第71話 不審者
6月28日の正午過ぎ、晴南達は美咲の家の前にやって来た。
美咲の家は喫茶ベリエの近くにあり、木造三階建ての建物でかなり大きかった。
晴南達は美咲の家の前までやってくると玄関前に設置されているインターホンを鳴らしてみた。
だが何度かインターホンを鳴らしたが何の反応もなかった。
麻衣子が言った。
「やっぱり美咲はいないみたいね。何度インターホンを鳴らしても応答がないし。美咲の家の車もないみたいだしね。」
冬湖が麻衣子に言った。
「ご両親とどこかに出かけたのかもしれませんね。」
麻衣子が冬湖に言った。
「だから今日来なかったのかな?」
晴南がみんなに言った。
「しょうがないわね。美咲はいないみたいだし学校に行くわよ。」
すると冬湖がみんなに言った。
「あれは何でしょうか??」
晴南が冬湖に言った。
「えっ?」
冬湖が美咲の家の庭先を指さしながら言った。
晴南が冬湖が指さす方向を見てみると丸められた紙が転がっていた。
「何これ??」
冬湖が晴南に言った。
「上から落ちてきたみたいです。」
晴南がその紙切れを拾って広げてみた。
他のメンバーも晴南が広げた紙を見つめていた。
そして全員がぎょっと目を丸くする事になった。
「助けて」
丸めれた紙切れは大きな文字でそう書かれていた。
拓也が尋ねた。
「これはどこから落ちてきた?」
優斗が三階の部屋の窓を指さしながら言った。
「たぶんあそこの窓からだと思う。ほらあの窓少し開いてるでしょ。」
指さされた窓は確かに少し開いていた。
麻衣子が大きな声でみんなに言った。
「あそこは美咲の部屋よ?まさか美咲が助けを求めてるの。」
麻衣子が慌ててスマホを取り出して操作した。
晴南が麻衣子に言った。
「どう??美咲にはつながらない?」
麻衣子が首を振って晴南に言った。
「ダメやっぱりつながらないわ。」
麻衣子がみんなに尋ねた。
「どうしよう?」
すると晴南が晃太に言った。
「ねえ、晃太??ノートの紙を1枚ちょうだい??あとボールペンを貸して??」
晃太が晴南に言った。
「えっ??ああっ。」
晃太が自分のカバンから筆箱とノートを取り出した。
筆箱からボールペンを取り出して、ノートを広げて最後の方のページの1枚を破り取った。
そしてその1枚のノートとボールペンを一緒に晴南に手渡した。
晃太が晴南に尋ねた。
「どうするつもりだ??」
晴南は美咲の家の敷地内にあるブロック塀を下敷きにしてボールペンを使いさっきのノートに何かの文字を書いた。
そして晴南はそれをみんなに見せた。
その紙にはこう書かれていた。
「玄関を開ける方法を教えて。」
優斗が晴南に尋ねた。
「これをどうするの??」
晴南が優斗に言った。
「こうするのよ!!」
晴南はそう言うとその紙を丸めた。
そして三階の窓にめがけて丸めた紙を投げた。
その紙は美咲の部屋の中にうまく投げ込まれた。
晃太が晴南に言った。
「なるほど、これで美咲と会話しようって訳か。」
少ししてまた丸まった紙が落ちてきた。
今度は二つの丸められた紙が落とされた。
すぐに晴南は二つの紙が広げた。
そのうちの一つにはICカードが入れられていた。
そしてもう1枚の紙にはこう書かれていた。
「このカードを玄関の所でかざして。」
晴南がみんなに言った。
「美咲の部屋に行きましょう。拓也と晃太と優斗は私と一緒に来て。他のみんなはここに残ってて。」
全員が頷いた。
すると麻衣子が晴南に言った。
「晴南、気を付けてね。」
晴南が麻衣子に言った。
「うん。」
晴南は拓也と晃太と優斗と一緒に玄関前までやってきた。
晴南が言った。
「それじゃあ開けるわよ。」
三人が頷く。
晴南は玄関の所に設置されている認証機器に美咲が落としたICカードをかざした。
ガチャという音と共にロックが解除された。
晴南はゆっくりと玄関の扉を開けた。
玄関には誰もおらず、晴南達は静かに玄関フロアに侵入した。
晴南が小さな声で拓也達に言った。
「そこの階段から3階に行きましょう。」
三人が頷くと晴南を先頭にして階段を上っていった。
2階フロアまでやってきた。
晴南が慎重に2階フロアを覗く。
晴南が後ろにいる三人に言った。
「大丈夫、誰もいないわ。このまま3階まで行きましょう。」
再び晴南達は階段を上っていった。
そして晴南達は3階フロアまで到着した。
晴南が3階フロアへ入る扉を開けようとした。
だがその扉はロックされており開ける事ができなかった。
晴南が後ろの三人に言った。
「ロックされてるわ。」
晴南が大きな声で言った。
「美咲!!来たわよ?開けてちょうだい!!」
