第13話 もし、日本人が模倣だったら、「まね」批判はなかった?

 世界に、「小イギリス」とか「小フランス」とか言われる所々は数多いのですが、その民族なり、国なりが「もの真似」非難を受けないのはどうしてでしょうか?フランスにとって、小フランスの拡大は、誇らしい事ですあり、偉大にフランスに習おうという態度は当然であり、「あいつらは分かっている!」なのです。それを、「あいつらは模倣だ。」と誹謗したら、自己否定になってしまいます。だからこそ、日本を模倣と非難するのは、「どうしてコピーにならないんだ!」との裏返しだと私には思えるのです。

 しかし、日本人がこの「模倣者」という烙印を特に戦後強く受け入れてしまっています。それは前話で触れたことですが、敗戦の原因を考える流れとスターリンが与えたテーゼとが、三位一体となった結果です。日本は、上から欧米の模倣の資本主義化をした、自己進化ではない奇形な、間違った歴史を歩んだのだ、そして現在もそうなのだ、という確固とした信念と為っています。こうしていれば良かったとの反省となるのです。故司馬遼太郎先生の起点もそこにあると思います。

 しかし、本当のところは、日本は異例なほど、純粋に、段階を踏んで、自己進化して近代化=資本主義化を果たした国であり、それは今日でも同じであると云うことです。

 この点について、海外の主張が先にありました。江戸時代の経済の発展を上回っていたのは、資本主義化したイギリスだけだという指摘から始まり、旧ソ連からの主張も、頑なに日本の経済史学は、マルクス経済学だけでなく、それ以外の立場も協力して、鎖国状態を守り通しました。歴史教科書の記述が変わったとされていますが、その点につき上手く守り通しています。

 実は、日本の近代化は、純粋な発展段階を進んだものだったことが指摘されています。その著書を読んで、積年のモヤモヤが解けた気がしました。二つ例を上げれば、造船と鉄鋼です。幕末に木造軍艦の建造に着手し、明治維新後、木造軍艦→木造鉄張軍艦→木造鉄骨鉄張軍艦→鉄製軍艦→鋼鉄軍艦の国産建造に進むという、如何にも教科書的な段階を進みました。鉄鋼業では、実は英国技術を導入した釜石では失敗、八幡でも万全の体制でドイツ技術を導入したものの失敗しかけました。その原因は、日本の低品質石炭のコークス化に失敗したからです。英国技術者も、ドイツ技術者もそれに失敗したのです。釜石を復活させ、八幡を救ったのは、日本人技術者であり、コークス化を成功させたからです。コークス化は、近代国家鉄鋼技術の基礎であり、日本はその発展段階を体験したわけです。

 また、「日本は機械を輸入して生産した。だから、模倣で不健全なのだ。まず、機械を生産することから始めるべきだった。」との主張があります。明治維新とほぼ同時期に、エジプトでその方向で近代化の試みが実施されました。結果は大失敗、財政難に陥った、外債により推進したこともあり、せっかくのスエズ運河の利権も売却してさえも、イギリスの植民地化に突き進むことになりました。原因は、機械がてきても、市場が形成されていなかったから、売れない、経済が目論見どおりまわらなかったためです。機械が製造されて、それを利用して生産が拡大するのではなく、需要があるのに供給が足りない、増やせないというネックによる需要拡大から、機械が発明され、その利用が広がり、その機械の生産が産業となってゆく、そこでまた別の部門で供給のネックが生じて…の連続なのです。その逆は似たようなものですが、ありえないのです。

 そして、戦後。例えば、ロケット開発。日本は玩具みたいなペンシルロケットから始まりました。「たった50㍍」というマスコミの罵倒は、欧米での先駆者が浴びたものと同じなのです。日本は、欧米と同様な発展段階を進んだのです。

 ある意味は、幸運にも、発展段階を進めることが出来る時期にいたということにです。21世紀になって、ペンシルロケットから始めることなぞ出来ませんから。

 イギリス資本主義が、海外技術や技術者の導入から始まったことは歴史上では周知のことです。それを日本のみ誇張することは問題があります。

 日本人は、模倣と改良が得意だと言うのは誤りで、愚図に基礎から始める傾向にあり、それが強みであり、摸倣・改良は帰ってい苦手なのではないかと思えてなりません。誤って、摸倣・改良が得意と考えての行動、投資家は得てして、日本内で既に進んでいるものを台無しにすることが多いと思います。

 カステラは、西洋菓子の日本化てはなく、固いパンのようだった先祖から、それぞれ独自の発展を遂げたものです。だから、摸倣・改良ではないのですが、西洋菓子の摸倣と呼ばれる、独自なものだから、許せない、摸倣だと言いたてる面があると思います。

 マルクスは、近代文明の父親はギリシャ文明、母はイスラム文明とし、同時期のジョン・スチアート・ミルも、欧州は独自なものがあるか、全てのものの起源は他の地域にあると指摘しています。それでも、近代欧州文明を摸倣とは言っていません。

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