第10話 突然の婚約

 私は、公爵家のロクス・ヴァンデイン様と対面していた。

 今日も、私に何か話があるらしいのだ。


「ロクス様、一体今日はどのようなご用件なのですか?」

「ええ、実はあなたに大事に話があるのです」


 私の質問に、ロクス様はそのように言ってきた。

 どうやら、何か大事な話があるようだ。


「もしかして、ドルバル様のことですか?」

「いえ、その件ではありません」

「え? その件ではないのですか?」


 ロクス様の言葉に、私は少し驚いてしまった。

 私は、ドルバル様達がどうなるのか言ってくるのだと思っていたからだ。

 その件ではないなら、一体なんの話なのだろうか。


「実は、ヴァンデイン家で話が出ているのです。あなたを狙う者が多いのではないかという話が」

「私を狙う?」

「ええ、あなたは公爵家の人間ではありますが、先日まで平民でした。そのことから、あなたに色々と話を通そうとしている人は多いはずです」


 私に対して、ロクス様はそのように言ってきた。

 確かに、私は公爵家の人間になったばかりである。そんな私に、あることないこと吹き込んでくる者が、いないとは限らないだろう。

 つまり、ロクス様はそれに気をつけるように言いに来たと言うことだろうか。


「そのために、ヴァンデイン家は一つの得策を用意しました。あなたの安全を確保できる方法があるのです」

「え? そんな方法があるのですか?」


 そう思っていた私に、ロクス様はそのようなことを言ってきた。

 どうやら、私の安全を確保できる方法があるようだ。


「その方法は、あなたにとっていいものかどうかはわかりません。だから、とりあえず話だけさせてもらいます」

「あ、はい」

「率直に言うと、僕と婚約を結んでもらいたいのです」

「え?」


 ロクス様の言葉に、私は驚いてしまった。

 ロクス様と婚約を結ぶ。その言葉が、かなり衝撃的だったのだ。


「それは、どういうことですか?」

「僕と婚約を結んでもらうことで、あなたを公爵家の人間であり、ヴァンデイン家の人間であると確定させるのです。そうすれば、あなたに婚約の話も舞い込んでこなくなりますし、ヴァンデイン家と繋がっているため、おかしなことを吹き込もうとする人への抑止力にもなります」

「な、なるほど……」


 ロクス様の説明は、納得できるものだった。

 確かに、私とロクス様が婚約を結んでおけば、色々と抑止力になるだろう。


「あなたが後に嫌になれば、その時に婚約破棄すればいいのです。とりあえず、僕と婚約してもらえませんか?」


 さらに、嫌になったら、婚約破棄してもいいようだ。

 この婚約は、私にとってそれ程悪いものではないだろう。色々な面で、私にメリットばかりである。


「わかりました。それなら、これからよろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いします」


 こうして、私はロクス様と婚約することになるのだった。

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