第13話殺人日誌、四人目

 私の殺人技術はかなり向上していた。

 断定的に言ったが自惚れではないと言っておこう。

 客観的に見ても著しいものだった。


 技術だけではなく、私自身も成長している。

 新たな力を授かれるかもしれない――いや、獲得するだろう。

 殺人行為によって力を増している。


 私はテレビゲームを嗜まないが、あれは敵を倒すことで成長する。

 それと等しいことが私の中で行なわれているのだ。

 徐々に私が強くなっていく。


 しかしながら――少し懸念があるのは否めない。

 自分の変化が分からないことだった。

 どのくらい変化するのか。

 あるいは変異しないのか。


 私の中に不安はなかったが、もし悪影響が出るのなら対処しなければならない。

 私は私として生きたいのだ。

 化け物になりたいわけではない。


 そういえば、私のことを世間では殺人鬼と呼んでいるらしい。

 あまり面白味のないネーミングだ。くだらなくてつまらない。

 世間が畏れることは私の存在証明につながるのだから、決して悪いことではない。

 それでも、間違ったイメージを植えつけられるのは許せなかった。


 私は人として人を殺しているのだ。

 殺人鬼や化け物として殺すのではない。

 そんなものに成り下がってたまるか。


 月光に照らされた繁華街。

 以前より減っている人々。

 私は殺す対象を見つけた。


 目の前を歩くホスト風の男。

 数人のホスト仲間と歩いている。

 その向かって右端の男に狙いを定める。


 笑って会話をしている。内容は下劣そのものだった。

 オーナーがケチであるとか、店長がいい加減だとか、不満を言って笑っている。


 私はすれ違い様にナイフを振るった。

 常人なら見切れないほどの速度。

 血飛沫すら私にはかからない。


 ホスト風の男が倒れる音。

 奴の仲間たちが騒いでいる。

 突然倒れたとか救急車を呼べなど喚いている。


 ナイフを懐に仕舞って、繁華街の出口に向かう。

 私はここまで成長できていた。

 もはやこそこそと標的を探すことをしなくていい。


 家に帰る途中、空に浮かぶ月を眺めた。

 物言わぬ衛星を黙って見つめる。

 相変わらず、沈黙を貫いている。


 肯定もしないし否定もしない。

 見ているだけ、見守っているだけ。

 ――見逃している。


 眺めながら私は私の中に、ある欲求が生まれ出したのを感じる。

 私は私の存在証明ができればそれで良かったのに。

 収まらなくなってきているのか。


 私の中に湧き出る欲求は人間として当然のものだった。

 生きる上で最も重要だと言える。

 厄介とは思わなかった。

 むしろ人間らしいではないかと思えた。


 さて、次の月夜まで時間はたっぷりある。

 私は自己で研鑽に努めよう。

 さすれば私の欲求は叶えられる。


 私は空に浮かぶ月に誓う。

 いつか支配から逃れてやる。

 お前から解放されてやる。


 私の目的は生きることだ。

 それ以外に目的などない。

 私の欲求はそれに即している。

 それだけのことだ。

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