第5話 これって何?聞いて無いよ!!

 安全な寝床、木の根の祠は名残惜しいけど、あの場所は定住には向いて無い、探せばもっと良い所が見付かるよ。

 でも、この身体でヨチヨチ探索して、一日で見付かる?


 当分は日が暮れるまでには、あの木の根の祠に帰れる範囲の探索にしよう。


「あっ、あらち、ちゅいちぇる!!」

 30分程ヨチヨチ探索しただけで、小さな小川を発見しました。

「おちゃかな、およいでりゅ!」

 流に逆らって小魚が泳いでいます。

 色々工夫して準備していた、布で袋を作り輪っかに縫い付けた物を取りだし、魚を狙います。


 でも、赤ちゃんに素早く泳ぐ魚がすくえる訳が無く、不漁に終わりました。

「ちかぁ~ち、かにちゃんれ~しゅ」

 苦労して捕まえた、沢蟹が3匹袋に入っています。

「かにちゃんは、おいちいれしゅ、ごちちょうれしゅ!」


 木の根の祠に帰る途中、小さな柿が鈴生すずなりになって居たので採集しました。


 お湯が沸くあいだ、柿の皮を剥いて一口切り取り口に入れました。

「ぺっ!ちぶい!!!」

 野生の柿って渋柿だった、干し柿にしないと食べれない。


 小鍋に、お湯が沸いたので、蟹を真っ二つに切って鍋に入れます、ジイタケも一口サイズに切って投入、岩塩を一粒入れて煮立てます。


「もうよちゃちょう」

 簡易カマドの残り火を取り除きます。

 残り火を利用して、野エンドウ茶を煎れました。

「かにじりゅ、しゃめたかにゃ?」

 ふ~ふぅして、ジイタケをツルリと食べてみました。

「わっわ!!おいちいよぅ!!!」

 僅かな塩味と沢蟹の旨みの出汁で、最高の蟹汁が出来てる!!


 蟹汁をコクコク、食べやすいジイタケをちゅるちゅる食べて。

「おたのちみ!!かにしゃんをたべりゅじょ!!!」

 悲しいかな赤ちゃんのお腹です、既にいっぱいにふくれこれ以上食べられませんでした。

「ぷんぷん!くちょちてにぇりゅ!!」


 知識と思いは大人ですが、赤ちゃんの身体、酷使し過ぎて限界だったようです。

 木の根に、潜り込んだとたん寝息をたてていました。


 ◎◎◎



「バリバリ」「ガリガリ」「グチャグチャ」

 真夜中、異音で目覚めました。

 辺りは、月明かりでよく見えます。

 寝起きで、頭が働きません。


 あれ?子供が3人?なにしてる?

「あっ!!わたちのかにちゃん!!!」

 頭が働いって居れば、息を潜め隠れて居る所ですが、3人とは言え相手は子供、それより朝食にしようと思っていた、大切なカニをむさぼって居る!

「こりゃぁ!!!わたちのごはんたべりゅな!!!」

 頭に血が昇り怒鳴った事が、逃げ隠れる事しか出来なかった、私の転機でした。


「グギャ?(誰だ?)」「ギャギャッ!(何処に居る!)」

 グギャって?あれ人間の言葉?

「かいわ!!ギュギャギャ(それは私のよ)グギョギョギャギャ!!(勝手に食べるな!!)」

「ギョギギャ(悪かった)」「ギョゲゲギョギャ(俺達腹ペコだったんだ)」


 頭を下げる、3人の子供達に近付いて見て驚きました。

 粗末な獣の皮を腰に巻いた、痩細った80センチ程の身長で浅黒い肌をした、子供?顔は·····

 人間じゃない!!!

 これって何?こんなの聞いて無い!!!




 気を取り直し聞きます。

「あなた達、何者?」

「俺達は·····えっ?お前!人間か!!!」

「「人間の子供!美味しい獲物!!!」」

「わ~た~しのご飯食べたお前達!!逆に私が食ってやる!!!」

 殺気を出し、弱い気砲をドッカン

 3にん?3匹が吹き飛び転がって行きました。

 弱い!弱過ぎる!!これでは食べ物捕る事は出来ないな!


