第45話 日曜の朝

日曜日の朝がやってきた。


11号室では晃太と優斗が話をしていた。


晃太が優斗に言った。


「ちょっとまだ眠いな。」


優斗が晃太に言った。


「昨日は深夜までヒートアップしてもんね。」


晃太が優斗に言った。


「まさか枕投げであそこまで盛り上がるとは思わなかったな。」


優斗が部屋に備え付けられた時計で時間を確認した。


そして晃太に言った。


「まだ5時過ぎだし、もう少しゆっくり寝てても良かったんじゃない?」


晃太が優斗に言った。


「いやだめだ。生活のリズムを崩すような事はしない方がいい。優斗こそ、もっとゆっくり寝てれば良かっただろう?」


優斗が晃太に言った。


「本の続きが気になって目が冴えちゃったんだよね。」


晃太が優斗に言った。


「読書もほどほどにな。まあ人の事を言えた義理じゃないが。」


優斗が晃太に尋ねた。


「どうする?もう下に降りてみる?」


晃太が優斗に言った。


「まだみんな寝てるかもしれない。みんなが起きてきてからでいいだろう。」


優斗が晃太に言った。


「それもそうだね。それじゃあ本を読もうか。」


晃太と優斗は読書をしながらみんなが起きてくるのを待った。


午前7時を過ぎてくると一階から賑やか声が聞こえてきた。


少し経つと11号室の扉がノックされた。


晃太が扉を開けると三緒が廊下に立っていた。


晃太が三緒に言った。


「三緒さん、おはようございます。」


三緒が晃太に言った。


「おはよう、晃太君。優斗君は起きてる?」


すると優斗も扉の所までやって来た。


優斗が三緒に言った。


「おはようございます、三緒さん。」


三緒が優斗に言った。


「おはよう、優斗君。朝ごはんができたからみんなを呼びに来たのよ。」


優斗が三緒に言った。


「すいません、わざわざありがとうございます。」


晃太が三緒に尋ねた。


「晴南達はもう起きてるんですか?」


三緒が晃太に言った。


「うん、七緒以外はもうみんな起きてるわ。」


すると10号室の扉が開いた。


そして10号室より拓也が廊下に出てきた。


三緒が拓也に言った。


「あっ!拓也君、おはよう。」


拓也が三緒に言った。


「おはようございます。」


三緒が拓也に言った。


「朝ごはんができたから知らせにきたんだけど、慎吾君と長孝君ってもう起きてる?」


拓也が三緒に言った。


「ええ、二人とも起きてます。俺から伝えておきますよ。」


三緒が拓也に言った。


「ありがとう。それじゃあお願いしていいかな?」


拓也が三緒に言った。


「ええ、構いません。」


そう言うと三緒は一階へと降りていった。


晃太と優斗はそのまま一階に向かった。


そして晃太と優斗は食堂へとやって来た。


すでに食堂にはみんなが集まっており配膳の準備が終わっていた。


晃太がみんなに言った。


「みんなすまないな、朝食の準備をさせちゃって。」


晴南が晃太に言った。


「そうよ晃太、私達がんばったんだから感謝してよ。」


すると麻衣子が晃太に言った。


「あっ晃太君、いいよ別に晴南には感謝しなくても。だって私達も何もしてないんだから。これ調理も配膳も全部三緒さんがやってくれたから。」


晃太が麻衣子に言った。


「そうか、それじゃあ三緒さんに感謝しないとな。」


麻衣子が晃太に言った。


「そう、晴南じゃなくて三緒さんに感謝しなきゃね。」


晴南が麻衣子に言った。


「麻衣子?わざわざ私を強調しなくてもいいでしょ?」


すると拓也と慎吾と長孝が食堂にやって来た。


そして最後に七緒が眠そうな眼でやって来た。


食堂に全員が集合した。


晴南がいただきますをして、朝食が始まった。


朝食のメニューはチーズカレーリゾットであった。


みんなはチーズカレーリゾットを食べ始めた。


みんなは朝食を楽しく食べていった。


そしてみんなが食べ終わった後でこの後の予定を食堂で話しあった。


晴南がみんなに言った。


「さあて今日は何をしようかしら?」


麻衣子が晴南に言った。


「なら今日も枕投げをする?」


晴南が麻衣子に言った。


「枕投げか?あんまりやりたくないわね。」


