第46話 二度目

一方その頃晃太と優斗は11号室の中で読書に没頭していた。


すると11号室に扉をノックをする音が響いた。


晃太が扉を開けると廊下には拓也と慎吾と長孝がいた。


晃太が廊下にいた三人に尋ねた。


「どうした?拓也?それに慎吾と長孝も?」


拓也が晃太に言った。


「先に下に行こうかと思ってな。」


晃太が拓也に言った。


「まだ早くないか?」


拓也が晃太に言った。


「少し時間があるから外に出て走り込みをしようと思ってな。」


慎吾が晃太に言った。


「しぇっかく広か広場があるけん体ば動かそうて思うて。」


長孝が晃太に言った。


「俺も松浦先輩と馬瀬山(ませやま)先輩と一緒っす。」


拓也が晃太に言った。


「晃太達にも伝えておいた方がいいと思ってな。」


晃太が三人に言った。


「そうか。分かった。」


晃太がそう言うと三人は階段の方に歩いていった。


すると11号室の中から優斗の声が聞こえてきた。


「どうかしたの?」


晃太は11号室の扉を閉めて部屋の中に戻った。


そして優斗に言った。


「拓也と慎吾と長孝が先に一階に降りていったんだ。」


優斗が晃太に尋ねた。


「そうなんだ?でもまだ早くない?」


優斗は部屋に備え付けられていた時計を見ながら言った。


時計は午前8時20分を指していた。


晃太が優斗に言った。


「時間まで外で走り込みをするつもりらしい。」


優斗が晃太に言った。


「なるほどね。」


優斗は納得した様子で再び本を読み始めた。


晃太も11号室の中で再び本を読み始めた。


少し経って11号室に扉をノックする音が響いた。


さらに廊下から晴南の声が響いてきた。


「晃太!!優斗!!出てきなさい。」


優斗が晃太に言った。


「あれっ?もう時間になっちゃったかな?」


晃太と優斗は部屋の時計を確認した。


11号室に備えつけられた時計は午前8時半を指していた。


優斗が晃太に言った。


「まだ8時半だよ?」


晃太が優斗に言った。


「また、まだよのネタじゃないのか?」


晃太と優斗が扉を開けて廊下に出た。


晃太が晴南に尋ねた。


「なんだ晴南?まだよ!のネタはもうやめてくれよ?」


晴南が晃太に言った。


「違うわ!時間になったから呼びに来たのよ!!」


優斗が晴南に言った。


「えっ?9時からでしょ?まだ8時半だよ?」


晴南が優斗に言った。


「前倒しする事にしたの!!だから呼びに来たの!!」


優斗が晴南に尋ねた。


「前倒しをするの??」


晴南が優斗に言った。


「そうよ、だから早く降りてきて!」


晃太と優斗は読んでいた本を急いで片付けて廊下に出た。


すると晴南が10号室の扉を叩きながら大きな声で叫んでいた。


「拓也!!慎吾!!長孝!!前倒しをするわ!!無駄な抵抗はやめて早く出てきなさい!!」


そして晴南は10号室の扉を開けて中を覗き込んだ。


晴南がきょとんとして言った。


「あれっ?拓也達いないじゃない。」


すると晃太が晴南に言った。


「ああ、拓也達なら外で走り込みをするって言ってたぞ?」


晴南が晃太に言った。


「えっ?それ本当?」


晃太が晴南に言った。


「ああ。」


晴南が晃太に言った。


「もう拓也ったら!勝手な行動されたら予定が狂うじゃない。」


晃太が晴南に言った。


「いや勝手な行動をしてるのは晴南だろ?予定を前倒しにしてるじゃないか?」


優斗が晴南に言った。


「たぶん午前9時までには戻ってくると思うから、それまで待ってたら?」


晴南が優斗に言った。


「あのね!!私は人に振り回される人生は嫌なの!!人を振り回す人生がいいの!!」


優斗が晴南に言った。


「それ、誇らしげに言う事じゃないよね?」


晃太と優斗は外に行った拓也達を呼びに行こうと晴南と共に一階へと降りていった。


ロビーには二実と三緒がまだ荷物の整理を続けていた。


二実が三緒に言った。


「全然段ボールが減ってかないわね。」


三緒が二実に言った。


「もう二実?荷物を片付けないからドンドンたまってくるんでしょう?整理整頓をする習慣をつけなきゃダメよ?」


二実が三緒に言った。


「もう三緒?そんな習慣をつける訳ないでしょ?整理整頓なんてつまらない事よ?探してる物がすぐに出てきたら、探す楽しみが無くなっちゃうでしょう?」


