第44話 枕投げ
二階にある6号室から11号室までは全て同じ造りとなっていた。
部屋を入った所が小さな玄関のようになっており、段差がついていた。
その横に小さな下駄箱が置かれていた。
そして部屋の玄関部分を進むとトイレがありその先にお風呂があった。
その先が12畳の広さの和室になっており畳が敷かれていた。
また窓からは外の景色を楽しむ事ができた。
バルコニーなどはなくて和室の窓の先はすぐに外となっていた。
すると11号室に晴南の声が響き渡った。
「へえー!!二階はこんな感じなのね。なかなかいい部屋じゃない?」
晃太が晴南に尋ねた。
「なんで晴南がここにいるんだ??」
晴南が晃太に言った。
「そんなの二階の部屋を見に来たに決まってるでしょ?あと伝えたい事もあるし。」
優斗が晴南に尋ねた。
「伝えたい事?」
晴南が晃太と優斗に言った。
「準備が出来たら私が呼びに行くわ!!いい、だからそれまで部屋の中で待っててよ!!分かったわね?」
晃太が晴南に言った。
「ああ、もちろん分かってる。それで枕投げは何時頃にするつもりなんだ?」
晴南が晃太に言った。
「さあ?やる事がなくなったら呼びにくるわ!それまでちゃんと起きててよ!!枕投げは全員でやりたいから!あと枕投げは浴衣を着てやるから、ちゃんと浴衣に着替えておいてね!」
晴南はそう言うと11号室から出ていった。
晃太が優斗に言った。
「いつもの事とは言え、晴南は無茶苦茶だな。」
優斗が晃太に言った。
「まあいいんじゃないかな?本を読んでれば時間なんてすぐに過ぎちゃうし、ゆっくり待ってようよ。」
すると廊下から大きな声が聞こえてきた。
「いいー拓也!!私が呼びにいくから部屋で待っててよ!!分かったわね!!」
晴南が拓也達にも同じ事を言っているようだった。
そして晴南は一階へと戻っていった。
少しして11号室のドアが叩かれた。
11号室に晴南の声が聞こえてきた。
「晃太!!優斗!!」
優斗がドアを開けるとそこには晴南がいた。
そして晴南が11号室の中に入ってきた。
優斗が晴南に尋ねた。
「あれ?意外と早かったね?」
晴南が優斗に言った。
「まだに決まってるでしょ?まだまだ時間がかかるわ?」
優斗が晴南に尋ねた。
「それじゃあ晴南は何しに来たの?」
晴南が優斗に言った。
「だから伝えに来たのよ!!まだよって!!」
優斗が晴南に言った。
「そうなんだね。」
そして晴南は11号室を出ていくと10号室の扉を叩いた。
晴南の声が廊下に響く。
「拓也!!慎吾!!」
そして晴南は拓也達にも同じ事をしてから一階に降りていった。
少しして11号室のドアがまたノックされた。
「晃太!!優斗!!」
廊下から11号室の中に晴南の声が響いてきた。
晃太が11号室の扉を開けると晴南が入ってきた。
晃太が晴南に尋ねた。
「枕投げを始めるのか?」
晴南が晃太に言った。
「まだよ?まだかかるわ。」
晃太が晴南に言った。
「まさかまた?」
晴南が晃太に言った。
「ええ、まだよって伝えに来たのよ。それじゃあね。」
晴南はそう言うと11号室より出ていこうとした。
それを晃太が呼び止めた。
「ちょっと待ってくれ晴南?まさかこの後もまだよって言いに来るつもりか?」
晴南が晃太に言った。
「もちろんよ?また教えにくるわ。」
晃太が晴南に言った。
「さっきやる事がなくなったら呼びにくるって言ってただろう?」
晴南が晃太に言った。
「まだよを言いにこないなんて言ってないでしょ?それに晃太?さっき何時になるか気にしてたじゃない?」
晃太が晴南に言った。
「いやだからって10分おきにまだよって言いに来ないでくれ。みんなの準備が整ってから呼びに来てくれればいい。」
晴南が晃太に言った。
「ええ??それじゃあ普通すぎない?」
晃太が晴南に言った。
「情報を伝えるのは普通でいいんだ。」
晴南は全員の準備が整うまで呼びにこない事をしぶしぶ了承すると下に降りていった。
それから晴南はしばらく上がってこなかった。
午後10時半を過ぎた頃に再び晴南が二階に上がってきた。
二階中に晴南の声が響き渡った。
「よしそれじゃあ始めるわよ!!拓也!!晃太!!長孝!!慎吾!!優斗!!」
その声を聞いた晃太と優斗は廊下へと出た。