麻衣子が晴南に言った。


「どうして?」


晴南が麻衣子に言った。


「同じ芸を二度やるのはエンターテイナーとしてのプライドが許さないわ。」


麻衣子が晴南に言った。


「いつからエンターテイナーになったのよ?」


拓也が晴南に言った。


「それなら久しぶりにケードロでもやらないか?」


晴南が拓也に言った。


「ケードロか?何かひねりが欲しいわね。」


すると晴南は何か思いついたようだった。


大きな声でみんなに言った。


「そうだ!刑事は走るの禁止にしましょう。走ったらスピード違反でクビになるの。それでドロボウになるのよ。」


晃太が晴南に尋ねた。


「刑事は走ったらダメなのか?ドロボウは走っていいのか?」


晴南が晃太に言った。


「もちろんドロボウは走っていいわよ。走ったらダメなのは刑事だけね。」


晃太が晴南に言った。


「それだとドロボウだらけになるぞ?さすがに刑事側が不利すぎるだろう。」


優斗が晴南に言った。


「それなら飛び道具ありにしたらどうかな?例えばボールをなげて当たったら捕まるとか?」


晴南が優斗に言った。


「それいいわね!そうだ!!枕を投げればいいわ。枕が当たったら就寝になって捕まるの。」


麻衣子が晴南に言った。


「枕投げのケイドロバージョンか。だけど、屋外で枕投げなんかしたら枕が汚れちゃうよ?」


優斗が麻衣子に言った。


「それならこの建物の中限定でやればいいんじゃないかな?」


麻衣子が優斗に言った。


「あっ、それなら問題ないね。」


冬湖が麻衣子に言った。


「なんか面白そうですね。」


亜美が晴南に言った。


「みんなで楽しく遊びましょう。」


晴南がみんなに言った。


「それじゃあケイドロバージョンの枕投げに決定!!」


美咲が晴南に尋ねた。


「枕投げはエンターテイナーのプライドが許さないんじゃなかったの?」


晴南は美咲の方を見ながら言った。


「これは枕投げを進化させた画期的な遊びよ!!だからいいの!!」


美咲は食堂の出入口近くに座っていた。


この時食堂の出入口の扉は開いており、食堂の中から廊下が見える状態だった。


晴南は食堂の出入口付近を見ながら美咲と話をしていた。


すると晴南が何かに気がついた。


晴南はきょとんとして言った。


「あらっ?」


麻衣子が不思議そうな顔をしている晴南に尋ねた。


「どうかした?晴南?」


晴南が麻衣子に言った。


「たった今、誰かが廊下を通っていかなかった?」


晴南はそう言うと食堂の出入口を指さした。


麻衣子が呆れた様子で晴南に言った。


「馬鹿な事を言わないでよ?食堂の中に全員いるじゃない?誰が廊下を通っていくって言うの?」


晴南が食堂を見渡すと確かに食堂の中に全員がいた。


晴南が麻衣子に言った。


「気のせいね、ごめんごめん。」


麻衣子が晴南に言った。


「もう変な事言わないでよ。」


すると美咲が二実に尋ねた。


「そういえば二実さん?ここってネットは繋がらないですか?全然使えないんですけど?」


二実が美咲に言った。


「それがさ、昨日の夜からずっと圏外なのよね?」


美咲が二実に尋ねた。


「ここは繋がりにくい所なんですか?」


二実が美咲に言った。


「いやここは使用圏内だから普通に使えるはずだよ。」


美咲が二実に尋ねた。


「えっ?じゃあなんで使えないんですか?」


二実が美咲に言った。


「たぶん通信障害ってやつよ。たぶん基地局とかの故障だと思うのよね?」


美咲が二実に尋ねた。


「基地局って何ですか?」


二実が美咲に言った。


「うーんとね。どう説明すればいいかな?」


すると晃太が美咲に言った。


「携帯電話と直接交信する場所の事だ。」


美咲が晃太に言った。


「直接交信する場所?」


美咲はよく分からないようだった。


晃太が美咲に言った。


「例えばスマホで通話をする場合、直接相手のスマホに電波が飛ぶわけじゃないんだ。まず近くの基地局まで電波が飛んで通信事業者の通信ネットワークを通って相手のスマホまで届くんだ。スマホでインターネットを見る場合も基地局を通して通信事業者の通信ネットワークにつなげる事で見えてるんだ。」


