第22話

 少し遠くから聞こえてくる草を踏みしだく足音と共に、意識がぼんやりと戻ってきた。足音が近づいてきて、人の気配がだんだん強くなってくる。目を開けるよりも先に、竜は頭の中のどこかで、朝霧の中をこちらへ歩いてくるカールの姿を見ているような気がしていた。足音が近くまで来て止まる。驚いたような声が上がる。

「こんなところで…」

 竜はようやく眠い目を開けた。霧のヴェールのかかった青藤色の空と果樹園の木々を背景に、驚いた顔のカールが横向きに目に映る。

「…おはようございます」

 かすれ声で言う。竜の頭の下でエミルの脚がちょっと動いた。

「おはよう、竜」

 カールの口元がおかしそうに歪んでいる。

「まったく…まるで真がいたときのようだ。風邪をひかなきゃいいが」

 目を擦りながら竜が起き上がると、まだりんごの木にもたれたまま眠っているエミルが、大きな吐息をついて頭の向きを変えた。

「練習してたのかい」

「はい」

 竜は右のポケットを探って、取り出した物をカールに差し出した。カールが屈んで手を伸ばしそれを受け取る。紺色の腕時計ベルトだ。驚愕の表情がカールの顔に浮かぶ。

「…まさか…」

 竜は今度は左のポケットを探って、もう一つ紺色の腕時計ベルトを取り出し、カールに差し出した。

「これがオリジナルです」

 受け取ったカールが二つの腕時計ベルトを丹念に見比べる。驚愕の表情が感嘆に変わり、眼鏡の奥の目が温かい微笑に細められた。

「竜…なんて子だろうね、君は。完璧な魔法だ。おめでとう。よくやったね」

 心からの賛辞が込められたカールの言葉を聞いて、竜は眠気も吹き飛ぶほど嬉しかった。

「ありがとうございます」

「昨日はもうマルギリスを歌わせることに成功したというし、いやはや、竜…。末恐ろしいね」

「…何が恐ろしいんですって?」

 エミルが眠そうに目を擦りながら半分寝ぼけた声で言った。カールが笑う。

「竜だよ。末恐ろしい」

「…まったくです」

 まだ少し眠そうな目でエミルは竜に微笑んだ。

「大丈夫か?濡れてないか」

「霧でちょっと湿ってる程度です」

「まったくお前たちは…。何もこんなところで寝なくてもいいだろうに。しかも昨日の雨の後で…」

 カールは呆れ顔だ。

「練習を始めたのが遅かったんです。4時くらいでした。それで成功したのがついさっき、5時頃だったので、そのまま眠ってしまって」

 竜が説明すると、エミルがくすくす笑った。

「そういえば、なんだか変なことを言ってたぞ。覚えてるか」

「え?」

「腕時計ベルトができた後、今日もう一度マルギリスで練習するかどうするかって話をしていただろう」

 竜はうなずいた。それは覚えている。

「その途中でだんだん眠そうな口調になってきて、返事もテンポがずれてきたから、横になって休めって僕が言った。そうしたら、そうします、って言って横になって少ししてから、『でもまずは二つ同時にできないと』って。何の話だ、って聞き返したけど、もうその時にはぐうぐう寝てて返事はなし」

「ああ、それは…」

 竜には何のことかわかった。その時それを口にしたことはまったく覚えていないけれど、昨日健太と電話で話した後しばらく考えていたことだ。

「昨日マルギリスを歌わせることができたでしょう?だから今度は健太を僕の次元に引き込む魔法ができれば、健太の記憶も守ってあげられる。でも、その二つの魔法を同時に行えなければだめなんだから、まずは二つの魔法を同時にできるような練習を始めたほうがいいかなって考えていたんです」

