第24話 恵の森

 サヨはまだ目覚めません。

「アネエサ様、この奥に見たことの無い黄色い花が、いっぱい咲いてた」

「黄色い花?サヨが目覚めたら、行ってみる、案内して」

「はい!!」


「ん?」

 目覚めたサヨが、フラフラ立ち上がり、第一声。

「あっれえ?小さ!!アネエサ様?皆?凄く小さくなった?」

 見上げると首が痛くなる。

「サヨ!貴女が無茶苦茶デカクなったのよ!!」

「私が?デカク?」

「取り合えず服を着て!」

 成人女性に見える、サヨのでっかいバストとか、陰毛の無いお股とか、見上げるこっちが恥ずかしいよ。


 クスネて来た革のズボンに革の上着、おそらく盗賊ボスの物でしょう、着る人は居ないと思ってた巨大な服ですが、サヨにはパッツンパッツンでした、特に胸とかお尻とか。

 巨大に見えた盗賊ボスより、サヨの方が遥かにデカイ、長ズボンが7分ズボンになってる。

「あっ!盗賊とうじょくぼしゅが短足たんしょくらった?」

 咄嗟の言葉は、いまだ赤ちゃん言葉になってしまいます。


 革の服は、着ている内に馴染んで、多少は伸びるはず、この服以外だと、シーツをトーガみたいに纏うしか無いよ。


「サヨ!デカクなった身体を馴らす散歩!森の奥に行くよ」

「はい!アネエサ様、抱っこします」

「?わっ!あぁ~~っ!!」

 何を思った?私の歩巾ではサヨの散歩に付き合え無い?

 抱っこと言いながら、私はサヨの肩に載っけられました。

「わぉ!!スッゴく見晴が良い!!!サヨの視線はこんななんだ!!」


「アネエサ様!落っこちないよう確り掴まって!!」

 見上げているヒヨが、声を掛けて来ます。

 サヨの頭がデカクて、手が回せ無い!サヨの右肩に乗ってる私は、サヨの後ろ髪、私と同じ黒髮を確り左手で握りました。



 サヨは走ってない、普通に歩いてる、でも顔に当たる風音がビュービュー鳴ってます。

 後ろをカツ達が、小走りと言うか走って着いて来てる。




 前方からダチョウと言うかエミュウが襲って来ます。

 楽チン私は、余裕でカマイタチを飛ばし、エミュウの首を落としました。

「アネエサ様!有り難う御座います!カマイタチ習得しました」

「へっ?サヨ?どう言う事?」

「アネエサ様の魔法、見て覚えました」

「スキル魔法習得?」

「はい!」


 凄!!身体能力も魔法もずば抜けてる、サヨに恨まれる事の無いよう、気を付けましよう、間違っても敵にだけはならないで!!


 ビビる私の気持ちを、気付く事など無いのでしょう、使える事が嬉しいようで、サヨは猪を見つけ、カマイタチを飛ばして倒しています。

「次は気砲を撃つよ!」

 威力を抑えた気砲を、ウサギに当てます。

 ウサギは吹き飛び、木にぶつかって首を折ったようです。

「アネエサ様!気砲を習得しました」

 なんか悔しい、結構苦労して、手探りで習得した魔法なんだよ!見ただけで使え出すって反則だよ。


 カツ達、獲物を収納するの忙しそう。



 普通に歩いて居ては、気付かないで通り過ぎていました、高い目線のお陰です。

 見覚えのある葉っぱが付いた木を見付けました。

「メイプルリーフ金貨の葉っぱ!!」

 そう!!!シロップのカエデです!!

「ふにゃぁ~~甘~いシロップ見ぃつけた!!!」

「えっ?アネエサ様、何?」

「この木から甘いシロップが採れるの!!」

「あまいって何?」

 甘い味が分からない?豚人の食生活で、甘味なんて無かったのでしょうね。


 カマイタチで幹に傷を付け、滲み出る樹液を舐めてみます。

「煮詰めていない樹液でも、ほんのり甘い!皆!この樹液舐めてごらん!!」

 サヨが長い手でさっと樹液をすくい、ペロリと舐めました。

「あっ!美味しい!!これが甘いって味?」

 サヨが樹液全てすくい採った為、カツ達はヨダレをたらし見てるだけ。

「「「「サヨ!ずるい!!!」」」」


 しばらく待つと、樹液がじわっと滲んで来ました。

「「「「甘~い」」」」

「この樹液採取、サヨとカツ達の仕事にします!!」

「「「「「は~~い」」」」」

「この辺りの木は全てカエデだけど、この葉っぱの形覚えて!!この葉っぱの木がシロップの出る木だよ!!」

「「「「「はい!!!」」」」」



「フヨ、黄色い花が咲いてる所って近い?」

「え~と、こっちへ少し行った所だよ」

「連れて行って!」


「サヨ達は、紐と竹筒渡すから、こんな感じに取り付けて樹液採取して!!」

 傷付けた幹に、樹液が溜まるよう、竹筒を取り付けて見せました。

「出来るだけ沢山の木から、採取出来るよう頑張って取り付けて!!」

「「「「はい!!」」」」




 フヨに案内された所は、タンポポの群生地でした。

 記憶より少し大きく感じるタンポポ!私が小さいから?

 ナイフで根を掘り出してみます。

「タンポポコーヒーが飲める!!」

「フヨ!こんな感じで、根を掘り出し採取して!!」

「はぁ?はい!」

 ゴボウや長芋と違い、タンポポ根は直ぐに掘り出せます。

「フヨ有り難う!これくらいで良いよ!!皆の所に帰ろう!!」



「おぅ!!圧巻だね!!!」

 サヨ達の頑張りで、見渡す限りのカエデの木に、竹筒がセットされて居ます。

「えへっ!良いこと思い付いた!!」

 辺り一面の樹液を風魔法で集めます。

 少量でも、多くの木から集めると、驚く位大量の樹液が集まりました。

 この樹液から、水魔法で水分を抜きます。

 樹液がトロリとしてきました。

「ちょっと味見!!!甘~~い」

(この混合魔法は、まね出来ないでしょう!!)

「風と水の混合魔法、濃縮!習得しました」

 ガクッ!こんなのまで使えるの?


 濃縮した、カエデシロップ皆に味見させたところ、魂が抜けたようになっています。

 暫くして。

「「「「「う、旨ぁい!!!何?これ?メチャ甘い!!!」」」」」


「シロップがあると、お菓子も作れる」

「「「「「オカシ?オカシって何?」」」」」

 甘味を知らないくらいだから、お菓子なんて全く理解出来ないでしょう。

「今度作ってあげるよ」

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