第4話 工夫して野宿

 女達、悲しそうな顔でいつまでも見送ってくれてる。

 振り返りもう一度大声で「いっちょににげよぅ!!!」

 女達は悲しそうに首を振るだけでした。


 見栄でヨチヨチ歩きを続けて来ましたが、女達も遠く見えなくなり、さすがに疲れたので、はいはいに変えて進みます。


 すねが痛い、ちょっと休憩するか。

「ろっこいちょ」地べたにお座りしました。

(あはっ女達の説得に気を取られて、非常食何も持って来て無い)

「まっ、あんちょきゃ、にゃりゅれちょ」

(滑舌が悪過ぎる、もっとまともに喋らないと)

「あ~あ~ほんじちゅわしぇいちぇんにゃり」

 ダメじゃん。


「のろ、かわいちゃよ」

(コップ出して置いて、水魔法でチョロチョロ)

「コクコクッ、プハ~~」口からこぼれる方が多かったようですが、喉の渇きはおさまりました。

(ん~、オシッコ出そう、飲んだら直ぐ出る、ミルクのみ人形かよ!!)

 裾をめくって、右サイドで縛った紐をほどく。

 デカ紐パンを左脚にまとめ·····

「あっあ~!!うんきょちゅわりれきにゃい!!」

 後に転んだ拍子に、チョロチョロでちゃいました。

「ふべんにゃかりゃりゃや」

 非常事態だ!!勿体無いけど、ぼろ布でフキフキです。

(これは困った、予想外だ!排泄方法考えないと)

(準備万端のつもりだったけど、意外に無計画だったか)



 ◎◎◎


 危なっかしい足取りで、それでも懸命にヨチヨチ遠ざかる赤ちゃんを見送った女達は。


「逃げてもこんな山奥」

「魔物に襲われて、餌食になるだけ·····ね」

「ここに残っても、他の赤ちゃんみたいに、いつか殺される」

「束の間の自由を、満喫してくれれば良い·····」

「頭の良い子だったわね·····」


「出来る事なら·····一緒に逃げて守ってあげたかった·····」

「あの子、隠れるのが上手だったから、案外無事に里まで逃げるかも」

「うん!そう·····ね」

「逃げれたら良いね·····」

「·····」

「なんか、さみしい·····」

「生き甲斐、無くなった感じ」

「追いかける?」

「足手まといになりそう·····私達って」

「あの子、産まれて半年位だよね」

「だったよね?生後半年で、話が出来て歩ける?」


「あの子、一人の時魔法使ってた·····」

「魔法??」

「うん、風魔法に水魔法それに火魔法も」

「知らなかった!それって天才じゃない!!!」

「天才どころじゃ無い!魔法って才能のある人が、ちゃんと指導受けないと使えないよ!!自然に出来るもんじゃ決してないよ」

「極一部の人達が、秘匿してる技って聞いた事がある」

「実際魔法なんて、使える者は居ないとも言われてるよ」

「見たこと無いもんね」

「なんか、凄い赤ちゃんだったんだね·····」

「それに可愛いかった·····」

「「「「「うん!!!」」」」」


「·····無事に生き抜いてくれますように·····」


 女達は赤ちゃんが見えなくなっても、ずっと見送っていました。



 ◎◎◎




 風魔法、ギザギザ円盤が回転する丸ノコのイメージで、手頃な太さの木を切り倒し、私の下半身に合わせ20センチ程の丸太にしました。

 ぶっといドリルをイメージ、丸太をドーナツ型にくり貫き、更に前を丸ノコのイメージで切り取りC型にする、毛羽立った所、角を身体強化してナイフで削って完成!!

「ろこれもべんじゃ~」

「·····こにょしゃいじゅ、しゅうにょうれきりゅ?わっ!れきちゃ」


 予備にもう一つ移動式便座を作り、残った木材は切り刻んで収納しました。

 野宿できる安全な場所を探しながら、出来るだけ歩いて進みます。

 はいはいで行くと、服が汚れるし脛坊主が痛い。


 こう言う時に限って、アケビや野イチゴが群生してる。

 安全も大切だけど、食べ物はもっと大切だよね!

 風魔法を駆使して、大量に採取しました。



 ここが良い!!

 岩がゴロゴロ転がってる、痩せ地に生えた木の根が絡まって盛り上がった所、50センチ程の空間が出来てる。

「わたちにゃらもぎゅれりゅ」

 安全な野営場所が見つかった、次は食べ物。


「わたち、ちゅごきゅふまんなにょ、らっちぇ、おちゃがない」


 そこで採集した野エンドウ、鍋に沸騰したお湯で湯どうしします。

 水気を拭き取り乾かせて、1センチ程にきざみます。

 刻んだ野エンドウを、鍋で空煎りしたら、お婆ちゃん秘伝の野エンドウ茶の出来上がり!!

 小鍋のお湯に、一摘まみ入れて少し煮ます。

「おいちい!!なちゅかちいあじ」

 残りは布袋に大切に保管します。


「もうまんじょく!のいちごたべちぇ、ねりゅ」

 穴を掘って、移動便座を置き用を足して、土をかけ臭いを漏らさないレディのエチケット、木の根の空洞に潜り込み、ぼろ布敷いてぼろ布かぶり丸まって寝ました。



「おなかちゅいた·····」

 赤ちゃんは、少量ですが頻繁に食事摂取する必要が有ります。

 疲れていた事もあり、就寝して既に9時間経って居るので、空腹は当然です。

 寝具に使ったぼろ布を収納し、空洞からモゾモゾ外に這い出して、アケビをちゅるちゅる食べます。

「あまぁい!!おいちい!!!」

 冷めて居ますが、昨夜の野エンドウ茶をコクコク飲んで、朝食終了です。

「たんぱくちちゅ、おにくたべたい、おちゃかなれもいい·····」


 トイレで用を済ませ、便座を収納しかけて、ふと思いました。

「じぶんでちゅかっちゃもにょらけろ、ていこうあるじょ」

 浄化って光魔法だよね?

 ん~と、汚れやバイ菌が、砂粒みたいになって落ちるイメージ·····ダメか·····棒アメみたいな魔道具で浄化する話があったよね?何か似た物ポーチに入って無いかな·····

「これれいいか」

 お玉を握り「じょうか!!」


 格好が大事、見事に汚れが砂粒に変わり落ちて行きます。

「わたちのふくも、じょうか!!」

 パンパンはたいて、砂粒に変わった汚れを落としました。

 野営の後始末をして進みます、次の目標は小川を見つけ小魚取りです。


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