「竜…」

 首を振って話し出したエミルを、カールが遮った。

「確かにそうだね。相手を自分の次元に引き込む魔法ができたとしても、二つの魔法を同時にできなければ意味がない。相手を自分の次元に引き込む魔法はまだ存在しないのだから練習のしようがないけれど、二つの魔法を同時に行うというのは、非常に難しいけれど、練習できないわけじゃないからね。とりあえずそこから始めるというのは正しいアプローチだよ」

「お父さん…」

 エミルが腹立たしげにため息をついた。

「そんなの無茶ですよ」

 カールが眉を上げる。

「どう無茶なんだい、エミル」

「どうって…。二つの魔法を同時に行うなんて、普通はできないでしょう。お父さんだってできないじゃないですか。それに例えそれができるようになったとしても、相手を自分の次元に引き込む魔法を作らなければ、健太君の役には立たないんだし、そんな魔法を作るには今は時間が足りませんよ。そんな練習をするよりも、今、竜は『歌わせる』魔法をもっと練習して確実にマスターすることが必要なんですから」

 カールはもっともだとうなずいた。

「そう。まずはマルギリスを歌わせることを確実にできるようにしないとね。でも竜ならそんなことはすぐに、今日中にでもできるようになる。その後二つの魔法を同時に行う練習にかかればいい。それと並行して、相手を自分の次元に引き込む魔法を作ればいいんだ」

「僕は反対です」

 エミルがきっぱりと言い切ったので、竜は驚いてエミルを見上げた。

「たった数日間でそんなことをさせようっていうんですか?『竜ならできる』ってプレッシャーをかけて?忘れてるのかもしれないですけど、お父さん、竜はまだ11歳なんですよ。ついでに言えばたった3日前に魔法を始めたばかりです。3日ですよ。確かに竜には力があります。でもこんな短期間にこんな急激に成長するなんて速すぎる。この上二つの魔法を同時に行うだの、新しい魔法を作るだの。それは明らかにやりすぎです」

 カールが静かに言った。

「魔法の喪失のことを心配しているのかい。あれは十分な力を持っていない人間が無理をするから起こることだ。竜には十分な力がある」

「魔法の喪失を経験した人達やその周りの人達も、きっとそう思っていたと思いますよ」

 カールはため息をついた。

「…お前の心配は理解できる。でも私は何も、二つの魔法を同時に行うことや、相手を自分の次元に引き込む魔法を、今回の滞在中に完成しなきゃいけないとは言っていない。竜はまた帰ってくるのだから、時間は十分ある。今からそれを目指して努力し始めることは、どっちみち今後の竜の魔法にプラスになることなのだから…」

 エミルは皮肉っぽく眉を上げて遮った。

「お父さんは、竜が何のために相手を自分の次元に引き込む魔法を作りたいのか忘れてるみたいですね。健太君が記憶を保てるためにでしょう。今回の滞在中に完成させなきゃ意味がないんですよ」

「…ああ」

 カールが吐息をついた。

「…そうか。そうだったね」

 カールの白旗に勢いづいたようにエミルは竜をきっと見やった。

「竜、聞いての通りだ。二つの魔法を同時にやる練習にも、相手を自分の次元に引き込む魔法にも、僕は反対だよ」

「…わかりました」

 断固とした口調にちょっと気圧されて、竜はうなずいた。


 散歩に行くカールとリルの木の下で別れると、エミルは決まり悪そうな顔をして竜を見下ろした。

「ごめん。あんな言い方して」

「いいえ」

 竜はにこりとしてみせた。エミルが後悔しているのが感じられる。

「エミルは僕のことを、なんていうか…カールから守ってくれようとしてるんですね」

 エミルはちょっと赤くなった。

「いや…うん…まあ、そういうこともある、かな」

 ため息をついて笑う。

「古傷、とでもいうか…。父は、僕たちが子供の時から、色々なことを…難しいことを教えて、ついてこれると見るや、どんどん容赦無くバーを上げていく人だったんだよ。息をつく暇もない感じだった。無理強いっていうのとは少し違うけど、とにかく、もっとできるだろう、これもできるだろう、できたな、じゃあ次はこれだ、…ってね」

