第2話 姉の横になんか見える

朝起きて、学校に行く支度をする。いつもと同じ。同じはずだ。目の前にいる姉以外。姉の横には、大人っぽい看護師の服を着た女性がいた。僕はとうとうおかしくなってしまったのだろうか。

「姉さん、横の人って知り合い?」

僕がそう訊くと姉は不思議そうな顔をした。

「どうしたの?誰もいないよ?…もしかして幽霊でも見えてるの!?」

姉さんの顔はみるみる青ざめていく。昔から幽霊とか、UFOとか怖がるタイプだからな。僕はそういうの、割と自分から調べて姉さん脅かしてたな。あー、でもそれどころじゃない。

「姉さん、嘘だよ。落ち着いてよ。」

とりあえず姉さんを落ち着かせて家を出る。

…幻覚か?道ゆく人はみんな二人組で歩いていて、そのうち一人はおそらく年上でそれに公衆の前で歩くには少しおかしいような格好の人もいる。いずれも、変な格好の人は年上で、一緒に歩いている人はそれを全く気にしていない。というか、気付いてないという感じに見えた。…今日ってなんかあったけ?お祭りとか、なんか…イベントなのかな。そう考えることにした。あまり首を突っ込みすぎてはいけない気がした。でも、僕はそういうのを考えてしまう性格だったようで、あれこれ考察を繰り返していた。

 一つ、おかしいと思ったこと。それは、二人組で歩く人たちは二人とも、どことなく似ているということだ。兄弟か姉妹かと思うほどに。そんなことを考えているうちに学校に着いた。

 学校は…こんなに人口密度があっただろうか。これはもう、見間違い程度で片付けられる問題ではなかった。明らかに多い。それに、僕はこれがなんなのか、なんとなく分かった。これは、彼らが望む将来の自分なのだ。今思えば、姉は大学の看護学部に通っているし、将来は看護師になるつもりと言っていた。僕の友達の横にいる人も、友達がなりたいと言っていた職業らしい格好をしているのだ。何なんだよ、これは。僕はこれを望んでいない。むしろ見えることを鬱陶しく思っている。

だってこれは、夢が見つからない僕へのあてつけでしかないから。

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僕にだけ、人の夢が具現化して見えたら 久代 李月 @Ram_littlecat

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