第16話 これが修羅場ですか?
「ひいい!」
とジュリエットさんが私の後ろを見て怯えた!
この匂い!間違いなくさっき追ってきた竜だな!?
寒いのか怖いのか判らずだがガタガタ震えてる彼女を抱きしめてやる。
あまり力を入れると彼女の背骨折れそうだし優しく優しく!
何か後ろに怖い視線を感じるけど私は妙にドキドキする。恐怖なのか番が近くにいるのかは判らない。
「ちょっと!私の番よね?貴方!何で逃げて他の女とイチャイチャしてるわけ?」
とドスンと足音がした。そして人化する音がした。どうしよう振り向いたらダメな気もする。
「私はこの人の夫です!私の番という方!どうぞ諦めてください!私は竜族を滅ばすわけにはいかないのです!!」
「その辺りは家にいた中年の男から聞いたわよ。その冴えない娘が50年目の花嫁でしょ?そんなの他の男にやってしまえばいい!番なのよ私達!匂いで判るでしょう?」
確かに酒みたいな匂いがする。
私は勇気を出して振り返った!すると緑のワカメみたいな髪で赤い目のぽっちゃりとした女がいた。
「…………」
え?
「ふふふ、やっとこっちを見たわね?私の番!イケメンじゃないのが残念だけどこれから子作りしましょうね!」
と笑っている。
「冗談でしょう?私には嫁がいるのでお断りしますね。お帰りくださらないと流石に私もキレますよ?」
と言うと驚いた緑の女は
「はぁ?私にときめかないの?番なのに!?おかしいわ!そんな筈ない!お告げを受けたのに!」
「いんちきではないですか?その手の詐欺商売に引っかかっているだけじゃないですか?」
「いんちきじゃないわよっ!私は貴方を見てときめくし匂いだって極上のステーキの匂い!!ああ!早く私のものになって!!その娘はポイ捨てして!」
とゴミみたいにうちの嫁に言うな!ジュリエットさんの方が可愛いんだ!!
………可愛い…そうなのだ。さっきから抱きしめドキドキするのはジュリエットさんに反応しているのだ。
「わ、私は嫁が…すすす好きですから!」
と言うとジュリエットさんがびっくりしていた。
緑の女はギッと睨みつけ…
「そんな人間女なんか誰でもいいじゃないの!私の知り合いにくれてやりなさいよ!子作りが終わったら竜族の呪いは解けるし餌にもなるし丁度いいわ!!」
と爬虫類の目でジュリエットさんを見た。
「ひいっ!」
と青くなりジュリエットさんが震える。
私は立ち上がりくるんと一回転して竜になる。
「もう許せません!私はお嫁さんを守ります!!」
「餌なんかに興奮してバカみたい!!まぁ私が勝ったら私のものになるってことね?うふん」
と女も一回転して竜になりドスドスとこちらに向かってくる!
後ろで
「ぎゃっ!」
と彼女が怖がり岩の後ろに隠れたのを見て私は尻尾で緑の竜をぶっ叩いた。
「くう!こんなことあってたまるか!」
私の尻尾を持ち緑の女が私を持ち上げ振り回して狭い洞窟内の壁に顔や身体が当たって痛い!!
反撃の為、足で溝落ちを蹴る。
「ぐげっ!?」
と声を出して後ろに倒れたので尻尾で女の足を捉えて入り口目掛けて思い切り投げた!!
「ぎゃあああああ!!」
と落下しそうになるが羽で飛んで衝撃を抑えられた。
私は外に出て火を吹いた。彼女も風を起こし火を避けた!!
お互いに睨み合いグアッと牙を剥き取っ組み合いになり腕に噛み付いた!!私も左肩を深く噛まれた。もはや獣同士の戦いだ。相手がメスだとか番とか関係なかった!こいつの匂いも私は酒を飲まないのであまり好きではない!やはり何かの間違いだ!番なら自分の好きな匂いがする筈なのだ。
「痛い!辞めて!!なんなのよ!あんな餌如きに!!」
「帰ってください!彼女は餌ではない!貴方は私の番なんかじゃない!!」
ハッキリと言うと力なく緑の女はヘタリこんだ。
「今日のところは帰るわ!私諦めないわ!!次はその人間の餌に見合う男を連れてきてあげるわ!感謝なさい!」
とヨロヨロ飛び去ったのを見て洞窟に戻り一回転した。
人化してもボロボロの私を見てジュリエットさんが駆け寄って抱きしめた。
「バカ!!酷い怪我!肩が!血が!!とにかく家に帰ろう!!あっ…私を抱えて飛ぶのは痛いよね?どうしよう」
おろおろするジュリエットさんは泣いていた。
「泣かないでください」
「え?泣いてた?私?別に怖くて泣いたんじゃないわ」
とゴシゴシと涙を拭っている。嘘だ。絶対怖かった筈だ。
「私なら平気です。竜ですからこの傷もすぐに癒えますよ…。少し休んだら大丈夫ですよ」
と壁にもたれかかり眠った。
*
少しして目を開けるとジュリエットさんが横で寝ていた。もう夕方だ。戻らないと。
傷はだいぶ塞がってきたな。竜の回復力は強い。やはりあの緑の竜は洗脳されていたのだろう。私はあの竜に全くときめかなかったし。正直人化の姿を見てなんだこのデブ。と思ってしまった。失礼ながら。
するとジュリエットさんが気付いた。
「クレイグさん…大丈夫?傷は…さっきより塞がってるね…」
「ええ…まぁね。竜だからです!さっさと帰りましょうか?」
「そういえばさっき私の事好きって言ったでしょう?ふふ」
それに私は一気に熱くなり赤くなった。なんだこの火照りは!!?
「いや!?その?な、なんでした?覚えてませんよ??」
と慌てるとふふふと笑っているお嫁さんにドキドキした。
「うう…これが…恋なんですか??」
「私に聞かれても…でも私もドキドキするわ」
と少し照れた顔を見て私はジュリエットさんに近付いてキスした。ジュリエットさんは驚いていたようだがそのまま動かなかった。
唇を離し見つめ合った。お互い赤い。
「あのう…今私の頭がピンクなので殴ってくれませんか?」
「はぁ!?変な人ね!!自分からキスをしておいて!!」
「………すみません…………」
するとおかしそうにクスクスと笑い
「判ったわ。もう一度キスをしたら帰りましょうか」
と言うからまた心臓が跳ねた。ああ、私はやはりお嫁さんが好きになったのですね?
良かった。
と思いつつもう一度口付けを交わして私は洞窟からお嫁さんを抱えて飛び出した。
今なら空中一回転出来そうな気分なくらい浮かれていた。けどやめておく。
「帰ったら子作りしてみますか?」
と言うと頭突きされた。
「それはもうちょっと待って!!」
何故だ!!?やはりイケメンで金持ちがいいのかなぁ??あの緑の竜女が男を連れて戻ってきたらどうしよう!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます