平民だからと婚約破棄された聖女は、実は公爵家の人間でした。復縁を迫られましたが、お断りします。

第11話 迫る訪問

　私が公爵家の人間であると判明してから、六日が経っていた。

　私は今日も変わらず、聖女の仕事をしている。色々と問題もあったが、日々の生活はまだそれ程変わっていない。

「それにしても、驚きましたよ……まさか、セレンティナ様がロクス様と婚約するなんて……」

「まあ、そうだよね……」

　そんな中、ラカニアがそのように話を振ってきた。

　私とロクス様の婚約は、既に大勢の人に伝わっている。そして、様々な人に大きな衝撃を与えたのだ。

　ラカニアも、衝撃を受けた人物の一人である。私とロクス様が婚約するなど、思ってもいなかったことだろう。その驚きも、当然のものである。

「一応、いとこ同士だから、婚約はできるのですよね？」

「うん、そうだよ」

「でも、親族同士で婚約なんて、家にメリットがそれ程ない気もするのですけど……」

「そうだね……」

　ラカニアの言う通り、この婚約はヴァンデイン家にとってメリットがないものだ。

　それでも、婚約することをヴァンデイン家の人々は選択してくれたのである。それが何故なのかは、考えるまでもない。

「それだけ、私はヴァンデイン家の人々に大切に思ってもらえているということなんだと思う」

「そうですね。セレンティナ様を守るためだけに、家の発展を犠牲にしているのですから、そうとしか考えられません」

　ヴァンデイン家の人々は、私のことを大切に思ってくれているのだ。

　そうでなければ、このようなメリットがない婚約をするはずはないのである。

　そのことが、私は嬉しかった。まだ会ってもいない私を、そのように大切に思ってくれていることはありがたいことである。

「というか、明日、セレンティナ様はヴァンデイン家の人達と会うのですよね？」

「あ、うん。いよいよ、明日なんだ……」

　そこで、ラカニアはその話をしてきた。

　私は、いよいよ明日ヴァンデイン家の人々と会うのだ。

「緊張していますか？」

「うん、大分……」

「まあ、そうですよね。緊張しない訳がありませんよね……」

　私は、かなり緊張している。

　今まで会ったことがない親族と会う。その事実は、私を色々と動揺させるものなのだ。

「でも、大丈夫ですよ。皆さん、いい人だとわかっているのですから、安心して会いに行けばいいと思います」

「そうだよね……」

　ラカニアの言う通り、ヴァンデイン家の人達がいい人達であることは、今回のことでわかっている。

　そのため、何も問題ないはずなのだ。きっと、快く受け入れてもらえるはずである。

　そんなことを話しながら、私達は仕事を続けるのだった。