 リルの実を採ってくれながら、エミルは続けた。

「兄たちはついていけなかったけど、僕は幸か不幸かついていけてしまったから…。正直、疲れたし、辛かった時もあった。それで、父が今度は竜に同じようなことをしようとしているのを見たら、つい…ね」

 そう言ってリルの実を口に放り込む。竜も一粒口に入れた。ひんやりしたリルの果汁が口いっぱいに広がる。おいしい。

「魔法の喪失っていうのは、よくあることなんですか?」

「そうでもないよ。でも大学に入ってすぐの頃、僕自身が、英才教育と魔法の喪失の研究の対象になった…というか、参考にするために話を聞かせて欲しいって頼まれたことがあって、その時にいろいろな魔法の喪失の例を聞いたから…」

 竜はうなずいた。エミルは飛び級して14歳で魔法大学に入学したのだ。それは英才教育の研究をしている人たちが話を聞きたがるだろう。

「中には随分ひどい話もあったよ。魔法の才能のある子供をまるで見せ物みたいにして…」

 言葉を切って、エミルは端正な顔を辛そうに歪めた。

「でも大抵は、まあありきたりの話だ。まだ小さい子供に才能があると思った親や教師が無理な練習をさせすぎて…っていうね。他の分野でもたまに聞く話だ。音楽とか。だけど、僕がその時聞いてちょっと驚いたのは、魔法大学の学生にもそういうことがあったっていうことだった。卒業試験のために無理な練習をやりすぎたんだそうだ」

「大学生が…」

 竜は二つ目のリルを手にしたまま呟いた。エミルが頷く。

「そう。その学生がどんな練習をしていたのかはわからないし、どれくらい力のあった学生だったのかもわからないから、あまり参考になる話ではないかもしれないけどね。でも少なくとも、子供みたいに何もわからず大人の言いなりになって無理な練習をしていた、っていうわけじゃない。それなりの年月の魔法の経験があって、自分でも大丈夫だと思ってやっていたのに、おそらくは夢中になって、知らずに自分の限界を超えてしまったんだろう」

 竜は頭の後ろがぞくりと震えたのを感じた。

「…魔法を喪失してしまうっていうのは、もう魔法ができなくなってしまうっていうことですよね」

「そうだね」

「全くできなくなってしまうんですか?」

「ああ」

「二度とできなくなってしまうんですか?」

「そう。完全なる喪失だ。また一から学び直す、なんていうこともできない」

「……」

 魔法ができなくなれば、マルギリスを歌わせることもできない。記憶はなくなる。手帳があるからカールの魔法のことを真に伝えることはできるし、もし真がジリスとフュリスの混合物をまだ持っていたら、真はカールの魔法を使ってこっちに帰ってくることができるけど、僕は帰ってこられない。二度と。

 一瞬のうちにこれらの思いが頭の中を飛び交って、竜は心底ぞっとした。それが分かったのか、エミルがちょっと笑った。

「ごめんごめん。怖がらせすぎちゃったな」

「それ、どうやったら防げるんでしょう」

「さあ、それはわからない。でも無理なことをしなければそんなことにはならないよ。僕だって大丈夫だったし、真だって大丈夫だった。竜だって、今のところは大丈夫だし」

 今のところは。竜は心の中で繰り返した。今のところは。エミルが呻いて額に手を当てる。

「ごめん。言い方が悪かった。さっきからヘマばっかりしてるな」

 大きく息をついて、エミルは竜をしっかりと見つめた。

「竜、よく聞いて。竜には力がある。僕なんかよりもずっと才能がある」

「そんな」

「いいから聞け。嬉しがらせじゃない。本当のことだ。この3日間僕は竜を見てきたんだから、それはよくわかってる。だから、二つの魔法を同時にやることも、相手を自分の次元に引き込む魔法を作ることも、竜ならいつかやってのけると思う。ただ、さっきも言ったけど、魔法を始めてたった3日間でこんなレベルに到達するなんて、普通じゃ絶対に考えられない速度だし、ちょっと心配になってるのも本当だ。

