第3話 脱出のチャンス

「この子賢い」

「そうね、安全な隠れ場を自分で見つけてる!」

 夜になる度に、行方知れずになる私を見付けて、女達が話しています。


 不用品物置の隅、ぼろ布集めたお布団の上が、以後私の居場所になりました、意外に居心地が良いよ。

 女達は交代でコッソリ授乳、おしめ交換に来てくれています。


 一人の時、掴まり立ちの練習を始めました。

 身体強化は素晴らしい!!なんかもう歩けそう。



 授乳だけで無く、どろどろのお粥みたいな離乳食が夕食に出るようになりました。

 そろそろ逃げ出す準備を始めよう。

 外で力一杯放出しないと、洞窟内でチョロチョロ試す風はLV4から全然上がらなくなってしまった。

 ライターカチッと蛇口チョロチョロのイメージで火と水もLV2にしました。


 はいはい探索、このガラクタ置き場って、出口の近くにあった事が分かりました。

 コッソリ洞窟の外に出て、詳細観察で見ると食べられる野草が辺りにいっぱい見えました、ステルス使って近付いて観察!!


 お婆ちゃんと近くの山に、ワラビ取りとかに連れて行ってもらってたから、食べられる野草の知識は豊富だよ。

 イタドリ(お婆ちゃんはシートトって言ってた)にヨモギ山フキにカッポ(細い竹の筍)、更に森に入ると、茶シメジ黄シメジ、ジイタケ(椎茸じゃ無いよ汁に入れるとトロリと旨いジイタケ)に藍タケ(藍色の汁が出て毒タケみたいだけれど美味しい)、本寄せ(平タケ)にネズミタケ(ネズミの尻尾みたいなのがブワッと生えてる)、上を見るとアケビに山ブドウ黄色い野イチゴまである。

 逃げ出しても食べ物には困らないと思う。


 何時でも脱出は出来そうだけど、女達をどうするか、大勢だと直ぐに見つかって連れ戻されるだろうね。

 拘束されて居る訳じゃ無いし、逃げる気になれば今まででも逃げれたはず、女達は逃げる気が無いのかな?一応私が逃げる時、軽く誘ってみるか、来ない方が助かるけど、今まで育ててくれた恩は返さなくっちゃ。




 今、脱出にそなえて異空間収納を創作してます。

 イメージって言っても、ラノベ小説のアイテムボックスしか思い浮かばない。

 3日頑張ってみたけど、無理!そんな上手い話は無かったと諦めかけた時、古ぼけた革製のポーチが転がってるのに気付きました。


 これだ!!!

 このポーチの中が異空間になってる!!!

 ん~~ん・・・思い込み、執念は実ったよ。

 古ぼけたポーチが一瞬輝き、入れようとした20センチ程のダガーナイフがスルリと入ってしまいました。

 ダガーナイフと言っても、使い過ぎて細ったバーベキュウの鉄串みたいになった物、ガラクタ置き場だものまともな物じゃ無い。


 嬉しい!!アイテムボックスが完成したよぅ!!


 後はあたりの布やら、木のコップ鉄鍋、柄の折れた槍に折れて短剣サイズになった剣、片っ端から収納します。

 収納ポーチは、青い狸の四次元・・・おっとゲフンゲフン、みたいにお腹の所に括り着けました。


 ガラクタの中にも、砥石の割れた物とか木灰(山菜の灰汁あく抜き用)にフスマ(麦の籾殻もみがらちなみにお米の籾殻はスクモ、火持ちの良い燃料です)緑青の浮いた銅銭が多数、何れ位の値打ちか不明ですが、お金は有り難い、転がってた皮袋に収納、結構有用な物が在ります、全て収納して置きました。


 裸足では、山の中は歩き難いし危険、豊富に在るぼろ布を割いて縒って布鞋ぬのわらじを編みました。

 鼻緒だけで無く、鞋の踵に着けた二本の紐で足首を縛り、走っても脱げない優れ物です、何故か左右の大きさが、少し違ってしまいましたが、指がまだ上手く動かせない、赤ちゃんの作です、少々不格好でも良いじゃないですか。


 用意万端何時でもバチコイ!!

 と思ってたある日、盗賊どもがゾロゾロ出掛けて行きました。


 不思議に思い、女達に聞いてみました。

「とうじょくろもは、ろこにいっちゃの?」

「「えっ?赤ちゃんがしゃべったぁ!!!」」

「ちゃべりぇりゅりぇしゅよ」

「「凄い!頭の良い子と思ってたけど、もう話が出来るの!!」」

「とうじょくろも、ろこいっちゃ?」

「遠くの街道で商隊を襲い、略奪の出稼ぎだとかだよ」

「ろれくらいれ、かえちぇくりゅ?」

「30日位かかるらしいよ」

「いまにょうちぃにゃ、みんにゃれにぎぇりゅれしゅ」

「逃げる?無理よ!!」

「むりにゃにゃいれしゅ、わちゃしはひちょりぃれも、にぎぇりゅりょ!!」



 盗賊どもの宝物庫から金貨を少しと、銀貨は山程有ったのでかなり沢山クスネテ来ました。

 裸同然の格好ではと、小さめの革の半袖上着を着ました。

 腰をポーチで縛ると、ユッタリ長袖のワンピースになりました。

 準備完了、脱出の時です。


 結局女達は、誰一人着いて来ませんでした。

 ただ悲しそうな顔をして居たのが、気になります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る