第8話 猫を捕まえて来た

 勢い良く駈けて行ったウルフルさんが、直ぐに帰って来た。

「ウルフルさん?獲物は?」

「猪でも狩るつもりだったがよ、この仔が倒れて居たもんで…放って置けなくてな」

 言われて見るとウルフルさん、仔猫をくわえてる。


 私が仔猫を受け取ると、ウルフルさんは又々山の方に駈けて行った。

「何か落ち着きの無いオジサンだね」

⦅猫か…漱石の書生じゃないから猫じゃ食べれないか⦆

 私の呟きに、手の中の仔猫がビクッと震えた。

 顔を近付けると、か細い声が聞こえた。

⦅私は猫又ヒミコ食べると下痢するにょ?……お腹が空いたにゃぁ⦆

「え?あなた猫又?でも尻尾が二又にわかれて無いよ」

⦅目立たにゃい様に、普通の仔猫に化けてるにょ⦆


 近くに控えてた走鬼が「王鬼様、その仔猫妖気が漏れて居ります!ご注意を」

みんなこの仔、猫又ヒミコって言ってる警戒しなくても良いよ。でも困ったお腹を減らして弱って居るみたいだけど、お魚なんてこの原っぱじゃ捕れないし」

⦅猫と言うと直ぐお魚って発想どうかと思うにゃ、私はお肉が好きにゃ⦆

(又々変なのが仲間になった)

⦅あなた、失礼な事思ってない?⦆

「オモッテナイヨ…」



 しばらくして、ウルフルさんが大きな猪を引きずって帰って来た。

「新月の体力じゃこれで精一杯だよ」

「ウルフルさん!見直したよ、流石狼男ウルフガイ

「そうかい?満月なら大熊だって一咬みで仕留められるよ」

「そんな大物狩って来ても食べきれないよ!これでも食べきるの大変だと思う」

「これくらい、おれ一人で食い尽くせるよ」

 話ながら人に戻って、脱ぎ散らかしたヨレヨレ服を着終ってた。

 奥では戦鬼が猪を解体し、牙と毛皮お肉に分けてる。


「王鬼様、肉を焼きます!」

「ヒミコお肉は焼いた方が良い?生で食べる?」

⦅私は獣じゃ無いにゃん、しっかり焼いて!希望はウエルダンにゃ⦆

 腹ペコで随分弱ってたヒミコに、気をきかせた戦鬼が小さい焼き肉を持って来て仔猫の前に置いた、小さいと言っても仔猫の頭位の塊だ。

 仔猫に見えても流石化け猫猫又、顔全体が口になった様に一口でお肉をぺろりたいらげた。

 仔猫がスルスル大きくなり、尻尾が二又に分かれて私より少し上背の女性?に変わってた。

 顔は女性だが頭に猫耳があり、身体は女性っぽいけど毛が生えてる二足歩行の猫だった。

「全然足らにゃい!もっとお肉食べたいにゃ」


 焚き火の近くではウルフルさんが肉をがっついてる。

(ウルフルとヒミコで猪一頭完食しそう…困った仲間がふえる一方だね)

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