃんは、
「ああ、分かりました。とりあえず、之にて一件落着。」
と言って、大きなため息をついた。マークさんが急いで、ベーカー先生を送り出しに行くが、トラーとチボーは、深刻な表情のまま、眠っている水穂さんの顔を見合わせた。
「何とか食べてくれたらいいんだけど。」
「そうだなあ。とりあえず、ベーカー先生の出してくれた薬が効けばいいけどね。」
杉ちゃんだけひとりニコニコしていた。
次の日、杉ちゃんは、マークさんのお手伝いのもと、粉屋さんに行って大量のそば粉を買い、それに水を混ぜ込んでそば切りをつくった。其れを鍋でゆでて、さらにもりつけ、皿をもって、客用寝室医行った。汁はないけど我慢しろと言いながら、水穂さんの口もとにそばをもっていく。ところが、水穂さんは、食べようとしないのだ。いくらそばをもっていっても、水穂さんは、顔を反対方向に向けてしまうのである。
「どうして、食べないんですか。なんで、食べようとしないんです。食べる気がしないのなら、口に出していってくれませんかね。」
チボーは、ちょっとイライラして、そういことを言った。
「食べる気がしないのは、なんでなんでしょうね。飲んでる薬の副作用で、食欲がなくなるとは、薬の説明書を読んだけど、どこにも書いてありませんでした。水穂さん、そういうわけでもないんですから、多少食欲無くても、食べるようにして下さい。」
さすがに日本人と違って、作った人に失礼だったという言い方はしないのであるが、とにかく食欲がなくても食べろというのは西洋的であった。杉ちゃんが、もう一度ほら、と言ってそばを差し出すが、水穂さんはどうしても食べようとしなかった。
「一体なんで、食べないんだろう。困ったなあ。人間は生きている限りは生きるようにしなければだめだと、僕たちは習ったんだけど、日本人はそうではないのかなあ。」
「まあ、そういうところを育てようというところは、非常に欠けている。まあそれは、日本人として、恥ずかしく思う。」
と、杉ちゃんは言った。
「杉ちゃん、水穂さんの昨日の着物、乾いたから持ってきた。」
と、トラーが水穂さんの着物をもって、部屋に入ってきた。
「とりあえず、全部は洗えないっていうけど、汚れのひどいところだけ洗っておいた。まあ、シミにはなるけれど、とりあえずやっておいたわよ。」
「お。ありがとう。助かるなあ。銘仙って意外に、洗えちゃうもんよ。」
杉ちゃんは、トラーにお礼を言った。
「それにしても、なんで、こんな変な柄の着物持ってるの?水穂、こんな着物が本当に素敵だとは思えないし。この銘仙っていうのは、そんなに着なくちゃならないものなのかしらね。」
「まあそうだけどさ。之ばっかりは、日本の歴史を変えなきゃいけなくなるから、変更はできないよ。」
杉ちゃんはそういうことを言った。
「変更はできないっていうことは。どうしても変えられないということなんですか?」
と、チボーが杉ちゃんに言った。
「そうだよ。まあ、しょうがないわな。水穂さんは、それを着用してなければならない身分だったって事だ。それは、日本の歴史上、しょうがないことなの。」
と杉ちゃんが言った。
「そうなのね。身分かあ。これが日本の歴史の難しいところだわ。こっちで同じものにあたる事例が何もないもの。何か同じものがあれば、もうちょっと、水穂の事、理解してあげられると思うのに。」
トラーがそういうことを言っている。確かに西洋には、えたという身分があるわけではないので、分かりにくいのかもしれない。
「きっとあたしたちには、理解できない苦しみだったんでしょうね。人種差別っていうのかしら。あたしたちは、絶対そういうことは体験した事はないし、一生水穂の事、理解できないだろうな。でも、理解なんかできなくたっていいわ。其れよりも愛情のほうが勝つってことは、ちゃんとあたしは知っているんだから。」
トラーは、続けてそういうので、チボーはちょっと複雑な気持ちになった。トラ、あんまり水穂さんの事は気にかけないでくれと思うのだが、彼女の思いは、水穂さんにあるらしい。
「まあ、気にしないでくれ。それより、水穂さんがご飯をたべないことの方が問題だよ。何とかして、水穂さんに、ご飯をたべてもらうように仕向けなくちゃ。」
「そうねえ。あたしたちが幾ら説得しても、通じないものねえ。叱ったらかわいそうなことになっちゃうだろうし。」
トラーの言う通り、西洋では人権の尊重という面では、日本よりかなり進んでいた。だから他人を平気で叱ったりしたら、変な人と見られることもある。
「じゃあ、どうしたらいいかなあ。」
「あたしも、なんか本でも読んで調べてみるわ。そうだ、まだ、私が辞めたリセの教科書が残っているかもしれないから、それで調べてみましょうか。」
不意に彼女がそういうことを言いだしたので、チボーは、そんなことしないでくれと思ってしまった。杉ちゃんに誘導されて、トラーが自分ではなく、水穂さんのほうに行ってしまうのを何とか食い止めたかったのだ。
「そういうとより、食べ物を探そう。其れよりも、納豆とか、豆腐とか、こっちにあるかどうか、探してみような。」
チボーはとりあえず、トラーの関心をこっちへ向けさせたかった。
「おう。そうしてくれ。できるだけ、日本の納豆に、近づけるものがいい。頼むよ。」
