第4話 死神のお仕事(3)

「次は《内科》か」

 ムエがそう呟きドアを潜ると

「おや珍しいね!若い人たちが来るなんて!」

 声がする方を見るとそこには老人たちが井戸端会議をしていた。

 ムエがグリムに聞いた。

「俺らの姿が見えっるってことはつまり?」

「そう言うことだな」

 グリムも頷いた。

「お爺ちゃん、お婆ちゃんこんばんわ」

 ムエが井戸端会議の輪に入っていった。

「若い兄ちゃんにはワシらが見えるんか?」

「爺ちゃん、ちゃんと見えてるよ。ちなみに俺らの方が爺ちゃん達より歳とってるから」

 ムエが笑顔で話す姿をみてグリムが囁いた。

「早く導いてあげなよ」

 その言葉が聞こえたのかその中のお婆さんの一人が

「お迎えが来てくれたんだね。ありがとう」

 そう言うとムエの手をとってありがとうと何度も言った。

「お婆ちゃん、これは俺らの仕事だからそんなに頭を下げないで」

 ムエはそう言うと順番に石を渡して行った。

 最後の一人に渡す頃には井戸端会議で騒がしかった一角が急に闇に飲まれ気味が悪い程静まり返っていた。

「さて、病棟を回るよ」

 グリムがムエにそう告げると

「・・・おう」

 と力の無い返事が帰ってきた。

 その後も二人は病棟を回ったが流石に小児科と違い老人達ばかりと言うこともあり寿命はかなり短かった。

『1Y2M30D12H32M2S』

「リスト対象」

 クロノスに表示された時間を見てムエはグリムに伝える。

 2年以下の寿命の持ち主はリストアップされていく。

『5M12D2H12M9S』

「この爺ちゃんは半年も生きれないんだな」

 そう言うムエに

「あまり感傷に浸ら無い方が良い。仕事に差し障るよ」

 グリムは忠告した。

「お前はドライだよなグリム」

「情に絆され易い奴のパートナーはこのくらい冷静な方が良い」

「確かに、何かあったら頼むよグリム」

 そう話すと二人は最後の場所へ向かった。

「次で最後だよな?どこだっけ?」

「霊安室。というか死体安置所だな」

 指示書を見てグリムが話した。

「何でそんなんが病院に併設されたんのよ、俺苦手よ?」

「しょうがないだろ、ここは検死もやってるから併設されてるらしいから」

 話しながら向かってる最中通路に一人の男が祈るように椅子に座っていた。男の前の扉の上には《分娩室》と書いてあった。

 ムエが急に立ち止まりグリムに話しかけた。

「なぁグリム?ここちょっと寄ってかない?」

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