第20話 追加 アインシュタインとバディ・ロジャース

 全く関係ない2人ですが、前者はある事実が海外では書き換えられ、後者は彼に関する目撃証言が日本では無視される、ある意味共通点があります。

 アインシュタインは、戦前来日しています。どうして来日時したかと言うと、日本側が現在の1億円になる報酬と来日、滞在費用全部日本持ちで招待したのです。

 どうしてか?第一次世界大戦後、ドイツの科学者も困窮していると知った日本側が、「恩恵を受けたドイツ科学者を助けよう!」と義侠心をだし、また、恵むというのは失礼だから、日本で講演してもらう、各研究機関、学校を視察してもらい助言を受ける形にしよう、日本のためにもなるし、後援を聞きにくる聴衆からは料金を取れば、費用も賄えるということでした。そうした構想で、次々にドイツ人科学者が招待されました。アインシュタインの訪日も、その一環でした。アインシュタインがユダヤ人ということは考えておらず、ドイツの偉い科学者、しかもノーベル賞を取った、物理学の常識を覆した相対性理論の発見者としか見ていなかったのです。講演が多すぎると言う苦情がアインシュタインがあり、急遽へらすていう場面もあったものの、大いに日本の観光も楽しんだことが記録にも残っています。

 一方、海外における彼の伝記では、この訪日について、

「世界一周の途中に、たまたま日本に滞在し、そのファシズムに反感を抱いた。」

とだけしか記していないものがあります。ちなみに、来日の際、人力車を人権侵害だと批判したという話しがありますが、実際には人力車に妻共々乗っていました。

 次にバディ・ロジャース。アメリカプロレス史上の一時代、超人気レスラーとして君臨したプロレスラーです。彼については、故梶原一騎原作の「プロレスラースーパー列伝」中彼の再来と言われるリック・フレアーの口から、「人気だけで実力のない彼のようにはなりたくない」と言わしめています。さすがに、最近では、まともに論じられる際には、実力があった、強かったとされています、ただ、なんか奥歯にものが挟まった言い方に感じられるのですが。また、現代に受け継がれているとされる時も、パフォーマンス的なところであり、ジャイアント馬場さんが絶讃するのは(後で触れますが)、そのような姿であったり、一人考えごとにふける姿であったりと実力以外のことにしています。そして、有名なカール・ゴッチとビル・ミラーによるバディ・ロジャース襲撃事件。自分達の挑戦に応じようとしない彼に制裁を加えたとされる事件です。彼は腕を骨折させられています。最近は、ドアにはさまれたり事故との説もあるとか、興行で対立した結果とも書かれるようになっていますが。この事件が本題です。

 この事件の目撃証言者がいます。ジャイアント馬場さんです。

馬場さんは、この日、彼との試合を前に、控え室で米国での師匠アトキンスと打ち合わせしていました。離れたところに座っていたロジャースのところに、ミラーとゴッチがやって来て話しかけてきて、後ろに回ったミラーがロジャースを羽交い締め、ゴッチがすかさず金的を蹴りつけ、悶え苦しむロジャースを2人がかりで暴行を加えたと書いています。当時、2人はロジャースに対抗して、ブルーザと組んで興行をしていたが、ロジャースの人気に勝てるはずはなく、その恨みを果たそうとしたというのが馬場さんの考えでした。

 馬場さんは、「大好きなレスラー」とバディ・ロジャースを呼び、「リック・フレアーが彼の再来と呼ばれるが、実力が彼とは段違に強かった」、「彼の技、スピードは現代に持ってきても通じる」と絶讃していますから、100%信じてはいけない証言ではあります。しかし、現場での目撃証言は、まず第一にしなければならないはずです。馬場さんの証言からは、ゴッチとミラーは、卑怯にも、騙して、油断させ、後ろから、急所打ちをして、抵抗できない状態のロジャースを殴る、蹴るしたことになります。

 その他のロジャースに関する部分も、こちらは無視しないまでも、巧みに塗り替えています。ロジャースは、他のプロレスラーから嫌われ者だったとされる時がありますが、こちらもジャイアント馬場さんによれば、彼の米国での師匠・トレーナーのアトキンスと仲がよく、アトキンスはロジャースを認めていたと言っています。ちなみに、彼は馬場さんが一時日本にワールドシリーズに参加するために帰国すると、トレーニングを怠けていないかと心配して、無理矢理力道山にワールドシリーズへの参加を認めさせ、また、力道山の死後日本プロレス界に復帰する馬場さんに、空港の待合室で出発間際までトレーニングをさせたくという職人気質の人として、馬場さんは描いています。

 馬場さんの目撃証言が無視されるのか?もし無視しなければ、プロレスの神様が、最低男としか思えない行為をしたことになります。

 そのカール・ゴッチですが、もう一つあります。

 後のアンドレ・ザ・ジャイアント、当時モンスターロシモフとの試合で、ジャーマンスープレックスで押さえこみながら、審判が気絶していて、カウント10以上は押さえ込んでいたのに、フォールをとってもらえず、ついにブリッジが崩れて、すかさず上から露出が押さえ込み、復活した審判が3カウントという試合がありました。これについては、ロシモフが審判を振り飛ばした、ゴッチは不当判定ともいえる状態に抗議しなかったとされることが多いようです。私は、テレビでこの試合を見ていましたが、ゴッチがロシモフをロープに飛ばしてところ、審判に当たり、吹っ飛んで、倒れたものです。また、彼は試合後、審判に抗議していたのを記憶しています。

 何故、これが書き換えられるのか?

 猪木をはじめ、多くのプロレスラーが彼の弟子ということでなり立っていることに原因があると思えてなりません。ただ、当のレスラーではなく、そのような師弟関係で描いた漫画等の売れ行きやそのようなことを解説した人々の収入の問題等から、出版、マスコミが故意に動いたと勘ぐっていますが、真相は分かりかねます。

 なお、私個人は、ジャイアント馬場さんの大ファンでありますし、カール・ゴッチのファンでもあります。マイナスな点を受け入れても、ファンであることには変わり目ありませんが。

 

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