第101話 確認したい事

7月3日午後1時、晴南達は九木礼町にあるとある場所の駐車場に集まっていた。


二実がみんなに言った。


「みんな来てくれてありがとね。」


晴南が二実に尋ねた。


「二実さん??九木礼温泉でなにをするんですか?」


二実が晴南に言った。


「九木礼温泉に泊ってるお父さんや健太君に今判明してる事を話しておこうと思ってね。」


すると晃太が二実に言った。


「健太に明井田が大変な事になってるって伝えないといけませんね。今日の夕方に明井田に帰るって言ってましたから。」


麻衣子が晃太に言った。


「そうだった、健太君にも明井田の事を話しておかないとね。」


晴南達は旅館兼温泉の九木礼温泉の駐車場にやってきたのだった。


九木礼町には二実が開こうとしている宿を除けば宿泊施設はこの九木礼温泉だけであった。


九木礼温泉は九木礼炭鉱の採掘時に発見された温泉で九木礼炭鉱が閉鎖になった後も九木礼温泉は引き続き営業を続けていたのであった。


九木礼温泉は石炭の採掘鉱から湧き出る熱水をくみ上げて温泉として利用しているのだった。


夏はお客が少ないが冬はスキー客がこの九木礼温泉をよく利用しており冬が繁忙期であった。


すると二実が慎吾に尋ねた。


「ねえ慎吾君?お父さん達いる?」


慎吾が二実に言った。


「美咲以外はみんな揃ってると。」


晴南が慎吾に聞き返した。


「えっ??美咲いないの?」


慎吾が晴南に言った。


「美咲はグルグルマートに買い物にいっとーとよ。」


晴南が慎吾に言った。


「そっか美咲はグルグルマートに行ってるのか。」


二実がみんなに言った。


「なら先にお父さんと健太君に話をしましょうか。」


晴南達は九木礼温泉の駐車場から九木礼温泉の建物の中に入っていった。


九木礼温泉の建物の中は白を基調とした明るい内装だった。


晴南達は九木礼温泉のロビーへとやってきた。


九木礼温泉のロビーにはいろいろな施設が揃っていた。


ゲームコーナーやマッサージチェアに加えて飲食スペースや漫画コーナーなどがあった。


この九木礼温泉のロビーにはエンタメコーナーが充実しておりここにいるだけでかなり時間を潰す事ができた。


そしてロビーのフロントには年配の女性が一人立っており、フロントの前には勇雄(いさお)が立っており年配の女性と話し込んでいた。


「明井田でそんな事が起こってるんですか??」


「ええですので、明井田に行くのは控えてもらいたいんです。」


「そうですね、行かない方が賢明ですね。」


するとフロントにいる年配の女性が晴南達に気がついて声をかけてきた。


「あら二実ちゃん?それにみんなもいらっしゃい??今日はどうかしたの?」


二実が年配の女性に言った。


「友里香(ゆりか)さん、こんにちは。お父さん達と話がしたくて来ました。」


すると慎吾が友里香(ゆりか)に言った。


「母しゃん、二彦(つぎひこ)しゃんと健太ば呼んでくれ。」


すると友里香(ゆりか)も独特の言い回しで慎吾に答えた。


「分かった、今呼ぶけんちょっと待っとてえな。」


友里香(ゆりか)はフロントに置いてある電話機を使って健太達に連絡をした。


すると拓也がフロントの前にいる勇雄(いさお)に声をかけた。


「ところで親父はここでなにしてるんだ?」


フロントの前に立っていた勇雄(いさお)が拓也に言った。


「明井田で異変が起こっているのをみんなに知らせて回ってるところだ。拓也こそどうしたんだ??」


拓也が勇雄に言った。


「二実さんについてきたんだ。」


すると二実が勇雄に言った。


「勇雄さんこんにちは。」


勇雄がみんなに言った。


「ああみんなこんにちは。」


すると三緒が二実に言った。


「ねえせっかくだし勇雄さんにも話しておいた方がいいんじゃない??」


二実が三緒に言った。


「そうね、その方がいいわね。」


それから少しして階段の方から声が聞こえてきた。


「みんなおはよう。」


「おはようございます。」


健太と二彦がロビーへと降りてきたのだった。


すると晃太が健太に言った。


「健太!!今日明井田に帰る予定だったろう??すまないが帰るのはダメなんだ。悪いが明井田に戻るのを延期してくれ!!」


健太が晃太に尋ねた。


「えっ??帰るのはダメってどうしてですか??」


晴南が健太に言った。


「それはね。ダメだからダメなの!!だから明井田に帰っちゃダメなのよ!!」