 3匹が土下座して

「「姐さん御見逸れしました!!!」」

「お姉様素敵です!!」

「お腹が減ってるのね?アケビ食べる?」

 沢山採ったアケビを3匹に与えます。

 私が食べるのを見て、3匹飛び付いてむさぼっています。

「「うめぇ!!」」

「あ?甘い?こんなの食べた事が無い!!」

 腹一杯になったようで、3匹満足そうに

「「「姐さん(お姉様)有り難う御座いました!!!」」」

(あはっ!餌付けかよ!!)

「で?あなた達、何者?」

「俺達は小鬼族!凶悪なゴブリンに間違われるけど、奴等とは全く関係ねぇ!!」

「浅黒い肌だけど、小さな角のある可愛い顔をしてる(牙は目だつけど)ゴブリンは醜い顔で緑の肌だったよね?」

「「姐さん!よくご存じで!!」」

 ラノベの知識だよ、ラノベって、異世界生活のバイブルだね。


 事情を聞くと、村のボスが狂暴でよく気に食わないと暴れ、乱暴するそうで、危険を感じ3人で逃げ出したそう。

 行くあても無く、生活力も無い3人がさ迷っている内、旨そうな匂いに釣られ、私の所に来たそうです。


 話してる内に、いつの間にか夜が明けて居ました。


「着いて来て!魚の取り方教えるから、確り捕って!!」

「「はい!!姐さん!!」」

「あなた達、名前は?」

「「「えっ?ナマエ?」」」

「名無しみたいね·····じゃ、私が命名するよ?」

「「「ナマエ」」」

「一番大きいきみ、タロウで良い?」

「よくわかんねぇが、俺タロウだ!!」

「次のきみ、ジロウよ!」

「俺ジロウ!」

「最後の女の子ちゃん、あなたは、ハナ!」

「わたし、ハナ?」

「自分の名前覚えた?」

「「「はい!!!」」」

「タロウ、ジロウ、ハナ!魚捕りに行くよ!!」

「「「はい!」」」



(姐さん、ヨチヨチ遅えな)

「何か言った?」

「いえ!別に!!」


 小川に着きました。

「良い?タロウはこれを川に浸けて、逃げてきた魚を袋の中にいれる」

「はい!」

「ジロウは、この辺りから魚をタロウの所に追いたてる」

「はい!!」

「じゃ、始め!!」

 うん、何とかなりそう。


「ハナは、ここで沢蟹捕り、摘まんでこの袋に入れて!」

「はい!姉様!!」

「イタタ!!」

「それじゃダメ、甲羅をこう掴むのよ、で、袋に入れる」

「すげぇ!姉様!!」


「私は用があるから先に帰る、食べられる量10匹程捕れたら帰って来て!」

「「「はい!!」」」


 木の根の祠に帰って来ました。

「よぅち!ちゅるちがき、ちゅくるじょ!!」

(あれ?小鬼の言葉は普通に話せたのに、独り言はまともに話せない·····まっ、良いか)

 柿の皮を剥いて行きます。

 夢中で剥いている内に100個程剥いて居ました。

 ぼろ布を細く割き、縄を綯う、柿のへたに残した枝を、縄に差し込んで、収納して置いた枝を地面に埋め込んで行きます。

 柿を差し込んだ縄を、埋めた枝に掛けて行きます、端を枝に括りつけ折り返します。

「ちぇんきがよければ、いちゅかくりゃいで、あまくなりゅりょ」

 雲って居ても7日あれば甘くなる。


 意外に時間が経っていて、3人は既に帰って居て、不思議そうに眺めて居ました。


「「姐さん!見てくれ!!」」

「わっ!!なに?すっごく沢山!!」

 嬉しいけど、捕りすぎだよ。

 頑張ったのを、叱る訳にも行かないし·····大急ぎ串を作らないと!!


 30センチ程の丸太を出し、電動ノコのイメージで、板にして行きそれを棒にカットします。

 折れた剣で、棒の先を削って尖らせ、3人に渡します。

「見ていて!お魚の口から串を通し尾びれの横位に突き出して!!」

「·····」

「やって見て!!」

 不器用ながらも、3人は何とか串を通しました。

「その要領で、お魚全ぶ串を通して」

「「「は?はい!!」」」

 ちょっと嫌そうにしてるけど、3人黙々と串を通ししてる。

 ハナは、10匹と言った通り、沢蟹10匹捕って居ました。

「!もしかして、タロウジロウ、数が分からない?」

「「姐さん、カズってなんだ?」」

「解った!ご飯食べたら勉強会よ」

「「ベンキョウカイ?美味しいのか?」」


 赤ちゃんの私が、子育て始めました。

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