第7話 不死身無敵のウルフガイ

「な、何者だ!」

 戦鬼と走鬼が臨戦体勢に入って構えた。

「おっと、落ち着けお二方!あやしく見える者だがおれは人畜無害だ!おれの事はウルフルと呼んでくれ」

 緊張の無いにたりとだらしない笑顔で、くたぶれた中年オヤジが言った。

 下唇に火の付いていないタバコが張り付いてる。

「今夜は新月、王鬼様達の活力が最低に落ち込んでる、満月の夜にはこうは上手く近付けんかっただろう」


「ウルフルさん、月齢に詳しいようですが…もしかしてあなた狼男?」

「新月で活力が人並みに落ち込んでるが、お察しの通りウルフガイだよ」

 胸を張って答えるウルフルさんは、ウルフガイって程格好良く無い、たとえるならやせ野良狼のらおおかみって感じ。

「王鬼の嬢ちゃん、失礼な事思って無いかい?」

 流石狼男、直感力は優れてる。


 誤魔化す様に中断した食事を再開した。


「ウルフルさん、遠慮せず食べてね!」

 と言ってしまって後悔した。

 貧相な中年オヤジ、その体のどこに入ったの?って不思議に思える程兎肉を食い散らし、骨付き肉は骨ごとバリバリ喰って、殆ど一人で3羽の兎肉喰ってしまった。

 私達は手に持ってたお肉を細々と食べただけ。

「おいウルフル!王鬼様が遠慮せずって言われたから文句は言えんが、少しは遠慮しろ!!」

 流石に戦鬼が文句言ってる。

「すまん!久し振りに旨い飯で、思わず夢中で喰って悪かった!」


「ウルフルさん、足りた?」

「いや、申し訳無いが全然食い足らん」

 狼は食い溜め出来るって聞いたけど、とんだ大飯喰らいが仲間になったもんだ、無駄飯喰らいで無い事を祈るしかないな。

「王鬼の嬢ちゃん?又々失礼な事、思って無いかい?」

「イヤ、オモッテナイヨ?」

「そうか?んじゃちょっくら腹ごなしに狩に出掛けて来る!ごっつぅおさん!」


 ウルフルさんはヨレヨレ服を脱ぐと、さっと狼に変身山裾やますそ目掛け走って行った。

「新月でも狼に変身出来たんだ!」

 変身した狼の姿は、白銀の毛並みの綺麗で力強い、思いの外見事な狼だった。

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