第47話 ポルターガイスト
5号室の中に全員が集まっていた。
晴南が七緒に言った。
「ていうか七緒?三緒さんって幽霊が見えるって、なんで今まで教えてくれなかったのよ?」
七緒が晴南に言った。
「晴南に教えたら面倒くさいと思ったから。」
晴南が七緒に言った。
「えー、何それ?」
麻衣子が晴南に言った。
「いや正解だわ。そんな事を晴南に教えたら、毎日肝試しに行くでしょ?」
晴南が麻衣子に言った。
「そんなの当たり前でしょ?」
麻衣子が七緒に言った。
「そんな事になったら、ゆっくり昼寝できなくなるもんね?」
七緒が麻衣子に言った。
「その通り。」
三緒が晴南に尋ねた。
「晴南ちゃん達は私のいう事を信じてくれるの?」
晴南が三緒に言った。
「もちろん信じます。三緒さんや二実さんが嘘つくわけないですから。」
三緒が晴南に言った。
「ありがとう。」
二実がみんなに尋ねた。
「幽霊とかって非科学的って思ったりしない?」
すると晃太が二実に言った。
「科学で分からない事なんてまだまだいっぱいあります。それにこの二日間で不可解な事をもう何度も体験してますから、俺としてはむしろ幽霊でも何でもいいから答えが欲しいぐらいです。」
美咲が晴南に大きな声で言った。
「ねえ晴南?なんでそんなに楽しそうなのよ!!」
晴南が美咲に言った。
「えっ?だって凄い体験でしょ?」
美咲が晴南に尋ねた。
「晴南もあの子の幽霊見たんでしょ?」
晴南が美咲に言った。
「うん、廊下を通っていく所を目撃しちゃったかも。」
美咲が晴南に言った。
「そうでしょ?ならやっぱり怖いよね?」
晴南が美咲に言った。
「ううん、別に。」
美咲が大きな声で晴南に言った。
「この後幽霊に襲われるかもしれないのよ?祟られてるかもしれないのよ!!なんでそんなにケロッとしてられるのよ!!!ふざけないでよ!!」
晴南が美咲に言った。
「もう美咲?怖いからって私に当たらないでよ。」
美咲が大きな声で晴南に言った。
「別に怖くないわよ!!」
晴南が美咲に尋ねた。
「本当に?」
美咲が晴南に言った。
「本当よ!」
すると晴南が美咲の後ろを指さしながら大きな声で言った。
「あっ!美咲の後ろにあの子の幽霊がいるわ!!」
美咲が大きな声を出して驚いた。
「きゃーーー!!」
そして腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。
晴南が美咲に言った。
「嘘よ。やっぱり怖がってるじゃない?」
美咲は立ち上がると剣幕な顔で晴南に言った。
「もう晴南!!いい加減にしてよ!」
晴南が美咲に言った。
「怖くないって言ったのは美咲でしょ?」
すると亜美が晴南と美咲に言った。
「美咲さん、晴南さん、喧嘩はダメです。」
美咲が晴南に言った。
「悪いのは晴南でしょ!!いい加減にしてよ!!」
晴南が美咲に言った。
「ごめん美咲、そこまで怖がるとは思わなかったの。ねえ?謝るから許してよ。」
だが美咲の怒りは収まらなかった。
美咲が晴南を睨みながら大きな声で言った。
「もう許せる訳ないじゃないの!本当にビックリしたんだから!!」
美咲が大きな声で言った。
「ああ!!もう!!昨日も幽霊見てるのよ!!なんで私ばっかりこんな目に合わなきゃならないのよ!!さっきの幽霊も昨日の黒い奴も一体なんだっていうのよ!!もういや!!」
二実が美咲に言った。
「美咲ちゃん、こんな事になっちゃってごめんね。」
麻衣子が美咲に言った。
「美咲、怖い気持ちはよく分かるけど騒いでも始まらないわ。」
美咲が麻衣子に言った。
「麻衣子はさっきの子を見てないから平然としてられるのよ。」
麻衣子がやさしく美咲に言った。
「そうかもしれない、でもお願いだから落ち着いて。」
その後で麻衣子に諭されて美咲は落ち着きを取り戻していった。
しばらくして優斗が二実に尋ねた。
「二実さんは今回の出来事は何が原因だと考えてるんですか?」
