第6話 くわえタバコの中年オヤジ

 革製品や道具作り以外の能力がない、隠れるしか身を守るすべの無い小人コロボックル族達の仲間は殺されたり拐われたりでほとんどが居なくなり、現在奥さんと二人で隠れ住んで居るとか。

私の近くが安全と思ったようで奥さんのボッコも出てきた。


 私は胡座の様な座りかたで、両手に二人を乗っけてる。

「それで、私に何か用かい?」

 耳を二人に近付け聞いてみた。

⦅亭主は話下手、わっちが代わってお願いするだ!王鬼様、わっちと亭主を保護して旅のお供にして下され!おねげぇしますだ!⦆

「お供になるのは問題無いけど、危険な旅になるかも知れないよ」

⦅ここに残っても野犬に食い殺されるだか、多くの仲間のように人間に拐われ見世物にされるだか、王鬼様のお供にして貰えば生き残れるだ!⦆



 プークとボッコ夫妻と話ている内に戦鬼が兔を3羽ぶら下げて帰って来た。

 戦鬼は手早く兎をさばき肉を串に刺し、焼き肉を始めた。

 小麦粉を練って、串焼きパンも作ってる。


 空いたナベで湯を沸かし湯が沸いたナベに、近くの草を火で炙った物を入れた。

 雑な感じだが、戦鬼のハーブティーは旨い。


 詮索に行った走鬼も帰って来た。

「王鬼様!近くに寒村が二つあり、その先に『はぐれ者の町』と呼ばれる無法者の町がありました」

「走鬼ご苦労様!寒村は兎も角『はぐれ者の町』って近付きたく無いな」

「王鬼様、半端者無法者の集まりそうな所は、半妖や化け物が住みやすいですよ!」

「そう、なのか?でも一気に仲間が増えても、食糧問題養えないでしょ?」


「妖怪で思い出した!戦鬼、走鬼、こちらが新しい仲間コロボックルのプークとボッコの夫妻」

「「ん?王鬼様?コロボックルの夫婦とは?どこに居ます?」」

「私の肩に乗ってる小人右がボッコ、左がプーク」

 戦鬼と走鬼が私の肩を見てる。

「?王鬼様?勘違いって事は有りませんか?何も乗って居ませんが?」

 不安になって両肩を見た、ボッコとプークが私を見上げてる。

「居るでしょ!小人が」

⦅王鬼様、儂らは見せたい相手以外から姿を隠せます⦆

「「おぅ!小人が居た!!」」

 戦鬼と走鬼にも見えたようだ、二人が驚いてる。


 人見知りのコロボックルが、戦鬼と走鬼に慣れたようでやっと夕食が食べられる。

 兎肉の香草焼きにホンノリ塩味のパン、喉越しスッキリのお茶。

 ボッコとプークも美味しそうにハムハム食べてる。

「戦鬼!とっても美味しい!」

「野営で塩位しか無くて、気の効いた調理は出来ませんが喜んで頂けて嬉しいです王鬼様!」


「王鬼様?おれにも食い物恵んで貰えないかい?」

 人が近付いた事に全く気付かなかった、驚いて振り返ると無精髭に火が付いていないくわえタバコの、ヨレヨレ服を着た痩せ細った中年オヤジが立っていた。

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