すると拓也もすでに二階の廊下に出ていた。
優斗が廊下にいた晴南に尋ねた。
「ところで晴南?どこで枕投げをするつもりなの?」
晴南が優斗に言った。
「二階に広い部屋があるじゃない?あそこでやるつもりよ?」
優斗が晴南に言った。
「二階の大広間だね。」
慎吾と長孝もすぐに外に出てきた。
そして晴南は男子を連れて二階の大広間へと向かった。
すると二実も二階に上がってきた。
晴南達は二実に大広間の鍵を開けてもらい、大広間の中に入っていった。
大広間は畳が敷かれた和室となっており、80畳の広さがある大きな部屋であった。
大部屋の一番奥には舞台があり他よりも数段高くなっていた。
そこだけは畳は敷かれておらず木の床になっていた。
晃太が二実に言った。
「へえー、かなり広いですね。」
二実が晃太に言った。
「80畳の広さがあるわ、この建物で一番広い部屋よ。」
晴南がみんなに言った。
「それじゃあまず布団と枕を並べてちょうだい!」
優斗が二実に尋ねた。
「二実さん?布団と枕はどこにあるんですか?」
二実が優斗に言った。
「えっと?舞台の手前の所にふすまがあるでしょ?あそこの中に入ってるわ。」
二実はそう言いながら舞台の手前にあるふすまを指さした。
晴南達はふすまの前にやって来るとそのふすまを開けた。
ふすまの奥は収納スペースとなっており、たくさんの布団や枕や座布団が納められていた。
晴南達が収納スペースから布団と枕を出して並べていった。
晴南達はしばらくして準備を完了させた。
すると一階にいた残りのメンバー達が二階の大広間にやって来た。
麻衣子が下にいたみんなを連れて二階の大広間までやって来たのだった。
麻衣子が晴南に言った。
「晴南。みんなを連れてきたわよ!!」
晴南は全員が大広間にいるのを確認した。
そして大きな声でみんなに言った。
「よし!!全員集合したわね!!」
すると晃太が麻衣子に尋ねた。
「なあ麻衣子?枕投げって具体的にどうやるんだ?」
麻衣子が晃太に言った。
「二つのチームに分かれて枕を投げ合うの。相手が投げた枕に当たったら就寝(しゅうしん)ね。それで先に全員が就寝(しゅうしん)した方が負けよ。」
晃太が麻衣子に尋ねた。
「就寝(しゅうしん)ってのは?」
麻衣子が晃太に言った。
「要するにアウトって事。まくら投げではアウトを就寝(しゅうしん)って言うの。」
晃太が麻衣子に言った。
「ドッチボールに近いわけか。」
麻衣子が晃太に言った。
「そうだね。枕がボール代わりだし、畳の上でやるドッチボールって感じだね。」
晃太が麻衣子に尋ねた。
「他のルールは?」
麻衣子が晃太に言った。
「ほら赤いテープで二つ陣地がつくってあるでしょ?あのエリアから外に出てはだめ。エリアから出たら就寝になるわ。あとは掛け布団でガードができたり、先生が来たコールってゆうのもあるわ?掛け布団を盾にして飛んでくる枕をガードできるの。」
晃太が麻衣子に尋ねた。
「先生が来たコールっていうのは何だ?」
麻衣子が晃太に言った。
「先生が来たコールを使うと相手チームの全員が布団に戻って寝たフリをしなければならないの。その間は先生が来たコールを使ったチームは相手チームの陣地に行って枕を回収できるのよ。」
晃太が麻衣子に言った。
「なるほど、ルールはだいたい分かった。それにしても麻衣子は枕投げに詳しいんだな?」
麻衣子が晃太に言った。
「お泊まり会でしょっちゅうやってるからね。もう覚えちゃったわ。」
最初の対戦は枕投げのゲームに慣れているメンバーから行う事になった。
まず晴南対麻衣子と由香と美咲の三人が対戦する事になった。
晴南が麻衣子に言った。
「私一人で麻衣子達三人を倒せって言うの?」
麻衣子が晴南に言った。
「これぐらい晴南なら余裕でしょ?こっちはもっとハンデが欲しいくらいよ。晴南相手だったらこれでもきついわよ。」
晴南が麻衣子に言った。
「まあいいわ。それじゃあ勝負よ。」
晴南が晃太に言った。
「晃太?ルールはさっき聞いてたでしょ?審判をしてちょうだい。」
晃太が審判をする事になった。
そして晴南と麻衣子と美咲と由香はそれぞれの陣地の中に敷かれた布団の中に潜り込んだ。
晃太が合図を出した。
「よいー始め!」
すると晴南は布団から飛び起きて枕が置いてある場所にダッシュした。
両チームの陣地が赤いテープで仕切られていた。
二つの陣地はドッチボールのコートのようになっており、それぞれの陣地の前方に枕が五つ置かれていた。
晴南は枕を拾うためにダッシュで陣地前方に向かったのだった。
一方の美咲と由香も素早く布団から起き上がって、5つの枕の置いてある陣地の前方に向かって走っていった。
だが向こう側の陣地ではすでに晴南が両手に枕を持って美咲と由香が枕を取りに来るのを待ち構えていた。
そして枕を拾おうとする美咲と由香にめがけて枕を投げた。
二つの枕はすごい速さで飛んでいった。
美咲と由香はこれをかわす事ができずに二人とも枕にヒットしてしまった。
晴南が美咲と由香に言った。
「さあ、美咲!由香!就寝よ!!」
美咲が言った。
「枕も拾えずに就寝になっちゃったわ。」
先手を晴南に取られたと判断した麻衣子は後方に留まっていた。
晴南が大きな声で麻衣子に言った。
「さあ麻衣子もはやく前に出てらっしゃい!!就寝させてあげるわ!」
すると麻衣子はかけ布団を両手に持ってゆっくりと進み始めた。
晴南が麻衣子に向けて枕を投げた。
しかし麻衣子はかけ布団で飛んでくる枕を弾きながら前に進んでいった。
晴南が麻衣子に言った。
「やるじゃない麻衣子?でもこれで終わりよ?」
すると晴南が大きな声で言った。
「先生が来たわ!!先生が来たわ!!」
これを聞いた麻衣子が慌ててかけ布団を持ちながら自分の陣地の中の布団に戻った。
そしてかけ布団かぶって寝たフリをした。
晴南がその間に麻衣子の陣地の中に入って落ちている枕を回収していった。
先生が来たコールがおわり、麻衣子が布団から出てきた。
枕は晴南によって晴南側の陣地に集められていた。
晴南が麻衣子に言った。
「私の勝ちよ!さあ麻衣子、おとなしく寝てちょうだい!」
晴南が麻衣子にめがけて枕を投げていく。
麻衣子はかけ布団で上手く弾いていったが、完全に身動きがとれなくなってしまった。
晴南が麻衣子に言った。
「麻衣子!あきらめなさい。」
麻衣子が晴南に言った。
「先に使ってくれてありがとね?」
すると麻衣子が大きな声で言った。
「先生が来たわ!!先生が来たわ!!」
今度は麻衣子が先生が来たコールを発動して、晴南は慌てて陣地の中の布団に戻った。
晴南が布団の中に潜り込む。
麻衣子はその間に晴南の陣地に落ちている枕を回収して自分の陣地に持っていった。
晴南が布団から出たときには麻衣子に全ての枕を回収されていた。
麻衣子が晴南に言った。
「形勢逆転よ。晴南はもう先生が来たコールは使ってるし、投げる枕が無ければ、どうにもできないでしょ?」
晴南が麻衣子に言った。
「やってくれるじゃない?麻衣子?」
麻衣子が晴南に言った。
「晴南!覚悟!!」
そう言うと麻衣子は枕を晴南に向かって投げつけた。
その枕はかなりの速度で晴南に飛んでいった。
だが晴南は体を横に反らしてギリギリの所でこれをかわしてしまった。
麻衣子が再び晴南に枕を投げた。
だがまたしても晴南は絶妙なフットワークでこれをかわしてしまった。
晴南は素早く動きまわりながら、飛んでくる枕をかわしていった。
すると今度は晴南が陣地に落ちている枕を拾って麻衣子に投げつけた。
麻衣子も晴南から投げられる枕をかけ布団で上手く弾いていった。
このまま手詰まりになるかと思われた。
すると晴南が宙高く枕を放り投げた。
その枕は放物線を描きながら麻衣子の頭上に飛んで行った。
麻衣子はかけ布団のガードで前方から飛んでくる枕は防げると考えていたので上への注意が疎かになっていた。
そして晴南が放り投げた枕が麻衣子の頭上に落ちてきた。
その枕が麻衣子の頭に当たった。
麻衣子が言った。
「あっ!しまった!当たっちゃた!」
晴南が麻衣子に言った。
「ふっふん!私の勝ちよ!!」
麻衣子が晴南に言った。
「何とか晴南に勝てると思ったんだけどな。」
美咲が晴南に言った。
「ねえ、もう一回やりましょうよ?」
晴南が美咲に言った。
「何度でも受けてたつわよ。」
この後枕投げの対戦は白熱して、深夜まで続くのであった。
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