二実が優斗に言った。
「うーん、正直言うと私も判断に困ってるのよね。」
すると二実が美咲に尋ねた。
「ねえ?美咲ちゃん?さっき昨日の黒い奴って言ってたよね?怖い気持ちは分かるんだけど、もし良かったらその昨日の黒い奴を詳しく教えてくれないかな?」
麻衣子と美咲と由香がお互いの顔を見合わせた。
そして三人が納得した様子で頷いた。
すると晴南が麻衣子に尋ねた。
「ねえ?昨日何があったのよ?もったいぶらないではやく教えてよ?」
麻衣子が晴南に言った。
「実はさ、昨日の夕方頃に上社で変な物を見たのよ。」
晴南が麻衣子に聞き返した。
「変な物って?」
麻衣子が晴南に言った。
「うまく言えないんだけど、真っ黒な奴が浮いてたの?」
晴南が麻衣子に尋ねた。
「真っ黒な奴が浮いてたってどういう事??」
麻衣子が晴南に言った。
「だからうまく言えないって言ったでしょ?」
二実が何かを考えている様子で言った。
「真っ黒な奴が浮いてたか。」
晴南が麻衣子に言った。
「イメージしにくいわね。もっと上手く説明してよ?」
麻衣子が晴南に言った。
「だから私だって訳分かんないの!」
だが二実は何かを考え込んでいる様子だった。
そして二実が麻衣子に尋ねた。
「ねえ麻衣子ちゃん?その真っ黒な奴ってどんな形だった?詳しく教えてくれないかな?」
麻衣子は思い出しながら二実に言った。
「うーん、ボールみたいな球形でした。」
二実が麻衣子に言った。
「ボールみたいな球形か、なるほどね。」
すると麻衣子が晴南に尋ねた。
「そう言えば、晴南もさっき幽霊を見たって言ってたでしょ?晴南が見た幽霊も小さな男の子だったの?」
晴南からの返事は返ってこなかった。
麻衣子が再び晴南に言った。
「ねえ晴南?」
だが晴南からの返事は返ってこなかった。
「ちょっと晴南?返事くらいしてよ?」
だが晴南は何も麻衣子に答えなかった。
すると麻衣子が慌てた様子でキョロキョロとしだした。
そしてみんなに尋ねた。
「ねえ?晴南はどこにいったの?」
三緒が麻衣子に言った。
「晴南ちゃんならそこにいるよ?あれっ?」
三緒は晴南がいた所に視線を向けたが、晴南の姿は無かった。
三緒は部屋の中を見渡したが晴南の姿はどこにもなかった。
三緒がみんなに言った。
「あれっ?晴南ちゃんどこにいっちゃったの?」
みんなが部屋の中を見渡して確認したが部屋の中に晴南の姿は無かった。
晃太がみんなに言った。
「晴南が見当たらないぞ?どういう事だ?」
麻衣子がみんなに言った。
「冬湖と亜美もいないわ。」
美咲が麻衣子に言った。
「ちょっと嘘でしょ?」
麻衣子が大きな声で言った。
「晴南?ふざけてるの?ふざけてるなら怒るよ!!」
だが晴南からの返事は無かった。
すると美咲がみんなに言った。
「きっとこの部屋の押し入れにでも隠れてるのよ。それで私達を驚かそうとしてるのよ!」
その一言ですぐに手分けをして5号室の中の隠れられそうなスペースを探す事になった。
収納スペースやトイレやバスタブなど隠れられそうな場所を全て探したが誰も見つける事はできなかった。
探し終わると全員の顔が青ざめていた。
麻衣子がみんなに言った。
「ついさっきまで晴南と話してたのよ?」
美咲が大きな声で言った。
「晴南ここにいたよね?ちゃんとこの部屋の中にいたよね?」
晃太が美咲に言った。
「ああ、晴南は美咲の悲鳴を聞いて一緒にこの部屋の中に入った。そしてついさっきまでこの部屋の中にいたはずだ。」
二実が晃太に言った。
「うん、確かにさっきまでみんないたよ?晴南ちゃんも冬湖ちゃんも亜美ちゃんも。」
晃太がみんなに言った。
「扉への通路の所には三緒さんがいたから、扉から廊下に出ていったとは思えない。この部屋の窓も内側から鍵がかかっているから窓から出てったとも思えない。ましてやみんなに気づかれずに脱出するなんて不可能だ。」
三緒が晃太に言った。