健太が晴南に尋ねた。


「だからどうしてですか???」


麻衣子が晴南に言った。


「晴南?こういう時にふざけちゃだめだって。」


すると二彦が二実に尋ねた。


「二実何かあったのか?」


二実が二彦に言った。


「実はさ今起こってる状況が分かったんだけど。」


二実は健太と二彦にリグロ達に教えてもらった事を全て説明した。


健太が驚いて尋ねた。


「異世界の女神セルティアが地球を支配してて、地球の人達を殺戮してるんですか?そしてその一派が明井田に来て明井田の人達を殺して回ってるんですか?」


二彦が驚いて聞き返した。


「フウキ様が復活した黒輪(こくりん)と組んで女神セルティアに対抗しようとしているだと??」


二実が二彦に言った。


「ええ、そして異世界の魔王ゼルゴンが私達を助けるためにリグロってオバケをここに寄越してるの。」


二彦が驚いた様子で二実に言った。


「何かが起こっているとは思っていたが、まさかそこまでの事態が起こっていたとはな。」


健太がみんなに尋ねた。


「明井田で集団自殺が多発してるんですか?」


晃太が健太に言った。


「ああセルティアの部下の象(しょう)が神通力を使って明井田の人達を集団自殺させているんだ。今の明井田に戻るのはとても危険だ。この九木礼に留まっていた方がいい。」


勇雄が言った。


「となると現状この九木礼が唯一の安全地帯だという事か。これでは迂闊に九木礼の外には出られないな。」


勇雄が健太に言った。


「健太君、ここはみんなの言うとおりここに残った方がいいだろう。状況が良くなってから、戻った方がいいだろう。」


健太が勇雄に言った。


「はい、分かりました。」


するとロビーに聞き覚えのある少女の声が響いた。


「みんなここに何しに来たの??」


晴南が声がした方を振り向くとそこには美咲の姿があった。


晴南が美咲に言った。


「あっ美咲、帰ってきたのね。美咲に話したい事があるんだけど。」


すると美咲が晴南に尋ねた。


「何??もうお祓いは終わったわけ??」


晴南が美咲に言った。


「いやまだ終わってないけど??」


美咲が晴南に言った。


「だったら何も話す事はないわ!!」


麻衣子が美咲に言った。


「待って美咲。少しは話を聞いて!!みんな美咲を心配してるんだよ!!」


美咲が麻衣子に言った。


「そう思うんだったら一刻もはやくオバケを家から追い払ってよ!!!」


美咲が大きな声で言った。


「いい!!オバケを追い払ってから、私を呼びに来て!!!」


美咲はそう言うとフロントの奥にある階段を上がっていた。


麻衣子がため息をしながら言った。


「とりつくしまもなかったわね。」


麻衣子が友里香(ゆりか)に尋ねた。


「友里香(ゆりか)さん??美咲昨日からあんな感じなんですか??」


友里香が麻衣子に言った。


「ええ。昨日帰って来てからずっと美咲ちゃんはご機嫌ななめだね。」


麻衣子が友里香に言った。


「そうですか。」


すると健太がみんなに尋ねた。


「先輩達はこれからどうするんですか??」


晴南が健太に言った。


「リグロさん達と協力していくつもりよ。」


晃太が健太に言った。


「セルティアの思惑を阻止するためにはリグロさんに協力した方がいいだろうからな。」


健太が晴南に言った。


「先輩?僕にも協力できる事があればなんでも言ってください。」


晴南が健太に言った。


「ありがと。」


すると二実が健太に尋ねた。


「それじゃあ健太君一つ確認したい事があるんだけど??いいかな?」


健太が二実に聞き返した。


「なんですか??」


二実が健太に尋ねた。


「柚羽(ゆずは)ちゃんが大火災の日に着ていた服装を教えて欲しいんだ。」


健太が二実に聞き返した。


「柚羽(ゆずは)姉さんの服装ですか??」


二実が健太に言った。


「教えてくれないかな?」


健太が二実に言った。


「あの日姉さんは紫色の服を着ていました。」


二実が健太に尋ねた。


「柚羽ちゃんって長い黒髪だったよね??」


健太が二実に言った。


「はい、そうです。」


晴南が二実に尋ねた。


「ちょっと待ってください!!なんでここで柚羽の話が出てくるんですか??」


すると二実は三緒の方を見つめた。


そして二実と三緒は顔を見合わせて同時に頷いた。


二実が晴南に言った。