 父はああいう人だから、どんどん押してくる。無理するなとか、ちょっと休めとか、そういうことは言わない人だ。真にもそうだった。真もすごくがむしゃらで、あの父を心配させるくらい魔法の習得に貪欲だったから、どんどん父の出す課題についていった。僕はあの頃自分自身がまだ子供だったから、魔法の喪失のことなんてほとんど何も知らなかったし、自分や真がそんなことになるかもしれないなんて夢にも思っていなかった。父を全面的に信頼していたしね。

 でも今は違う」

 苦笑してみせて、肩を竦める。

「大人になっちゃったからね。魔法の喪失が、自分の意思で練習をしている大学生にだって起こり得ることを知っているし、父だって間違いを犯すことがあるんだってことも知っている。だから気をつけなきゃいけないと思うし、心配にもなる。

 竜がどうしてもやりたいっていうのなら、少しずつやってみるのは構わないと思う。二つの魔法を同時に行う練習も、相手を自分の次元に引き込む魔法も。でも、今回の滞在中に完成させようと根を詰めてやるのは、絶対に反対だ」

 エミルの真剣な眼差しに負けないくらい真剣な思いで、竜はうなずいた。

「わかってます。僕だって、魔法の喪失なんてことに絶対になりたくないですから。だから、今日はまずもっと『歌わせる』魔法の練習をして、それから、二つの魔法を同時にやるっていうのがどんなことなのか、ちょっと試してみるとか…っていうのはどうでしょう」

