第100話 霊視
それから晴南達は封木神社の下社で美咲を送り届けていた三緒と合流して、二実と三緒の車で美咲の家に向かった。
二実と三緒は車で美咲の家の前までやってくると家の近くに車を停めた。
そして晴南達が車から降りてきた。
すると麻衣子が三緒に尋ねた。
「そういえば三緒さん?美咲の機嫌どうでした?」
三緒が麻衣子に言った。
「美咲ちゃんかなりご機嫌ななめだったわ。」
麻衣子が三緒に言った。
「そうですか、どうやったら機嫌直してくれるかな??」
すると晴南が麻衣子に言った。
「ベリエのスイーツを持ってたら機嫌直してくれるでしょ。」
麻衣子が晴南に言った。
「さすがに今回はそれで機嫌を直すのは難しいんじゃない?」
すると二実が麻衣子に言った。
「結局美咲ちゃんの家を見るのが後回しになっちゃったわ。美咲ちゃんに悪い事しちゃったわね。」
三緒が二実に言った。
「今回は仕方なかったんじゃない。本当に色々ありすぎたからね。」
二実が晴南に尋ねた。
「美咲ちゃんの家の鍵は晴南ちゃんが預かってるんだっけ?」
晴南が二実に言った。
「はい、美咲から預かってます。」
拓也が二実に尋ねた。
「二実さん??悪い気配とかは感じますか??」
二実が拓也に言った。
「禍々しい気配を感じるわね。」
二実が三緒に尋ねた。
「三緒も感じるでしょ?」
三緒が二実に言った。
「うん、ちょっとこれは厄介かもね。」
長孝が三緒に言った。
「そういわれると見に行くのが怖いっすね。」
冬湖が長孝に言った。
「そうですね。なんだか私も見にいくのが怖くなってきました。」
すると晴南が冬湖と長孝に言った。
「いいわ、だったら私達で見てくるから長孝と冬湖は外で待ってて?」
長孝が晴南に尋ねた。
「いいんすっか??ハル姉??」
晴南が長孝に言った。
「ええいいわよ。」
冬湖が晴南に言った。
「晴南さん、ありがとうございます。」
麻衣子が晴南に言った。
「ていうかさ全員で美咲の家に入らない方がいいんじゃない?」
晃太が麻衣子に言った。
「そうだな、許可を貰っているとはいえ大勢で留守にしてる人様の家に入る訳にはいかないな。」
慌てた様子の晴南が晃太に言った。
「私は絶対見に行きたいからね!!」
それから話し合いの末に美咲の家に入るのは晴南と麻衣子と二実と三緒と拓也と優斗の6人になった。
他のメンバーは外で待機する事になった。
二実が外で待機するメンバーに言った。
「それじゃあみんなは外で待機しててね。」
二実が家の中に入るメンバーに言った。
「危ないかもしれないからいつでも玄関まで走って逃げれるように心の準備をしておいてね。」
晴南が二実に言った。
「分かりました。」
二実が言った。
「それじゃあ美咲ちゃんの家の中に入りましょうか。」
晴南達は美咲の家の玄関前までやってきた。
晴南は玄関の所に設置されている認証機器に美咲から借りたICカードをかざした。
ガチャという音と共にロックが解除された。
晴南はゆっくりと玄関の扉を開けた。
晴南達は慎重に玄関へと入っていった。
玄関には誰もいなかった。
晴南達は玄関の所で立ち止まって様子を伺った。
だが美咲の家の中はシーンと静まり返っており、物音は聞こえなかった。
二実がみんなに尋ねた。
「美咲ちゃんの家で起こった怪奇現象って確かこの家の1階で起こってたんだよね?」
麻衣子が二実に言った。
「はい。美咲が言うには、誰もいないはずの1階のダイニングからドスドス音が聞こえたり、ダイニングに置いてあるテレビが勝手についたりしたらしいです。後はダイニングの扉が勝手に開いたり閉まったりするらしいです。」
二実が麻衣子に言った。
「つまり怪奇現象は1階のダイニングに集中してるって事か。それじゃあまずダイニングから見てみましょうか。」
晴南達は玄関に靴を置いて一階の奥にあるダイニングへと移動した。
二実を先頭にしてダイニングの扉をゆっくりと開けた。
そして一人づつ慎重にダイニングへと入っていった。
そして晴南達は扉の前でダイニングを見渡したのだった。
三緒がみんなに尋ねた。
「そういえば晴南ちゃん達は美咲ちゃんの家によく来るんだよね??前回来た時は何か異変はなかったかな?」
すると優斗が三緒に言った。
「4日前の正午頃にここに来たんですけど、その時リモコンを触ってもいないのにそのテレビが勝手についたんです。しかも画面は真っ黒に表示されてて音量だけ最大になってました。」
晴南が優斗に尋ねた。
「えっ??そんな事あったっけ??」
優斗が晴南に言った。
「晴南には言わなかったんだけど、あの時そのテレビがリモコンに触ってもいないのに勝手についたんだ。」
晴南が優斗に言った。
「そうだったの??なんで教えてくれなかったのよ。」
優斗が晴南に言った。