杉ちゃんにそういわれて、チボーは分かりました、と言って、とりあえずトラーと一緒に、その部屋を出た。何だか、とりあえず、水穂さんから離すことができてほっとした。そのまま、二人で、家の外へ出て、商店街に向う。トラーは、その間にも、水穂さんの事ばかり考えているようであったが、チボーにとっては、なんとしてもそれをやめさせることが、目下の急務なのだった
ふと、商店街の中に何か人垣があるのを見つけた。これは日本では絶対あり得ない話なのであるが、多民族な西洋では、こうして異民族が路上でパフォーマンスをしていることもよくある事なのである。
「あれれ、又誰かが路上で何かやっているのか。」
チボーが、その人垣を見てみると、近くにロマの旗があったので、
「ああ、またロマの人が何かやっているのかな。」
と、だけつぶやいておく。
「あたし、新聞で見たことあるのよ。」
不意にトラーがつぶやいた。彼女が、新聞を読むとは、チボーもびっくりしてしまったが、
「あの人、ロマの中でも有名な、占い師なんですって。占いをする前に、みんなの話を聞いてくれるから、すごい人気があるらしいわよ。」
と、彼女が言った。本来であれば、黙って通り過ぎてしまうところであるが、チボーも、ロマの人たちが、ながらく人種差別を受けて、迫害されてきたことは知っている。
「そうだ、あたし、ひらめいたわ!」
不意にトラーが、いきなりその人垣のほうへ行ってしまった。一体何をするんだろうと思ったチボーは、そのあとを追いかけていく。人垣の中心にいたのは、大変派手な服を身に着けた、間違いなくロマのおばあさんだった。何だかカードを広げて占いをしているようだ。彼女の前には、ひとりの女性がいて、家庭内での悩みなどを、おばあさんに聞いてもらっているようだ。トラーは彼女の話が終わるのを待って、おばあさんにこう尋ねた。
「あの、すみません。ちょっとお手伝いしていただきたい事があるんです。」
おばあさんは、ちゃんとわかってくれたようだ。はい、何でしょうか、としっかり聞いてくれる刺青をとった。之ならもう彼女に協力するしかないと思ったチボーは、もう言ってしまえと思いつき、彼女に水穂さんの写真を見せてこういうことを言った。
「実はこの男性なんですけど、日本に住んでいながら、日本人と同様には扱われずに差別をされ続けて生きてきました。いま、重い病気でこっちに来ているんですが、もう完全に生きる気力をなくしてしまったようで、誰が何といっても、話が通じません。どうでしょう、同じように差別的に扱われた経験者として、彼に、アドバイスというか、励ましていただけませんか?」
そう言って、チボーは、水穂さんの写真と、モーム家の住所を描いた紙をおばあさんに渡した。おばあさんは、ちょっと戸惑っているようであったが、
「その男の人ってどういうひとですか?」
と聞いてきた。その続きはトラーがした。日本の歴史上差別的に扱われていた身分だったせいで、無理をして生活しなければならなかったこと。そのせいで、体を疲弊させすぎてしまった事。トラーの話に、おばあさんの表情は最初は硬かったが、だんだん和らいできた。そしてトラーが、彼を自分は愛している、と、はっきり告げた時、おばあさんは明日の一時にそちらへ行くからといった。
チボーは、なんてこと言ったんだろうと思ったけれど、それは言わないで置いた。其れを言ったらトラーもおばあさん傷つくような気がしたので。
その日は、御願いだけして、すぐに自宅へ帰ったが、チボーはその帰り道の事を、まったく覚えていなかったのであった。
翌日。とりあえず、トラーとチボーは、一時にモーム家にやってきた。おばあさんは来るだろうかと思ったが、トラーは必ず来ると言った。チボーはできることならと思ったけれど、もう遅いかなとお思った。
そんなことを考えていると、インターフォンがなった。トラーが玄関の扉をガチャンと開けると、昨日のおばあさんが立っていた。昨日見せた、水穂さんの写真に倣ってきてくれたのだろうか、胸元が大きく開いた赤い服を着ている。ロマの民族衣装である。トラーはやっぱり来てくれたんですね、と言いながら、おばあさんを部屋へ招き入れた。おばあさんは、シズと名乗った。長年、路上で占い師をしていたが、ガ―ジョの人たちに頼みごとをされたのは生まれて初めてだという。其れも確かにそうだと思うけど、とトラーはそうごまかしながら、とにかく、この人を、励ましてやってくださいと懇願する。
部屋の中には水穂さんが眠っていた。しかし、数分後、水穂さんは、又せき込み始めた。おばあさん、今はシズさんと呼ばれている彼女は、水穂さんに優しくどうぞ、と声掛けをして、薬の入った吸い飲みを、水穂さんの口元にもっていってやった。水穂さんもこの人がどんな事情を抱えているのかすぐにわかったらしい。最初は、驚いて、吸い飲みの中身を飲み込めなかった。でも、シズさんは、にこやかに笑って、小さくつぶやいたのである。
「あなたも、貧しいから、病院へ行くこともできなかったのでしょう?」
シズさんの顔は本当に優しかった。そして、吸い飲みの中身を飲み終えた水穂さん体をそっと抱え起こして、そっと抱きしめてくれた。
トラーと、チボーは、こういう行為ができるのは、シズさんのような迫害された人じゃないとできないだろうな、と思った。そして、これを企画して本当によかったなと思うのであった。
おばあさん 増田朋美 @masubuchi4996
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