「たぶんだけど、あの女の子の幽霊は柚羽ちゃんじゃないかなって思うんだよね。」


晴南が二実に言った。


「えっ??でも全然違いましたよ。」


すると優斗が晴南に言った。


「いやあながちそうとは言い切れないよ。柚羽は華奢(きゃしゃ)な体格だったし、髪も伸ばしてたよね。」


麻衣子が優斗に言った。


「それだけで柚羽だって言い切る事はできないんじゃないかな?」


すると優斗が二実に尋ねた。


「二実さん?健太に柚羽の服装を尋ねた理由を教えてもらえませんか?」


二実が優斗に言った。


「幽霊ってさ死んだときの服装でよく彷徨うの。だから健太君にあの日の柚羽ちゃんの服装を確認しておきたかったのよ。服装が同じだったら柚羽ちゃんの可能性が高いと思ってね。」


麻衣子が困惑した顔で言った。


「そんな???」


健太だけは晴南達の話の内容が分からずに困惑していた。


「一体どういう事ですか?」


二実は健太に美咲の家で起こった事を説明した。


「それじゃあ柚羽姉さんが内藤先輩の家に取り憑いてるっていうんですか??」


二実が健太に言った。


「健太君の話も総合すると恐らくね。」


麻衣子が二実に尋ねた。


「でも紫色の服ってだけじゃあ確証としては弱くないですか??」


すると健太が麻衣子に言った。


「堀川先輩??それじゃあその服を着た柚羽姉さんの写真を見ますか?」


麻衣子が健太に尋ねた。


「えっ?あるの??」


健太が麻衣子に言った。


「多分スマホにその服を着た柚羽姉さんの写真があったと思います。」


すると健太は自分のスマホを取り出してスマホ内の画像を調べ始めた。


少ししてスマホを見ながら言った。


「ありました。これです。」


健太はスマホの画面をみんなに見せた。


そこには全身紫色の服に身を包んだかわいらしい黒髪の小柄な少女が写っていた。


麻衣子が言った。


「この服、あの幽霊の女の子が着ていた服と瓜二つじゃない!!」


二実が麻衣子に言った。


「決まりだね。あの女の子はやっぱり柚羽ちゃんだね。」


すると健太が二実に尋ねた。


「もしかして柚羽姉さんをお祓いするつもりなんですか??」


二実が健太に言った。


「できればそうしてあげたいんだけど、フウキ様からお祓いをしないようにって言われてるのよね。だからそれ以外の方法を探ろうと思ってるんだけど?」


すると三緒が二実に言った。


「やっぱりリグロさん達の知恵を借りた方がいいんじゃない?オバケの事はオバケに聞いた方がいいと思うけど??」


二実が三緒に言った。


「うーん、まあそうなんだけど。オバケの助けを借りるって心の中になんかモヤモヤするものがあるんだよね。」


三緒が二実に言った。


「でもお祓いができないとなるともうリグロさん達の知恵を借りるしか方法がないでしょ。」


二実が三緒に言った。


「うん、まあそうだね。仕方ないか。」


すると健太が二実に言った。


「二実さん、僕も手伝わせてもらえませんか??たとえ幽霊でも柚羽姉さんが来ているかもしれないのなら、じっとはしてられません。」


二実が健太に言った。


「うん、もちろんいいよ。むしろこっちからお願いしようと思ってたぐらいだし。」


晴南が二実に言った。


「私達も手伝わせてください!!柚羽には何にもしてあげられなかったから、もし柚羽が幽霊になって困っているなら助けてあげたいんです。」


二実が晴南に言った。


「晴南ちゃんならそう言うと思ってたわ。もちろん手伝ってもらうつもりだから安心して。」


晴南が二実に言った。


「ありがとうございます。」


すると勇雄が二実に言った。


「二実君、色々と教えてくれてありがとう。私はここで失礼するよ。」


二実が勇雄に言った。


「いえ。」


二彦が二実に言った。


「それじゃあ二実、俺は勇雄さんと一緒に九木礼を回ってくる。」


二実が二彦に聞き返した。


「えっ??お父さんも一緒に??」


二彦が二実に言った。


「ああ勇雄さんと一緒に俺がみた事も九木礼の人達に説明しておいた方がいいと思ってな。」


勇雄が二彦に言った。


「それは助かります、では行きましょうか。」


そういうと勇雄と二彦はロビーから外に出ていった。


二人が出ていくのを見届けた後で二実がみんなに言った。


「それじゃあ私たちは封木神社に向かいましょうか。」




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