三緒が二実に言った。


「あのさ、そんなの暇な時にしかできないでしょ?急いでる時なんかどうするのよ?」


二実が三緒に言った。


「いい三緒?急いでるときは全力で脳を動かして、全力で探すの!限られた時間で物を探す、この切羽つまってる感じがいいんじゃない。」


三緒が二実に言った。


「あーもう聞いた私が馬鹿だったわ。」


そこへ晴南達が階段を降りてきた。


ロビーの前までやって来た晃太が二実に尋ねた。


「すいません、二実さん。」


晃太に気づいた二実が晃太に尋ねた。


「晃太君、どうかした?」


晃太が二実に尋ねた。


「拓也達ってまだ外から戻ってないですか?」


二実が不思議そうな顔で晃太に聞き返した。


「えっ?拓也君達?」


晃太が二実に言った。


「はい、拓也達ってまだ戻ってきてないですよね?」


二実が晃太に尋ねた。


「えっ?戻ってきてないって?どういう事?」


先ほどから晃太と二実の会話が噛み合っていなかった。


晃太が二実に尋ねた。


「十分くらい前に拓也と慎吾と長孝が二階から降りてきましたよね?」


二実が晃太に言った。


「ううん、拓也君は降りてきてないよ。慎吾君と長孝君も。」


晃太が二実に言った。


「えっ?拓也と慎吾と長孝は時間まで外で走り込みをするって言ってたんです。」


二実が晃太に言った。


「そうなの?だけど食器の片付けが終わってからずっとここにいたけど、晴南ちゃん達が降りてくるまで誰も降りてこなかったよ。玄関から外に出るのは無理だし?」


晃太が二実に尋ねた。


「外に出るのは無理ってどういう事ですか?」


二実が晃太に言った。


「玄関の鍵をまだ開けてないの。」


そう言うと二実はロビーの奥から玄関の鍵を見せた。


二階への階段はロビー近くの一箇所だけであり、二階から一階へ降りていく場合、必ずロビーの前を通らなければならなかった。


晴南が晃太に言った。


「ちょっと、なら拓也達はどこに行ったのよ?」


みんなが顔を見合わせた。


少しの間みんなが沈黙した。


二実が晃太に言った。


「それなら二階のどこかにいるんじゃないかな?」


優斗が二実に言った。


「あっ。確かに、そうかもしれませんね。」


晴南が晃太と優斗に言った。


「なら拓也達を呼びに行くわよ!」


優斗が晴南に言った。


「えっ?」


晴南が優斗に言った。


「拓也達が来ないと始められないでしょ?二人ともついてきて。」


すると二実がみんなに言った。


「それなら私も行くね。三緒はここにいて。」


晴南と優斗と晃太はすぐに二階に上がって行った。


二実はロビーからマスターキーを取ると、晴南達の後ろをついていった。


まず大広間から見ていく事になった。


大広間の扉に鍵はかかっておらず、晴南が大広間の扉を開けて中に入っていった。


晃太と優斗と二実も晴南に続いた。


晴南が大きな声で言った。


「拓也!!慎吾!!長孝!!前倒しで枕投げをするわよ!!観念して出て来てなさい!!」


晃太が大きな声で言った。


「拓也!!慎吾!!」


二実が大きな声で言った。


「拓也君!!」


優斗が大きな声で言った。


「長孝!!」


四人は大広間の中をくまなく確認していったが、大広間の中には誰もいなかった。


優斗がみんなに言った。


「ここにはいないみたいだね。」


晃太がみんなに言った。


「隣の部屋も確認していこう。」


四人が廊下に出ると、麻衣子と冬湖と由香が二階に上がってきた。


麻衣子が晃太に尋ねた。


「ねえ?晃太君?どうかしたの?」


晃太が麻衣子に言った。


「拓也達を探してるんだ。」


麻衣子が晃太に尋ねた。


「探してるってどういう事?」


晃太が麻衣子に言った。


「晴南と一緒に拓也達を呼びに来たんだが、どこにも見当たらなくてな。」


麻衣子が晃太に言った。


「分かった、なら私も手伝うね。」


冬湖が晃太に言った。


「私もお手伝いします。」


由香が晃太に言った。


「わ、私も。」


晃太が冬湖と由香と麻衣子に言った。


「三人とも頼む。」


その後みんなで手分けして二階の各部屋を確認していった。


だがいくら探しても拓也達を発見する事はできなかった。


二階を探し終わって一旦二階の階段前の廊下に集まっていた。