美咲が晃太に言った。


「へえー、そうなんだ。」


優斗が美咲に言った。


「先週九木礼山の頂上に登ったって聞いたけど?頂上の所に鉄塔があったでしょ?あそこが九木礼町をカバーしてる基地局だよ。」


美咲が納得した様子で優斗に言った。


「ああ、あそこね。」


美咲が二実に言った。


「じゃああそこが復旧しないと使えないって事ですか?」


二実が美咲に言った。


「うん、たぶんね。」


晴南が美咲に言った。


「別にスマホなんて使えなくても問題ないでしょ?この後みんなで遊びたおすんだから。」


すると晴南が大きな声で言った。


「それじゃあ午前9時からドロケイを始めるわよ!全員午前9時にここに集合する事!!いいわね!!」


その後全員で食器の後片付けを済ませると、みんなそれぞれの部屋へと戻っていった。


二実と三緒はロビーへとやって来た。


ロビーに山積みになっている荷物の整理を始めたのだった。


二実が山積みの段ボールを見て言った。


「やっぱり整理整頓って苦痛だわ!!」


すると三緒が二実に言った。


「二実、少し話があるんだけど?」


二実が三緒に尋ねた。


「何?」


三緒が二実に言った。


「さっき通話しようとしたんだけど繋がらなかったのよ?」


二実が三緒に言った。


「だから基地局の故障じゃない?」


三緒が二実に言った。


「いやそっちじゃなくてその固定電話よ。さっきそこからかけたんだけど、全然繋がらないのよ。昨日は繋がったんでしょ?」


二実が三緒に言った。


「それがさ、昨日の夜かけようとしたんだけど何か繋がらなかったんだよね。」


三緒が二実に言った。


「えっ?昨日みんなの家に電話してくれたんじゃないの?」


二実が三緒に言った。


「それがさできなかったのよ。」


三緒が二実に言った。


「だったらなんでその時に教えてくれなかったの?」


二実が三緒に言った。


「みんなが不安になるだけでしょ?たまたま不通になってるだけよ。」


三緒が二実に尋ねた。


「まあ私もそう思いたいけど、昨日の麻衣子ちゃん達の事といい、電話が繋がらない事といい?本当にたまたまなのかな?」


二実が三緒に尋ねた。


「何が言いたいの?」


三緒が二実に言った。


「何かが起こってるような気がするわ。」


二実が三緒に尋ねた。


「何かって何よ?」


三緒が二実に言った。


「分からないわ、だから二実に聞きたいのよ。」


二実が三緒に言った。


「聞かれたって私も分かんないって。」


三緒が二実に尋ねた。


「でも何か隠してる事があるでしょ?」


二実が三緒に言った。


「えっ?何の事?」


三緒が二実に言った。


「とぼけないで!麻衣子ちゃん達がいなくなった時、全然慌ててなかったわよね?何か心当たりがあるんじゃないの?」


二実が三緒に言った。


「三緒なかなか鋭いじゃない?でも心当たりがあるわけじゃないの。」


三緒が二実に尋ねた。


「まさかお告げでもあったの?」


すると二実はキョロキョロと周囲を見渡した。


三緒が二実に尋ねた。


「どうしたの?」


二実が三緒に言った。


「みんながいないか確かめたのよ。」


三緒が二実に尋ねた。


「どういう事よ?」


二実が三緒に言った。


「みんなには聞かれたくない話って事よ。大丈夫みたいね。三緒、これを見て。」


そういうと二実はポケットから一枚の紙を取り出した。


そして三緒にそれを渡した。


二実が三緒に渡した物はプリクラだった。


プリクラには二実と三緒が写っていた。


三緒がプリクラをよく観察した後で二実に言った。


「ただのプリクラじゃない?これがどうしたの?」


二実が三緒に尋ねた。


「そのプリクラおかしいでしょ?」


三緒が再びそのプリクラをよく観察した。


その後で二実に言った。


「えっ?特に変なものは写ってないけど?嫌な感じもしないし。」


二実が三緒に言った。


「おかしいってのは変なものが写り込んでいるって意味じゃないわ?」


三緒が二実に尋ねた。


「それどういう事?そもそもこれいつ撮ったプリクラ?こんな背景で撮った事あったかな?」


二実が三緒に言った。


「何言ってるの水曜日に撮ったばかりでしょ?晴南ちゃん達と山頂レストランに行った時にプリクラを一緒に撮ったじゃない?」


三緒は二実の言っている意味が分からなかった。


三緒が二実に言った。


「いやあの時は二人で撮ってないでしょ?みんなと一緒に撮ったじゃない・・・・。」


そう言い終わった三緒が口ごもってしまった。


すると三緒はポケットから財布を取り出した。


そして財布の中から一枚のプリクラを取り出した。


三緒は二実から渡されたプリクラと財布の中から取り出したプリクラとを見比べた。


三緒は気がついたのだ。


二実が渡したプリクラの落書き(画像の加工)はアイスクリーム柄だった。


背景は青色であった。


二実が渡したプリクラと三緒が財布から取り出したプリクラの落書きと背景が全く同じだったのだ。


三緒が財布から取り出したプリクラは水曜日に山頂レストランのゲームコーナーで晴南達と一緒に撮った物であった。


三緒がこわばった表情で二実に言った。


「ちょっと?これまさか?」


二実が三緒に言った。


「そう、山頂レストランで撮ったプリクラの一枚目よ。美咲ちゃんがアイスクリームの落書きにしようって言って撮った時の一枚目のやつ。あの時私が一枚目のプリクラを確認したでしょ?」


三緒が青ざめた顔で二実に言った。


「でもこれ写ってないじゃない。」


二実が三緒に言った。


「そう、写ってないのよ。晴南ちゃん達がね。写っているのは私と三緒だけ。7人とも姿が消えてるのよ?」


三緒が二実に言った。


「あの時ぎゅうぎゅう詰めの状態で撮ったはずよ?」


二実が三緒に言った。


「そのはずなのに晴南ちゃん達が写ってなかったの。」


三緒が二実に言った。


「こんな事ってありうるの?」


二実が三緒に言った。


「こういう事例は私も初めてなのよね。これが何かの前兆なのか?はたまた心霊現象なのか?それともプリクラの機械が故障しただけなのか?正直どれなのかは私にも分からないわ。」


三緒が二実に言った。


「このプリクラに気がついて上手く撮れてないって嘘をついたわけね。」


二実が三緒に言った。


「当たり前でしょ?こんなプリクラ晴南ちゃん達に見せられる訳ないでしょ。いい、この事は黙っててよ?晴南ちゃん達を怖がらせたくないから。」


三緒が二実に言った。


「分かってるわ。」

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