第99話 今後の方針

7月2日の午後3時を過ぎていた。


晴南達は再び封木山を登り封木神社の上社へとやって来ていた。


疲れた様子の晃太が言った。


「やっぱり封木山の頂上まで行ったり来たりするのはしんどいな。」


するとそれを聞いた晴南がケロッとした様子で晃太に言った。


「もうだらしないわね。これぐらい何ともないわよ。」


拓也が晴南に言った。


「大丈夫なのは俺と晴南と慎吾だけだぞ。」


晴南が見渡すとその3人以外は二実達も含めて全員が疲れた表情を浮かべていた。


晃太が晴南に言った。


「毎回こんな登山してたら体力が持たない。」


晴南が晃太に言った。


「普段から運動してないからこうなるのよ。」


すると拓也が晴南に言った。


「とはいえ用事の度に毎回封木山を上り下りするのはさすがに手間だろう。」


三緒が拓也に言った。


「そうね。封木神社の下社(しもやしろ)でリグロさん達と会話ができるといいんだけど。」


そして晴南達は少し休憩した後で上社の境内の中にある御神木の前までやって来た。


すると御神木の前に黒い球体の暗闇と甲冑姿の黒い影の騎士が姿を現した。


黒輪(こくりん)とリグロであった。


リグロがみんなに尋ねた。


「おやもう情報の整理はできたかのかい?」


すると優斗がリグロに言った。


「はい、ある程度ですが情報の整理はできました。僕たちの置かれている状況は理解できたと思います。みんなで今後の事を話し合っていたんですが、意見が割れてる状況なんです。」


晃太がリグロに言った。


「ただ俺達としてはリグロさん達と協力関係を築いていきたいという方向で話を進めています。」


リグロが晃太に言った。


「そうなのか??ありがとう。」


優斗がリグロに尋ねた。


「それで今後の事なんですが??」


リグロが優斗に言った。


「そうだった、すまない。今後の方針について話をするのを忘れていたな。この地球において象(しょう)の力はとても強大だ。とてもではないがしばらくはこの状況を変える事は難しいだろう。」


晃太がリグロに尋ねた。


「ではどうするんですか?」


リグロが晃太に言った。


「今のところ、象(しょう)の制御下から外れている地域はこの九木礼だけだ。だからこの九木礼に籠るつもりだ。」


晃太がリグロに言った。


「この九木礼に立て籠もって時間を稼ぐって事ですね。」


リグロが晃太に言った。


「ああそうだ。この九木礼が闇の勢力の勢力圏として確保できたのでさえ幸運だったからな。」


優斗がリグロに言った。


「象(しょう)がこの町以外の全ての地域を制御しているとなるとこの町の外には極力出ない方がいいですね。」


リグロが優斗に言った。


「ああその方がいいだろう。すでに象が本格的に動き出しているからな。」


拓也がリグロに尋ねた。


「でも九木礼に籠っているだけじゃ根本的な解決にはならないんじゃないですか?」


リグロが晃太に言った。


「地球だけを見ればそうなのだが、異世界ドルイアではゼルゴン様が直接セルティア神聖軍と対峙していらっしゃるからな。」


拓也がリグロに言った。


「そうか、ここだけじゃないんだった。異世界ドルイアではゼルゴンさん達の魔王軍が戦ってたんだったな。」


リグロが拓也に言った。


「ああ、ゼルゴン様は戦況を有利に運んでいらっしゃる。だから君たちをセルティアから守り抜く事ができればこちらの勝利と言えるだろう。逆に君たちを死なせてしまえば女神セルティアは君たちを異世界転生させて勇者として戦わせるはずだ。そうなれば我々の敗北だ。」


晴南がリグロに尋ねた。


「それじゃあリグロさんの1番の目的は私達を守り抜く事なんですか?」


リグロが晴南に言った。


「ああその通りだ。君たちが生き延びてくれる事がとても大事だからな。」


リグロが言った。


「もっともここから先はそう簡単にはいかないだろうが。象(しょう)も勇者の殺害ができていないと分かれば、君たちを再び殺しにくるはずだ。だからそれまでに象(しょう)を迎え撃つ準備を済ませなくてはならない。」