「美咲が怖がると思って嘘をついたんだ。」
晴南が優斗に言った。
「もうこれからはちゃんと教えてよね。」
するとかすかに声のような音が聞こえた。
「よ・・・・こ・・・・・??」
晴南がキョトンとした様子で言った。
「えっ????」
晴南が横にいた麻衣子に言った。
「ねえ???麻衣子何か言った??」
麻衣子が不思議そうな顔で晴南に言った。
「えっ??何も言ってないけど。」
するとまたかすかに声が聞こえてきた。
「よ・・・・こ・・・・??」
晴南が麻衣子に言った。
「あれっ??やっぱり今何か聞こえたわよね。」
麻衣子が晴南に言った。
「よこって聞こえたわよね。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「二実さん、何か聞こえましたよね??」
すると麻衣子は二実と三緒が顔をこわばらせているのに気がついた。
麻衣子が二実と三緒に尋ねた。
「二実さん、三緒さんどうかしたんですか?」
すると再び声が聞こえてきた。
「・・・よ・・・こ・・・・??」
晴南が麻衣子に言った。
「ほらやっぱり。誰の声??」
麻衣子が晴南に言った。
「声はかすれてたけど女の子の声じゃないかな?」
すると今度は大きな女の子の声が響いた。
「よ!!!こ!!!」
晴南達は大きな声にびっくりしてダイニングの部屋の中をキョロキョロと見渡した。
するとダイニングの奥に一人の女の子が立っていた。
晴南がその女の子に気づいて言った。
「あれっ??あの子いつからいたの??」
ダイニングの奥にいつの間にか長い黒髪で紫色の服を着た女の子が顔を下に向けたまま立っていたのだった。
すると麻衣子が言った。
「ちょっと待って??あの子どうやって入って来たの??」
晴南が麻衣子に聞き返した。
「えっ??」
優斗が麻衣子に言った。
「あの子がダイニングに入ってくる方法がないって事だね。僕達は今ダイニングの扉の前を塞ぐように立ってる。僕達がこのダイニングに入ってから一度もこの扉は開けてないから、僕達に気づかれずにダイニングの奥に行くのは不可能だって言いたいんだよね。」
麻衣子が優斗に言った。
「うん、そう。」
ダイニングは廊下の最奥にあり、晴南達の前にあるダイニングの扉を開けて出入りするしかダイニングに入ってくる手段はなかった。
晴南が優斗に尋ねた。
「窓から入ってきたんじゃないの??」
優斗が晴南に言った。
「あの採光用の窓だと幅5センチもなさそうだし、無理じゃないかな。」
その女の子は下を向きながらかすれた声で言った。
「よ・・!!こ・・・!!」
「よ・・!!こ・・!!」
すると晴南がその女の子に尋ねた。
「ねえ???よこって何の事??」
するとその女の子は晴南達に方に自分の顔を向けた。
麻衣子が絶叫をあげた。
「キャー!!!」
顔を向けたという表現は正しくなかった。
なぜならその女の子には顔がなかったからだ。
頭や首はちゃんとあるのだ。
だが顔があるべき箇所に何もない。
顔があるべき箇所が暗闇によって塗り潰されていた。
顔があるべき所に文字通り何もないのだ。
ただ真っ暗な闇が広がっているのだ。
目や鼻などはなくただただ暗闇が広がっていた。
真っ暗闇の顔を持った女の子がそこに立っていた。
すると女の子の甲高くかすれた声が響いた。
「よ!!!こ!!!せ!!!顔を!!!よこせ!!!!」
すると二実が大声で言った。
「みんな!!逃げて!!」
晴南達は慌てて玄関まで全速力で走ったのだった。
そして慌てて玄関の扉を開けて外に逃げたのだった。
すると外にいた冬湖が晴南に尋ねた。
「大丈夫ですか??晴南さん??」
晴南が冬湖に言った。
「うん、平気よ。」
拓也が二実に尋ねた。
「あの子は何だったんですか?」
二実が拓也に言った。
「女の子の幽霊よ。相当にやばい幽霊だったけどね。」
麻衣子が二実に尋ねた。
「逃げなきゃ危険だったんですか?」
二実が麻衣子に言った。
「うん、危なかったと思う。美咲ちゃんもあれは避難して正解だったと思うわ。」
すると三緒が二実に尋ねた。
「でもどうするの二実??」
二実が三緒に言った。
「そうね現状お祓いもできないし、どうしよっかな。」
三緒が二実に言った。
「とにかく今日はもう帰らない?もうすぐ日が暮れちゃうし。」
晴南達が空を見上げるとすでに少し空が暗くなってきていた。
時間を確認するとすでに午後7時を過ぎていた。
二実が三緒に言った。
「そうね、そろそろ帰りましょうか。」
すると二実がみんなに言った。
「みんな明日もつき合ってもらっていいかな??色々と調べる必要もありそうだしね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます