騙し打ち
インドカレー味のドラえもん
騙し打ち
うちの母親はメシマズなクセに自分が作った料理に手を加えられるのを嫌がる。
その中でも顕著なのが塩分不足だ。
やれ減塩だとかオーガニックだとか、偉い人の言葉に影響を受けやすい母さんは“身体に良いから”という理由で料理に塩をほとんど入れてくれない。
息子たちの健康に気を使ってくれているのは有難いけど、僕も年頃の男子、それも運動系の部活に属する身としては隠れて塩を舐める情けないマネはこれ以上したくないというのが本音である。
ある日、この話を妹にしたら良い手があると策を授けてくれ、今は決行の時だ。
僕は母さんがテレビに意識を向けた瞬間素早く卓上の塩に手を伸ばし、自分の皿に時間の猶予がある限り振り振ってから母さんに声を掛けた。
「母さん、塩振って良い?」
そしてわざとらしく確認し、
「ダメに決まってるでしょ」
「どうしても?」
「ダメ」
「……わかったよ」
念入りに確認し、断られてからこれまたわざとらしく残念そうな顔して机に戻す。
母さんは異常に鋭い時があり、以前勝手に調味料を振った時はバレて大変な事になった。
でも、ここまですれば母さんも僕が既に塩を加えたとは思うまい。
僕はしたり顔で料理に口を付けた。
「甘っ……」
妹は笑っていた。
騙し打ち インドカレー味のドラえもん @katsuki3
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