第4話 松永弾正は悪党ではないと言うけど
松永弾正は、戦国の3悪人とされていますが、最近、それを否定する主張がなされています。
ただ、彼はその時隠居していた、だから、将軍家殺しも、何でも息子がやったこと、松永弾正がやったのではないという内容です。では、「戦国3悪人の1人は松永弾正の息子」ということに修正するという主張ですか?と聞けば、「違う。」と答えるでしょう!しかし、一方、彼の隠居の間に、一度信長に反旗を翻して、降伏、多聞城を引き渡した時としてもされています。「隠居」をあまりに強調すると、信長への反旗は彼の意志ではないということになり、後述のことを彼の意志ではないことになり、主張の内容が弱まってしまいます。彼は、何時も「親の心子知らずだ」と嘆いていたと論じることすら出来るのではないでしょうか。そもそも、「隠居」=実権がないとは言えないのです。信長も隠居しているわけですから、形の上では。
彼の信長への反旗を「信長研究の最前線」(朝日文庫)では、筒井順慶を大和守護に命じたことであり、いかにも、それが不当なこととして印象を与える記述になっていますが、織田家の立場から見れば、どうでしょうか?現地勢力の筒井順慶を取るか、松永久秀を取るかの選択となるわけで、どうしようもないことです。それに一度反旗を翻した松永家が、一段下げられた待遇になる方が当然ではないでしょうか。これが逆の選択の方が不当のように思えます。
また、同書では、「秀吉が別所氏に高圧的な態度をとったため、信長に対する不信感が高じて離反に至ったことになっている。しかし、これは…侫人に仕立て上げたにすぎない。」としていますが、高圧的態度に反発することが侫人と解する人がいることの方が不思議と言えます。
秀吉はどうすべきかということに視点を変えるとどうでしょうか?播磨が別所氏だけであれば別ですが、実際はそうではなかったわけで、上に立って判断しなければならない秀吉と自分が播磨の主と認められていると考えている別所氏の利害関係の結果と言えるのでないでしょうか。織田側から見ると、どちらをとっても角が立つ、しかし、どちらか一つを取らなければならないというところだったでしょう。織田側から見ると、信長対現地勢力ではない、正義の地元と悪い信長ではあり得ない、地元の色々に巻き込まれて苦労する信長も見えてきます。
よく本能寺の関係で取り沙汰される長宗我部元親との関係も、そうです。
「四国切り取り次第」を信長が反故にし、四国侵攻を始めたことが非難されます。
しかし、信長の側から見れば、あくまで、「織田領以外の」、「織田側の諸将以外の」四国の切り取りを認めただけでしかありません。次第に、織田方に転じるところが増えるで、それを考慮することなく、「四国全土の斬り取り」を目指し、その上、先の「信長研究最前線」にもあるように、毛利氏と一旦提携した長宗我部元親の行動は敵対行動以外のものではないでしょう。四国侵攻の主将が、明智光秀ではないのも、交渉役の光秀が裏切りの悪評を受けないしようにとの信長なりの配慮とも言えます。
荒木の謀反でも、信長を非難するめ場合、荒木の領土拡張を全肯定しないといけないことになるのではという内容になってしまいます。「信長研究最前線」では、尾張衆の優遇を非難していますが、逆に見ると、だからこそ、長年の宿老林佐渡の守などの追放をして、平等を図ろうとしたということになるのではないでしょうか。
信長の勢力が拡大し、織田方に降る勢力が増えれば、その調整で苦労せざるを得ない、全てが満足する解決策はないということです。それは、織田側の勝手な事情ではありますが、かと言って、反織田に転じた側が、地方の安寧、主張の代表者だとするのは間違いだと思います。
結局は、それぞれの利害、事情があり、その対立の結果であり、どちらを正義のように主張は出来ないということです。
松永久秀は、悪人ではなく、常識的な優れた戦国の武将、大名であるが、正義の志というわけではないということになり、あえてそういう方向に持っていこうとするのは、なんらかの政治的意図を感じるということです。
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