第53話 急所の釣鐘が拙者にはない……さてどうしよう
図星を突かれた涼馬は赤くなった。
「まあ、よいわ。人間、若い内はさようなものよ。慢心即ち若者と言い換えてもいいくらいじゃ。で、先刻の質問じゃが、人体の急所とはな、たとえばここがそうじゃ」
言いながら師は、
「
達心師は、今度はおのれの眉間に太い指をやる。
寄り目になったのが可笑しいが、当人は意に介さぬ。
「
両手の人指し指で
顔ではほかに
「金的と呼ばれる
こともなげな達心師の付け足しが、にえわかに涼馬に落ち着きをなくさせた。
――拙者に、さようなものは……。(*´з`)
試合中に女子である事実が露見しはすまいか。
今まで学んで来た3つの武芸はことごとく単独技だが、柔術には必ず相手がいる。
――組み合ったとき、胸が
あれこれ思い惑えばきりがない。
とにもかくにも、かような事態に至ったからには、当たって砕けるしかないのだ。
覚悟を決めた涼馬は、茫洋として掴みどころがない達心師に願い出る。
「拙者、とことん柔術を極めたく存じます。厳しくお導きくださりませ」
「さようか。では、早速、稽古開始と参ろうか」 達心師は飄々と答えた。
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