第11話 レオナルド・ダ・ヴィンチは実は仕事が早い?

 「レオナルド・ダ・ヴィンチという名の神話」という本があります。ダヴィンチを知るなら、是非読んで欲しい名著だと思います。彼の業績を詳細に記述し、彼のノートが当時存在している物であり、彼は剽窃家だ、という批判に対しても、先人に対する彼の研究手記の面があり、優れたデッサンで当時の優れた作品、仕事を現在に全貌を伝えていると評価しています。また、彼が、その優れたデッサンを教授したり、それによって製作者にアイデアなどを示したりしていることを指摘し、デッサンで仕事がほぼ完了していたと感じていたのではないかとも指摘しています。

 彼を高く評価しつつ、最後に

「残した作品は数少なく、未完の作品はかなりある。同時代から高く評価されるのは何故だろうか、人徳がなせるところだったのか。」

と疑問を呈しています。

 確かに、絵画作品としては確かにそうですが、それは彼の一面ではないのか、とも思えるのです。

 彼がミラノ公の元で、イベントの演出で、独創的な機器も作った上で、その演出で毎回好評を博し、観客を驚嘆させています。

 ここで彼は、期限に合わせ、かつ完成させて、実施しているのです。

 また、マキァベリが主導した、対ピサ戦略の一環の運河建設では、設計をまかされ、期限とおりに、設計図を完成、提出しています。この運河は上手くいきませんでした。ダヴィンチの設計図が欠陥だったとの主張がありますが、私の聞いたところでは、後世の研究では、設計には問題なく、建設担当の側の責に着せられるとのことです。これで見ると、彼は期限とおりに仕事をきちんと完成させる男のように思えます。

 でも、「最後の晩餐」や「モナリザ」等のように、なかなか完成しなかったもの、構想を何度も練り直した末、投げ出した、未完成になったものがあります。どちらかと言うと、彼を有名ならしめている作品の多くがそうです。あと、注文した絵画の完成、提出を催促した書簡も残っています。

 また、大ロレンツィオ暗殺犯処刑の絵を命じられ、デッサンまではできたものの、そういうものまで完璧を期して、他人にまわされてしまったという例もあります。

 彼は、間に合わせる能力がありながら、そうしなかった場合があるということでしょうか。

 もしかしたら、彼は器用貧乏、芸術以外の才の方が先にたっているが、芸術家でありたいと考えた人なのかも、と勝手に思ってしまいます。

 それとも、後になってから手直しを思いつく、手直しをしたくなりタイプだったのでしょうか。

 最初の絵画の仕事はデッサンだけで投げ出しましが、その後は描くまで、とにかく手をつけるようになったのですから、進歩したとも言えるかもしれません。

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