第16話 レーニン、トロッキー、ブハーリンと戦時共産主義

 「資本論」を環境問題などから再評価して読み直すという主張が話題となり、「最近の中国は共産主義の名前には値しない」と日本共産党が非難しました。両方とも評価はできますが、現実の社会主義国、マルクス主義国家が如何だったかの問題をクリアしなければなりませんし、最近までは共産主義として肯定していたがと、いうことになってしまいます。

 旧ソ連の体制は、レーニンがその基礎、KGBも含め、を作っています。ただ、やらねばやられる中でのことで同情はします、私は、独裁者などに心情的に甘いところがあることを認めざるを得ませんが。

 その上で、「戦時共産主義」について論じたいと思います。

 トロッキーは、レーニンが実は後継者に決めていた人物で、それ故にスターリンに追放され、最後亡命先で暗殺されました。ブハーリンは、レーニンから高く評価された幹部で、スターリンに粛清されました。

 それで、「戦時共産主義」ですが、ようはソ連共産党政権に必要な物資を、自作農等から強引に取り立てる、略奪体制でした。

 さすがに、これをそのまま続けるわけはなく、「ネップ」体制に移行しました。私有、市場、個々の利益、制度に基づいた税収等まともな方向に、多少とも手直ししたものです。当然、我々はこの方向で国家建設を進め、状況を見ながらも、試行錯誤はやむを得ないとして、社会主義・共産主義建設に向け、徐々に進めていくべきだと思うはずです。

 それがトロッキーは、ネップに絶対反対、これは右派、官僚の陰謀であり、速やかに戦時共産主義に復帰すべきだと考えていました。ブハーリンは、当初、ネップには反対でしたが、いざ実施してみると、ネップの方向で進めていこうと云う主張に転じました。さて、レーニンはというと、現実を考えてネップへの移行を指導したものの、基本的にはトロッキーとどう意見でした。

 同様なことが、労働組合問題でもありました。トロッキーは、労働者の政権が実現したのだから、労働組合は必要がなくなったから廃止と云う考えでした。当然、生産現場の管理は国から派遣された者が幹部として行うということになります。ブハーリンというと、労働組合による生産管理。生産現場では、労働組合での選挙などに基づいて、幹部等を選ぶ、権利、待遇を守る等というものでした。

 労働組合の仕事が残っている、会計処理とか、というのがレーニンの主張でした。基本的にはトロッキーと同様であって、末端事務をする程度に限定して存在を認めるというものでした。ある意味中間的な立場をレーニンはとっています。

 スターリンは、トロッキーの考えを、粗雑、乱暴、強権、粛清で実施したともされています。

 「戦時共産主義」への、マルクス・レーニン主義の肯定感を、まず問題視し、批判、分析、解決することが、まずはじめになされなければならないでしょう。

 マルクス経済学の講義で、

「共産主義と言えるのは、戦時共産主義だけで、それ以外実現されていない」

とありました。称賛するものではありませんが、あってはならないというものではありませんでした。これは、40年前の話ですが、当日のマルクス・レーニン主義者に共通していました。

「戦時共産主義」を、必ずしも否定しないという態度は、恐ろしいものではないかと私には思えてなりません。

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