 エミルがほっとしたように頬を緩めた。

「いいプランだね。賛成だ。じゃ、まずは朝食といこうか」

「はい」

 二人はリルを食べながら果樹園の木戸に向かって歩きはじめた。

「真は、そんなにがむしゃらだったんですか?」

「すごかったよ。特に最初の滞在の時…二度と戻ってこられないと思っていた時はね」

「ああ、リボンを作っていた時ですね。カールが言ってましたね、ああいうのを石に齧りついてもって言うんだって」

 エミルがまさかと首を振る。

「リボンは最初の滞在中じゃなかったよ。さすがの真も、そんな短期間でそんなレベルまではね」

 そしてからかうように笑った。

「竜は自分の才能がどれほどずば抜けてるのか、わかってないんだな」

「え…」

 竜は戸惑った。なんとなく、エミルや真と同じくらいだと思っていた。

「真は確かリボンを作り出すのに7日間かかったよ。何回目の滞在の時だったかは覚えてないけど」

「…そうだったんですか」

「対する竜は、なんと24時間もかかっていない。しかも魔法を始めてたった3日目だ。真もできのいい弟を持ってさぞ嬉しいだろう」

 エミルがおどけて言ったので竜は苦笑した。

「嬉しいどころか。負けず嫌いですからね。機嫌が悪くなりますよ」

「そうだろうな」

 エミルも笑う。

「エミルは何を作ったんですか?初めての時」

「実は竜と似たようなものだ。アルマンサのブレスレット。あの頃学校で流行っててね」

「小学校でですか?」

「そう。男子の間で流行ってたんだ」

 竜は目を丸くした。

「男子の間で?…お洒落ですね。何年生の時ですか?」

「四年生だね。ガールフレンドができると、自分のつけているブレスレットをあげるんだよ」

 ヘェ〜と竜は冷やかしてみた。

「エミルも誰かにあげたんですか?」

「ははは。いや、残念ながらね。ちゃんととってあるよ」 

「でもじゃあ、四年生の時に、もう『物を作り出す魔法』ができたんですね」

「ああ。でも3日はかかったぞ」

 竜は考えた。

「だって、学校に行きながらでしょう。僕は一日中魔法の練習だけしてるんだから、その分速くできて当然ですよね」

 エミルがおかしそうに笑った。

「そんな一生懸命謙遜するな」


 勝手口を開けると、ライラが喜んで竜に跳びついてきた。後ろによろけた竜をエミルが受け止める。

「おっと!こら、ライラ」

 ライラは竜の顔を舐めるのに忙しく、エミルの叱責もどこ吹く風だ。キッチンに入ってきたマリーが声を上げる。

「まあ竜!顔を洗って」

 いつものパターンだ。竜はおかしくて楽しくて笑いながら、ふと寂しくなった。もう今日は5日目。どんどん時間が経っていく。ライラに会えなくなったらどんなに寂しいだろう。

 手と顔を洗った後、着替えるために部屋に上がった竜は、右ポケットから腕時計ベルトを取り出してそっと机の上に置いた。綺麗な紺色のアルマンサ。口元がほころぶ。できたんだ…。そして左のポケットからエミルが買ってくれた腕時計ベルトを取り出した。大事に取っておこう。あの銀色のリボンでちゃんと括って。机の引き出しを開けて、竜は小さくあっと言った。銀色のリボンのついたもう一方の腕時計ベルト、バックルのついた方のベルトがそこにあった。

「忘れてた…」

 こっちのベルトもちゃんと作らなくちゃ。…よし。今独りでやってみよう。

 机の前の椅子に座り、リボンを解いて、バックルのついたベルトを手に取る。姿勢を正し、意識を集中し、どんな細かいところまでも余すところなくじっくりと眺める。頭の中に写し取る。指先にも神経を張り巡らせ、そこから得る感触の情報も、全て頭の中に写し取る。

 完全に写し終えたところで、ベルトを銀色のリボンと一緒に机の端に置き、目を閉じる。深い呼吸を二度。意識を集中。目と指先から得て頭の中に写し取った情報の全てに、均等に、同時に、途切らせることなく、丁寧に集中する。やがて、それらの情報全てを持った新しい物体が、ゆっくりとこの世界にその姿を現し始める。

 目を開けて、息をつく。机の中央に、銀のバックルのついた、美しい紺色のアルマンサの腕時計ベルトができていた。

「…できた!」

 竜は独り微笑んだ。手に取ってみる。鹿皮のような柔らかい手触り。適度な厚みと柔軟性。オリジナルを左手に、コピーを右手に持って細かいところまで比較する。我ながらパーフェクトといっていい出来だ。

「ブラヴィッシモ!」

 たまにピアノの先生が言ってくれる言葉を、小さい声で言ってみた。やった。ちゃんとできた。一応後でエミルにも見てもらうつもりだったけれど、完璧だと言ってくれるのはわかっていた。竜は満足のため息をついて立ち上がった。

 着替えながら、竜は魔法の喪失のことを考えた。

 無理をしなければ大丈夫だとエミルは言っていた。今、僕は無理はしていないと思う。昨日はあんなに難しかった『物を作り出す魔法』だったけれど、今はちっとも難しいと感じないし、やった後の疲れも全くない。これは昨日たくさんやった「筋トレ」のおかげで力がついてきたからなのかな…。この調子なら、もしかして、もしかしてだけど、頑張れば、二つの魔法を同時に行うことも、相手を自分の次元に引き込む魔法も、今回の滞在中にできるようになるかもしれない。健太の記憶を守ってあげられるかもしれない…。

 そこまで考えて、竜ははっとした。

 何ものも通さない、マルギリスのバリア。

 記憶だけでなく、魔法も守ってくれるとしたら?

 健太が、歩けるまま、向こうに帰れるとしたら?

 エミルに訊かなきゃ!

 大急ぎで靴をつっかけ、腕時計ベルトを引っ掴み、竜は部屋を走り出た。

 

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