「うん、晃太君の言う通り通路の所にいたけど、誰も廊下には出てないわ。」
二実が晃太に言った。
「もうこの部屋の中で隠れられる場所なんてないしね。」
美咲が麻衣子に言った。
「ありえないでしょ麻衣子?晴南は私達のすぐ横にいたんだよ?どうやったらいなくなるっていうの?」
麻衣子が美咲に言った。
「そんなの私が教えて欲しいわ。」
優斗が晃太に言った。
「晴南も亜美と冬湖も間違いなくさっきまでいたよ。なのに今は姿が見えない。忽然と三人が消えちゃった。」
晃太が優斗に言った。
「人間が突然消えるなんて普通なら絶対にありえない。ただ晴南が驚かそうとしている可能性はまだ残ってるんじゃないか?」
優斗が晃太に言った。
「その可能性はやっぱりないと思うよ。冬湖や亜美が人を困らせる事を進んでやるとは思えない。そして何よりもこの部屋の中に物理的に隠れていられる場所がない。通路の所には三緒さんがいたし、窓には鍵がかかってた。」
晃太が優斗に言った。
「となるとやはり心霊現象か何かって事か。」
晃太がみんなに言った。
「ともかくこの部屋の中には晴南達はいなかった。部屋の外を探そう。」
全員が頷いた。
そして廊下に出るために扉の所に移動した。
するとカチカチという金属音が聞こえてきた。
カチカチ・・カチカチ・・。
晃太がキョロキョロとしながら言った。
「んっ?何の音だ?」
するとカチカチという音は大きく乱暴な音になっていった。
ガチャガチャ・・!!ガチャガチャ・・!!
ガチャガチャ・・!!ガチャガチャ・・!!
優斗が部屋の扉を指さした。
「あっ、あれ!!」
見ると五号室の扉のドアレバーが激しく揺れていたのだ。
五号室の扉の前には誰もおらず、誰もドアノブを触っていなかった。
にも関わらずドアノブは激しく揺れており、金属音はそこから聞こえてくるのだった。
晃太が大きな声で言った。
「なんでドアノブが動いてるんだ?」
美咲が大きな声で言った。
「そうか!晴南よ!晴南が外から悪戯してるんだよ。きっと!」
誰も触っていないドアノブが激しく揺れていた。
ガチャガチャ・・・!!ガチャガチャ・・・!!
ガチャガチャ・・・!!ガチャガチャ・・・!!
ガチャガチャ・・・!!ガチャガチャ・・・!!
その乱暴な金属音が突然消えた。
そしてキィーという音と共に5号室の扉が勢いよく開いたのだった。
だが扉が開けられても誰かが入ってくる事はなかった。
5号室の扉は開けられたまま、5号室の中は静けさを取り戻していた。
みんなが呆然と扉の方を見つめていた。
すると美咲が大きな声で言った。
「晴南!!分かってるわ!!私達を脅かそうとしても無駄よ!!」
すると優斗が二実に尋ねた。
「二実さん?この部屋の鍵っていくつあるんですか?」
二実が優斗に言った。
「えっ?一つだけだよ。」
すると優斗が美咲に言った。
「となると、あれは晴南の仕業じゃないと思うよ。」
麻衣子が優斗に尋ねた。
「どうして優斗君?」
優斗が麻衣子に言った。
「ほら部屋の奥に置いてある机の上にこの部屋の鍵が置いてあるでしょ?」
優斗が指さした先には木製の大きな机があった。
その机の上には確かにこの5号室の部屋の鍵が置かれていた。
優斗が二実に尋ねた。
「確かマスターキーは二実さんが持ってましたよね?」
二実が優斗に言った。
「ええ、そうよ。」
晃太が納得した様子で優斗に言った。
「なるほどな、この部屋は三緒さんが室内からロックをしていた。そしてこの部屋の扉を開けられる鍵は二つだけ。机の上に置いてある鍵と二実さんの持っているマスターキーのみ。仮に晴南が廊下にいたとしても、この部屋のロックを解除できないって事だな。」
優斗が頷いた。
「うん。」
麻衣子が晃太に言った。
「でもだったら誰がドアノブをガチャガチャしてたの?」
その麻衣子の問いには誰も答えられなかった。
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