するとガチャっという音が聞こえた。
その後で晴南が扉をゆっくりと開けてみた。
今度はちゃんと扉を開ける事ができた。
扉を開けると美咲が震えた様子でこちらを見ていた。
そして美咲が目に涙をためながら晴南に抱きついてきた。
「晴南!!怖かったよー!!」
晴南が美咲に尋ねた。
「一体どうしたのよ??美咲??」
美咲が晴南に言った。
「下に誰かいるのよ??」
拓也が美咲に尋ねた。
「ご両親じゃないのか?」
美咲が拓也に言った。
「パパもママも今いないのよ。親戚の家に行ってるの。」
晃太が美咲に尋ねた。
「詳しく教えてくれるか??」
美咲が晃太に言った。
「昨日の夕方パパとママが親戚の家に出かけていったの。それで昨日は私が一人で留守番してたのよ。それで自分の部屋で寝てたんだけど、午前2時頃に何か物音がしたから目が覚めちゃったのよ。それで起きたんだけど、そしたら下の階からガタゴトってすごい音がしたの。何度も下の階から大きな物音が聞こえたから、それで慌てて3階入り口のドアのカギを閉めたのよ。それからずーっとこの3階に籠ってたの。」
晃太が美咲に尋ねた。
「警察には連絡してないのか?」
美咲が晃太に言った。
「しようと思ったけど連絡できなかったのよ。」
晴南が美咲に尋ねた。
「あれっ?美咲スマホ持ってなかったっけ?」
美咲が晴南に言った。
「故障してて使えなかったのよ。」
晴南が聞き返した。
「故障???」
そういうと美咲は自分のスマホを見せた。
ピンク色のかわいらしいスマホだったがスマホの下半分が茶色に変色していた。
晴南が美咲に尋ねた。
「何これ??もしかして美咲スマホを落としちゃったの?」
美咲が晴南に言った。
「机の上に置いてたら故障しちゃったのよ。」
美咲が晴南に言った。
「それで身動きが取れずに途方に暮れてたんだけど、外から晴南達の声が聞こえてきたの。それで不審者にきづかれないように紙を丸めて窓から落としたの。」
晃太が美咲に言った。
「なるほど、そういう事か。」
拓也がみんなに尋ねた。
「どうする?親父を呼ぶか。」
美咲が拓也に言った。
「拓也君お願い連絡して。」
優斗が拓也に言った。
「そうだね、勇雄(いさお)さんを呼んだ方がいいと思う。」
拓也が美咲に言った。
「よし俺のスマホで親父に掛けてみる。」
拓也が自分のスマホを取り出した。
すると驚いた様子で言った。
「なんだこりゃ??」
拓也はそう言って自分のスマホを凝視した。
拓也が言った。
「俺のスマホも変色してる!!さっき見た時は何ともなかったぞ!!」
拓也のスマホは黒色のスマホだったが下半分は美咲のスマホと同じように茶色に変色していたのだった。
拓也がスマホを操作しようとするが残念そうな様子で言った。
「だめだ、全然反応しない。」
拓也が晃太に言った。
「晃太??すまないがスマホを貸してくれないか?」
すると晃太が拓也に言った。
「無理だ。俺のも同じふうになってる。」
晃太はそう言うと自分のスマホを拓也に見せた。
晃太のスマホも二人のスマホ同様に画面の下半分が茶色に変色していた。
晃太が優斗に尋ねた。
「優斗??スマホは持ってきてないのか?」
優斗が晃太に言った。
「ごめん今日は持ってきてないんだ。」
晃太が晴南に尋ねた。
「晴南はスマホ持ってきてないのか?」
晴南が晃太に言った。
「持ってるわけないでしょ。あんなの毎日充電器の上に置きっぱなしよ。」
拓也がみんなに言った。
「そうなると、俺たちだけで格闘して不審者を捕まえるしかないな。」
優斗が拓也に言った。
「そうするしかないね。」
晴南が拓也に言った。
「この手で不審者を捕まえるのね。わくわくしちゃうわ。」
晃太が晴南に言った。
「晴南のそういうところ本当に頼もしい。」
晴南が晃太に言った。
「そうでしょう、そうでしょう。もっと褒めていいわよ。」
晃太が美咲に尋ねた。
「なあ美咲?何か武器になりそうな物はないか?」
と聞かれて美咲が奥からモップを二つ持ってきた。
拓也が言った。
「モップか?」
優斗が拓也に言った。
「ないより全然ましだけどね。」
晴南がみんなに言った。
「モップか、いいじゃない。いいじゃない。不審者と対決って感じで。」
二つのモップは晴南と拓也がそれぞれ一つづつ持つ事になった。
晴南がみんなに言った。
「さあ不審者を捕まえにいくわよ!!」
拓也が晴南に言った。
「ああ行こう。」
晴南が美咲に言った。
「美咲は3階でカギをかけて待ってて。」
美咲が晴南に言った。
「分かった。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます