第10話 才鬼

 鬼の里からこっそり逃げ出し、はぐれ者の町の片隅に私が居着いて何年経ったか。

 はぐれ者達は異形を差別しない、私以上の化け物も普通に住んでる、他人を傷付けなければ誰でも住める、そう言う意味では住良い町だ。


 私はサイコ、鬼の里の外れに一人で住む、当時15歳の普通の娘だった。

 あの日、なぜか遅い夕食になり15夜じゃ無いと安心して、畑の野菜を取りに家を出た。

 餓鬼の言い伝えも子供のしつけだと思い、本気にして無かった。

 13夜の殆ど満月を見て私は餓鬼に変貌してしまった。

 満月の月光じゃ無いのが、幸いと言って良いか不完全な変貌、意識を持ったままの餓鬼になった。

 意識はサイコのままだが餓鬼の姿、里人に見付かると問答無用で討伐される!

 水筒と食糧持てるだけ持ち、山刀を腰に差し大急ぎ里を逃げ出した。


 持ち出した食糧だが、干し肉以外食べれなくなった。

 簡単に狩れる人を食いたいが、食うと町に居られなくなる。

 餓鬼の体が野菜や芋を受付無くなって、野良犬野良猫を喰って過ごした。







「感じる!救い主が町に来た」

 私の餓鬼の部分が王鬼の存在を感じた。

 サイコの意識は有るが餓鬼の本質が、王鬼を喰らいたいと騒いでる。


 物陰からそっと伺った。

 王鬼は無防備に歩いてるが、二人の護衛が邪魔だ油断が無い。


 慌てる事は無い町に来たばかり、直ぐに出て行くとは思えない、慎重にチャンスを伺えばいずれ機会はやって来る!

 二人の護衛に気付かれないよう細心の注意を持って動向を伺っている。



 上手く空き家を見付けたな。

(これからはこの家を見張れば良い、見付からないよう尾行するのは大変だった、ちょっと楽になる)


「おっ、ネズミ小僧盗む気満々で入って行った、隙を作ってくれ!」



「情けない!簡単に捕まりよって……王鬼はお人好しだね、盗みに入ったネズミ小僧に餌を与えてる…あの干し肉旨そう」


 2日目変化なし。

 引き込もって、町に何しに来た?王鬼なら町を回り、物の怪や妖怪、半妖を配下にして回らんかい!怠慢だぞ!!

「腹が減った!監視で水しか飲んでない…喰いたい…喰いたい…喰いたい!!王鬼は旨いだろうな…喰いたい…喰いたい!!」


 ネズミ小僧と戦鬼何してる?走鬼も出て来て……チャンスかも、家には王鬼しか居ない!

 ふらふら無意識に王鬼に近付いていた。

 無意識が良かったのか、王鬼は気付いて居ない!

 この空腹感、手足を喰ったくらいでは治まらん!!

 私は王鬼に飛び掛かり、胸に爪を突き刺し心臓を掴み出しむさぼり喰った。

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