第11話
ところ変わって地上闘技場、さっきの騒音が聞こえたのか、人影はなかった。
「さて、エリク、この子たちを連れてきたは言いけど実際どうするの?」
「ええと……お前らにはまず契約紋を刻む。左腕を出せ」
二人ともスッと左手を差し出す。アイシャに掴まれていたガレリアの左手ははっきりわかるほどに震えている。
「じゃ……いくぞ……」
左手に契約紋を焼いていく。黒い紋章、火傷とは違う、血は出ない。ただ……
「キイイイイィィィィィッッ!!!!! 」
声にならないならない悲痛な叫び声が自然と出た。
しかし、タクトの口は歪んでいるように見えた。
「刻印完了。もう大丈夫だ、これで正式にお前らは俺の仲間になった」
「こ、これでまたアイシャ様のために戦えるのですね。それにエリク様、疑って殺そうとした身でもこうしておそばに御そばに置いていただき恐悦至極でございます」
流石は現役軍師、頭の回転は速いようだ。
「ここで新しく仲間になったお前らに歓迎の魔法をかけてやろう」
今から二人にかけるのは失明を治す魔法、しかしそんな魔法はない。
この世界では新しい魔法を作ることもできない。
なら考える限り可能なのは”合成魔法”だけか。
回復魔法と暗視魔法、これらを同時に発動してぶつける。
チャンスは一度、失敗したら自分の沽券にかかわるかもしれないがな……。
「リカバリーヒール! アンチブラインド! 上手くいってくれ!」
––ゴォォォォォォ
攻撃魔法ではないため派手な爆風はないものの、ぶつかった衝撃でソニックブームのような轟音が響く。
衝撃波で巻き上がった砂が砂塵となって二人を呑み込む。
「ゴホッゴホッ、なんだ砂煙で回りが見えないぞ……。ん?? どうして砂塵が見えているんだ」
一瞬の砂嵐が過ぎると目を見開いた二人が立っていた。
「成功か……、他人を助けたいと思ったことがない自分が人を治療した……」
合成魔法の成功と、過去いた世界では死んでもしなかった行為を平然とやってしまった自分に終始
「なぜ治った……? 偶然か? それとも神の恩寵か……、将又、本当に彼が”魔法”で治したのか」
「目の状態はどうだ? お前らの
「すげぇ、魔法ってすげぇよ! 絶対治らないって言われてる失明も治しちゃうなんて!」
ガレリアが 曇りなき赤眼を輝かせてこちらへ寄ってくる。
「偶然の産物か、それとも必然の賜物か、そんなことは俺もわからないが、”お前たちの目が見えるようになった”この事実は変わらない。だから俺に感謝なんてしなくていい」
「そんな事言わないでください、エリク様は助けてくれたじゃないですか! 先ほどは無礼を乞いましたがあなた様はまごうことなき本物の始祖様です! 崇拝させてもらいます、いや、させてください!!」
必死な懇願に平静を保っていた俺もさすがにたじろいでしまった。
「あぁわかったから迫り寄ってくるな、それと口調を直してくれ」
「ああごめん、ついつい憧れの人に会えたからうれしくて……」
憧れ? 俺そんな憧れられることしてたっけか?
「俺は何か憧れることをしてたのか?」
「それについてはは私から簡易的な説明いたします」
タクトもゆっくりとこちらへ地下よって来た。
「英雄エリクシード・スペリオルはメルクリア王国の建国者で人類史初の魔法使いである。その手から繰り出される魔法は一振りで一国を滅ぼすまでに強力であったという。メルクリアの伝承によるとこんな感じですね。詳しくは図書館に伺ってみてください」
「ふ~ん」
にしても伝承ってすごいな、大半が虚実か美化されている。
まあ最初から崇拝されるくらい名声があるなら誤解さい解けばすぐに馴染めそうか。
「じゃあ二人とも」今日はもう帰っていいぞ、それと何かない限りは普段と変わらず過ごしてもらっていいぞ」
「本当に良いのですか? ありがとうございます! 何かあったらすぐに駆け付けさせていただきます」
「それじゃーなエリク様」
二人はゆっくりと闘技場を後にしていった。
「こんな簡単に返してよかったの? 彼らは殺人未遂をしたのだしもっとキツイ命令を……」
「いいんだよあいつ等はのちのち重要な駒になる、それにキツイ罰にしたらそれこそ印象操作が不可能になる。召喚された国でいきなり好感度MAXってそれなんてハーレムエロゲーと突っ込みたくなるけどあるものは有用に使わないとな」
「はーれむえろげー?」
「いや気にしなくていい、じゃ俺らも帰るか歩きまくったから疲れた」
「わかったお城にもどりましょうか」
マジックスターター ~魔法使いが無双する~ 神城ハクア @haiime
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