すると三緒も二階に上がってきた。


三緒が二実に尋ねた。


「二実どう?拓也君達いた?」


二実が三緒に言った。


「だめどこにもいない。」


優斗が晃太に言った。


「三人ともどこに行ったんだろう?」


晃太が優斗に言った。


「一階に降りていないなら、二階のどこかにいるはずなんだが?」


二実が三緒に尋ねた。


「行き違いになって一階に降りてったとか?」


三緒が二実に言った。


「それはないわ。あの後ずっとロビーにいたけど拓也君達は見てないわ。」


晴南が麻衣子に尋ねた。


「もしかして、窓から外に出たんじゃない?」


麻衣子が晴南に言った。


「ここは二階なのよ?なんでそんな危ない方法で外に出なくちゃならないの?」


麻衣子が晴南に尋ねた。


「晴南?何か企んでるんじゃないでしょうね?」


晴南が麻衣子に言った。


「しないわよ、そんな事。」


三緒が二実に言った。


「二実?一応聞くけど、今回も何もしてないわよね?」


二実が三緒に言った。


「当たり前でしょ。」


晃太がみんなに言った。


「ともかく、二階にはいないみたいだ。次は一階と建物の外を探そう。」


みんなは一階を探そうと階段を降りていった。


その時、悲鳴が聞こえてきた。


「きゃーー!!」


麻衣子がみんなに言った。


「美咲の声よ。」


晃太が麻衣子に尋ねた。


「美咲はどこにいるんだ?」


麻衣子が晃太に言った。


「五号室にいるはずよ。」


みんなは慌てて階段を降りて一階の五号室へと向かった。


麻衣子が一番先に五号室の扉を開けて入っていった。


五号室の中には美咲と亜美と七緒の三人がいた。


美咲は畳の上で腰を抜かしていた。


麻衣子が美咲に尋ねた。


「ちょっと美咲?一体どうしたの?」


美咲は怯えた様子で麻衣子に言った。


「あそこにいたのよ。」


麻衣子が美咲に尋ねた。


「いたってだれが?」


美咲が麻衣子に言った。


「男の子よ、小さな男の子がいたの!」


麻衣子が美咲に聞き返した。


「男の子?」


美咲が震えた様子で麻衣子に言った。


「そう小さい男の子がいたのよ。天井から顔を出して私達を覗き込んでたのよ。」


美咲はそう言うと天井を指さした。


麻衣子が美咲に尋ねた。


「ごめん、美咲何を言ってるの?」


美咲が慌てた様子で言った。


「本当なのよ!!」


すると冷静な声で七緒が言った。


「本当にいたよ。10歳くらいの坊っちゃん刈りの男の子が天井から私達を覗き込んでたの?紺色のセーターを着てた。天井から蒼白い顔と上半身を出して私達をじっと見てたよ。」


美咲が大きな声で言った。


「本当よ!本当に見たのよ!!」


麻衣子が美咲に言った。


「とにかく落ち着いて美咲。」


すると晴南が言った。


「さっき私がみた子かもしれない。」


優斗が晴南に言った。


「えっ?」


晴南が優斗に言った。


「さっき言ったでしょ?廊下を誰かが通っていた気がするって?私が見たのはその子かもしれないわ。」


すると二実がみんなに言った。


「美咲ちゃんが見たっていう男の子はたぶん生きた子じゃないと思う。」


七緒が三緒に尋ねた。


「ねえ?お姉ちゃん?あの子まだこの部屋にいるの?」


三緒が七緒に言った。


「ううん、今はいなくなったけど。私もさっきから見えてたわ。」


晃太が三緒と二実に尋ねた。


「二実さん?三緒さん?一体何の話をしてるんですか?」


七緒が晃太に言った。


「お姉ちゃんは見えるの。」


晃太が七緒に尋ねた。


「見えるって何が?」


七緒が晃太に言った。


「幽霊が。」


三緒がみんなに言った。


「こういう事を言うと戸惑うと思うんだけど。私達は幽霊とかが見える体質なの。」


晴南が三緒に尋ねた。


「幽霊って実在するんですか?」


三緒が晴南に言った。


「まあ少なくとも私には見えるわ。」


美咲が二実に尋ねた。


「それじゃあ私が見た男の子は?」


二実が美咲に言った。


「生きてる子じゃないわ。たぶん数十年も前に亡くなった子供の霊だと思う。たぶん病気かなんかで死んじゃってそうとは知らずにずっとさまよい続けてるんじゃないかな?」


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