麻衣子がリグロに尋ねた。


「具体的にはどうするつもりなんですか?」


リグロが麻衣子に言った。


「九木礼にオバケ達を集結させて対抗するつもりだ。」


麻衣子がリグロに言った。


「九木礼をオバケの聖地にするって事ですか?」


リグロが麻衣子に言った。


「その通りだ。まずは九木礼に封印されているオバケの解放に動くつもりだ。」


麻衣子がリグロに尋ねた。


「地球の他の神様達は頼れないんですか??」


リグロが麻衣子に言った。


「地球の神々はフウキ殿以外は全てセルティアの軍門に下ってしまった。現状地球の神々はセルティアの配下だ。地球の神々に頼るのはかなり危険だ。」


拓也がリグロに尋ねた。


「それでオバケを頼ろうって訳ですか。でもオバケ達は消滅してしまったんじゃ??」


すると黒輪が拓也に言った。


「封印されていたオバケ達はまだ健在のはずだ。現にわしもこうやって健在じゃ。」


今度は二実がフウキ様に言った。


「そうだフウキ様にお願いしたい事があるんですが?」


フウキ様の声が響いた。


「なんでしょうか??」


二実が言った。


「下社(しもやしろ)でリグロさん達とこうやって会話する事ってできませんかね?いちいち封木山の頂上まで登ってくるのは大変なので。」


フウキ様の声が響いた。


「下社でリグロ様達と会話をする事は可能です。ではこうしましょう。用事がある時は下社の拝殿にきてください。リグロ様達と会話ができるようにしておきます。」


晃太が黒輪に言った。


「あとすいません。黒輪さんに一つお話したい事があるんですが?」


黒輪が晃太に尋ねた。


「何だろうか??」


優斗が黒輪に言った。


「お祓いをしようと思ってるんですけど??」


黒輪が優斗に言った。


「すまないが我々では神聖な儀式は行う事ができない。なにせ我々は闇の住人だからな。」


優斗が黒輪に言った。


「あいえ??そうではなくて美咲の家で怪奇現象が起きてるらしいんですが、お祓いしてもいいですかって確認をしにきたんです。」


黒輪が優斗に尋ねた。


「それをわざわざ確認しに来てくれたのか?」


優斗が黒輪に言った。


「はい。これから協力していこうって思ってますし、黒輪さんの知り合いかもしれませんから。」


黒輪が優斗に言った。


「そういう事か、気を使わせてしまったな。詳しい経緯を教えてもらえるか??」


二実達はこれまでの経緯を説明した。


黒輪がみんなに言った。


「なるほどな。すまないがお祓いは遠慮してもらえないか。」


晴南が黒輪に尋ねた。


「やっぱり黒輪さんのお知り合いなんですか?」


黒輪が晴南に言った。


「ああ、恐らくその子は象の手から逃げ延びた幽霊の一人だろうな。」


フウキ様の声が響いた。


「二実さん、私からもお願いします。お祓いはしないでもらえないでしょうか??」


二実が少し驚いた様子で聞き返した。


「えっ??フウキ様もですか??」


フウキ様の声が響いた。


「はい、彼女のお祓いはしないであげてほしいのです。」


二実が言った。


「分かりました。」


フウキ様の声が響いた。


「二実さん?まずは美咲さんの家を霊視してみてはどうでしょうか?何か分かるかもしれません。」


二実が言った。


「霊視ですか??そうですね、分かりました。」


二実は納得した様子だった。


晴南達は美咲の家に向かう事になった。


二実がみんなに言った。


「それじゃあこのまま美咲ちゃんの家に行きましょうか??」


晴南達は再び下社に下山していった。


そして黒輪とリグロとフウキ様だけがその場に残っていた。


リグロがフウキ様に尋ねた。


「フウキ殿??何かお考えがあっての事とは思いますが、彼らを行かせてしまって良かったのですか??」


黒輪がフウキ様に尋ねた。


「そうですな。あの子達にも協力してもらうという事はあの子達自身を危険に晒すという事に他なりませんぞ?」


フウキ様の声が響いた。


「ええもちろん理解しています。ただこれは晴南さん達に解決してもらいたい問題なのです。いえ少し違いますね。晴南さん達自身がこの問題解決を強く望むと思うのです。ですからあえて晴南さん達に行ってもらったのです。」

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