第8話 恐ろしき覇気
私とロクス様は、王城内の廊下を歩いていた。
ロクス様が帰るので、それを見送っているのだ。
「さて、セレンティナ様、それではこれで失礼します」
「あ、はい。今日は、本当にありがとうございました」
王城の入り口辺りまで来てから、私とロクス様はそのような会話をしていた。
別れ際の何の変哲もない会話だ。
「うん?」
「あれ?」
そんな私達は、王城の外からやって来る人に気づいた。
その人は、今の私達にとても関わりがある人である。
「あ、ロクス様に……セレンティナ様ではありませんか」
「ドルバル様……」
「……あなたですか」
私達の目の前に現れたのは、ドルバル・オルデニア様だった。
何故、ここに来たかは大体わかる。私との婚約が破棄されていないと、主張しに来たのだろう。
「何をしに来たのですか?」
「ロ、ロクス様……いえ、間違いを正しに来たのです」
「間違い? 一体、なんのことでしょうか?」
そんなドルバル様に対して、ロクス様は明らかに敵意を向けていた。
ロクス様は、私を庇うように前に立つ。ドルバル様は、その覇気に少し怯えているように見える。
「わ、私はセレンティナ様との婚約を破棄した訳ではありません。あれは、勘違いだったのです」
「勘違い? それは、どういうことですか?」
「こ、言葉のあやです。セレンティナ様も、王城の者達も、私の言葉を勘違いしてしまったのです」
ロクス様に対して、ドルバル様はそのような論を述べた。
それは、明らかに苦しい論だ。そんな論がまかり通る訳はない。
「その勝手な論を通そうというのですか?」
「か、勝手な論などとは……」
「その論を述べる意味を、わかっているのですか?」
「え?」
ロクス様は、ドルバル様に対してかなり怒っているようだ。
先程まで、私と和気あいあいと話していた人と同一人物とは思えない程である。
だが、これが公爵家次男の本来の覇気なのだろう。上に立つ者には、それなりの威厳が必要なのである。
「私達、ヴァンデイン家は、あなた達オルデニア家を叩き潰すつもりです」
「え?」
「あなた達のやり方は、目に余る。そのような主張をする者達を、野放しにしておこうとは思いません」
ロクス様は、淡々とそのようなことを言った。
その言葉に、ドルバル様は顔を歪める。
公爵家からの叩き潰すという言葉。それは、ドルバル様にとって、かなり絶望的なことだったようだ。
「そ、そんな、ま、待ってください……それだけは、やめてください」
「あなた達は、主張をしたのです。その主張をしたことの結果を、特と味わってください」
ドルバル様は、ロクス様の言葉に表情を変えていた。
その言葉の意味を噛みしめているのだろう。
こうして、ロクス様とドルバル様の話は終わるのだった。
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