第2話 止めて!食べないで!!

「ガキ?餓鬼って何だろ?角があるのが餓鬼?」

 改めて頭を探って見た。

「右にしか角が無い…」


 身体も調べようと、立ち上がろうとして、痛みに顔をしかめた。

「私の右足変に曲がってる!」動かそうとすると激痛が脳天まで走った。

「骨折してる、弱った!この状態で動けないのは命にかかわる…今出来る事やるしか無いか…」


 上着を脱いで水気を絞り取る、下着も脱いで絞る。

「干すには立たないと、あれ?足骨折してたよね?…気のせいか…いや!右足真っ直ぐになってる!!治った?」


 何も思い出せず混乱するムーン、これ以上考えるの止めて立ち上がった。

「アンダーシャツくらい着た方が、誰も居なくても真っ裸はちょっとね」

 濡れたシャツは着にくく、苦労した。

「生乾きでも着てしまえばそんなに気にならないね」

 上着も着終わり、ついでにズボンも脱いで絞って履いた。

 気分的余裕が少し出て、辺りを見渡し道らしい物を見付ける事が出来た。

「満月で明るいのは助かるわ」


 歩き始めてみたが、何かが通った痕跡で、獣道ですら無いようだ。

「危険な獣がこの山に居るの?思い出せないけど、私は一人で武器も持たずここに居る、危険は無いと知ってたからこんな無防備で山に入った!そう思った方が恐く無くなる」


 暫く歩くと草を掻き分けた痕跡が無くなり、目の前は洞窟になって居る。

「何かが通って洞窟に入った?洞窟に住むのは人じゃ無い!」

 音をたてないよう、ゆっくり後ずさった。

 こんな時のお約束の様に枯れ枝を踏んでしまった。

 ボキッ!!

 静寂を絶つ異音が響いた。


 咄嗟に繁った草に身を隠し息をころした。


 洞窟から人に見える者が2体現れ、キョロキョロ見渡してる。

 月明かりで正体がはっきり見えた!

(角がある、鬼?いや、あれが餓鬼じゃないか?)


 餓鬼はくんかくんか匂いを嗅いで、真っ直ぐにこっちに来る。


「もう隠れる意味が無い!」

 恐怖から、立ち上がり一目散に駆け出した。

 命懸けの走り、陸上短距離の記録を遥かに塗り替える駿足で駆け抜ける。


 でも、餓鬼の方が速かった、腕を掴まれ引き寄せられ、脚を掴まれ私をひっくり返し爪先を牙のある口に持って行く、手を掴んだ餓鬼は既に指を口に入れてる。

「止めてぇ!!食べないでぇ!!!」

 激痛と微かにボリボリ骨をかじる音が聞こえた。

(私食べられてる)

 見たく無いおぞましい光景が目に入り、堪えきれない激痛に諦めの気持ち、意識を手離したくても我満出来ない激痛に意識を呼び起こされる。

「あぁ」

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