第5話 砂漠の妖精

 準備って、気持ちの準備でした。


 小さなオッサンがワラワラ現れ、盛んに「目を見開く、目を見開く」と叫ぶばかりです。

 ペキは、振るえながら私に抱き付いています。

(目を見開く? 目を、警戒するって事?)

(もしかして! 深く考えるな! 感じるんだ!! 禅問答の如く!!)

「目は見開かない、目を細くする」

「「「「お~~っ」」」」



「拳骨上げる? 拳骨上げる?」

「拳骨上げ無い、手を開く」

「「「「「お~~っ」」」」」



「妖精食べる? 妖精食べる?」

「妖精食べない! 妖精にご馳走する」

「「「「「「わ~~~ぁ」」」」」」



 トランクから尾の身の半身を取り出し

「ご馳走する!!」

「「「「「「「「「「うぉ~~~ぉ」」」」」」」」」」

「デッカイ友、此方に来る!!」

 小さいオッサン達は、スタスタ行ってしまう。



「迅様、妖精語話せるって素敵です!!!」

「妖精語? 違う、普通に話しただけだよ」

「普通? 私には、何一つ意味が解りませんでした」



 抱き付くペキ、20キロの肉を担ぎ、小さいオッサン達を追う。

 身長50センチ位のオッサン達、大荷物抱えても追うのは容易い。

(小さな小太りのオッサン達、ドワーフだな)


 しかし、がっかりだな、妖精に会うの凄く楽しみにしてたのに、小さいオッサンとは。



 森の細い道を進んで行きます。

 やがて小さな家が建ち並ぶ集落にたどり着きました。

 少し大きいドワーフが叫びました。


「皆の衆!! デッカイ友が我等に馳走してくれるぞ!!!」

 30人程のドワーフが現れ、喜んで居ます。

 更に「お~~い!!大丈夫だ出て来い」

「えっ? あっ! 妖精!!」


 小さいオバサンが出て来ると思ってた、良い方に裏切られたよ!!

 透明な翼で飛んで来る、15センチ位の女性50人位が現れました。

「あぁピクシーだぁ!! お人形さんみたい、可愛い!!!」



 持ってて良かった十徳ナイフ、お肉を小さく切り取ります、ドワーフにピクシー達が銘々串に挿し、勝手に焼いて食べて居ます。

 私とペキ用に少し大き目のお肉を串に挿します。



 お肉が焼けたのでペキと食べてみました。

「「美味しい!!」」

 二人同時に声が出ました。


 塩コショウも無く、ただ焼いただけのお肉なのになんて旨いんだ!!

 ドワーフピクシー達も、ただ黙々と食べ続けて居ます。

 20キロのお肉が殆どなくなった頃、やっと落ち着いたようです。


「デッカイ友、旨いこの肉は何だ?」

「ん? あぁ砂鯨を討伐して一部分取って来た、残りは砂イルカが食い付くした」


「スナクジラ?」

「ああ、こーーんなデッカイ奴」

「な! 何と!! それは……砂の神ではないか!!!」



「今宵の宴はお別れの宴なのじゃ」

「お別れ?」

「あの3人、リンとミンそれにメイは神に捧げる今回の贄」

 荒ぶる神、砂鯨を抑える為、定期的に生け贄を捧げて居るそう。

「デッカイ友、荒ぶる神を討伐してくれないか? 対価は我等全員お主のもの」


「対価は要らん、私にとって砂鯨討伐は容易い事」



 翌朝、私は祭壇に使われている岩山に立って居ます。

 私の頭にはリンが乗り、両肩にミンとメイが乗り、振るえて居ます。


 着いてくる必要ないと言ったのに、「贄の役目です、私達が囮になります」と言って着いて来ました。


 邪魔なんだけど、とも言えず出来る限り危険の無いように、素早く討伐するよう心掛ける事にします。



 やがて超巨大な砂鯨が現れました。

 岩山の両脇にはペキと妖精達が見守って居ます。

(格好つけるぞ!!!)

 振るえる3人をそっと下に降ろし。



「罪無き妖精達を苦しめる行為、許しがたき、天に代わって成敗する!! トウッ!!!」

 砂鯨めがけ飛び掛かりました。

 勢い余って、上半身が砂鯨にめり込み、ジタバタもがいて抜け出し、格好良くキメポーズ「スチャッ!!」


 妖精達は大歓声です。


 リン、ミン、メイに顔をもみくちゃにされ、キスの嵐! ムッとした顔のペキに抱き付かれ。

 ドワーフ達は「ウッホ!! ウッホ!!」と踊り狂い。

 ピクシー達も、シンクロナイズフライング、大空を駆け巡って居ます。




 超巨大な砂鯨の処分に困って居ます。

 美味しい尾の身両側で200キロ取り除いても、巨体は完全に残って居ます。


「腐らせると勿体無い」

「お~~~い、イルカ居るか?」

 使い古されたオヤジギャグって? ウルサイわ!!


「大将イルカじゃ無い、私ルカ」「ワシはカル」「おれイル」

「あぁ、あの時の3頭か?」「そう、大将に助けて貰った」

「そうか、これ又食べてくれる?」「大将!! 喜んで!!!」

「「「ぴーーーぃ!!」」」


 砂イルカの大群が押し寄せて、あっと言う間に骨も残さず、食べ尽くしてしまいました。

「砂クジラの餌の我等が、逆に砂クジラを喰らう!! 愉快!!!」

 とイルカ達が言い残し、さっと散って行きました。




 慌ただしくて、喫煙を忘れてた。

 タバコに火を着け、深々と吸い込む。

「ふ~~」

 見ていた妖精達が

「「「「「おーーっ」」」」」


 何か平伏してる。

 リンが不思議そうに

「強いタイチョ火まで吹くか?」


 タイチョ? あぁイルカ達が、大将って言ってた真似か

「火じゃ無いぞ、煙を吸ってるだけ」

「煙吸うと苦しい!! 流石タイチョ苦行してる!!!」


「いや……あははっ(喫煙なんて理解できないよな)」



 タバコを吸うと、この騒ぎ、何か禁煙出来そう。



 90%未開のオーコッツ、至る所に色んな種族の妖精が住んでるそうです。


 確かな収穫に満足しての帰り。

 オーハルコンを扱う事の上手な、匠の3ドワーフ、トン、テン、カンの3人と、離れなくなったピクシーのリン、ミン、メイの計6人が付いて来る事になりました。



 3人の巨匠は、オーハルコンの結晶板を容易く造り、加工も巧みに行います。


 ピクシー達も、オーハルコンエナジーを触媒無しで、平気で取り出して見せました。



「閃いた!! 攻撃兵器が作れる!!!」

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