第7話 通らない主張

 私は、公爵家のロクス・ヴァンデイン様と対面していた。

 ロクス様から言われたのは、婚約破棄したはずのドルバル様が、婚約破棄していないという主張をしてきたことだ。

 どうやら、ドルバル様は私が公爵家の人間だったとわかったため、その主張をしてきたようである。それは、なんとも勝手な主張だ。


「当然のことですが、僕達はその主張を受け入れるつもりはありません。セレンティナ様も、受け入れたくはないですよね?」

「ええ、流石に、私もこのような主張は受け入れたくありません。なんというか……普通に不快です」


 ロクス様の言葉に、私は頷いた。

 流石に私も、そのような主張を受け入れたくはない。

 自分から婚約破棄したいと言ってきて、今更それをなかったことにしようとする。その事実は、普通に不快だ。


「それも、当然でしょう。僕も、このように身勝手な主張は不快です。そもそも、オルデニア家と婚約を結ぶメリットがないと思っていましたが、今回の出来事でさらに彼等と繋がりは持ちたくないと思いました」

「ロクス様……」


 ロクス様も、私と同じようなことを思っていたらしい。

 それも、当然だろう。このようなことを言われて、不快に思わない者はいないはずである。

 結果的に、オルデニア家はヴァンデイン家を敵に回すことになった。今回の件は、完全に悪手だったといえるだろう。


「僕達は、断固としてオルデニア家と戦うつもりです。彼等の主張を通したりはしません。あちらも、色々と言ってくるでしょうが、それも全て叩き潰します」

「あ、ありがとうございます」


 ロクス様の言葉は、とても心強いものだった。

 同時に、とても恐ろしいものである。公爵家の叩き潰すという発言は、とても怖い。絶大な権力を持っている公爵家だ。やろうと思えば、どんなことでもできるはずである。

 その公爵家が、叩き潰すと言っているのだ。色々と大変なことになるだろう。


「さて、今日の話はこれで終わりです。わざわざ時間を作って頂き、ありがとうございました」

「い、いえ、問題ありません」


 ロクス様の話は、それで終わりだった。

 どうやら、もう帰るようだ。

 ロクス様のおかげで、ドルバル様のことについてはあまり気にしなくていいとわかった。そのことに、感謝しなければならないだろう。


「こちらこそ、今日はありがとうございました。ロクス様のおかげで、安心していいことがわかりました」

「いえ、こちらは当然のことを伝えたまでです」


 私の言葉に、ロクス様は笑顔で応えてくれた。

 その笑顔は、とても頼もしいものである。

 こうして、私とロクス様の話は終わるのだった。

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