第15話 番から逃げる
「旦那様!奥様!!た、大変でございます!!」
「どうしたんですか?」
クレイグと私はアマンダさんが相当慌てて息を切らせてるのを見てとにかく落ち着いて話すように言うと…
「大変なのです!だ、旦那様…旦那様の番と仰る竜族のお嬢様が訪ねられて来ました!!ですので早くどこかにお隠れください!!」
とアマンダさんが言う。
「つ…番…そんな…何故?そんな確率何万かの存在が…それにどうして会ったこともない番が現れるんだ!?」
アマンダさんは慌てて
「旦那様はジュリエット奥様の夫です!!会ってはなりません!!竜族の呪いの為に!!」
「!!」
何?つがい?
どういうこと??
するとクレイグは私を抱えてまた背中の羽を出して飛び去った!!
「何処へ行くのよ!?」
「とにかく見つからない所です!!番なんかと会ったら私はどうなるか判りません!!」
「番ってなんなのよっ!?」
「何万人に1人の…人間で言うところの運命の相手です!!会った瞬間に恋に落ち、強制的に子作りをしてしまうそうです!!そうなれば!私は…仕事も忘れてその番いの事しか頭にないピンク男になってしまう!!番いは恐ろしい存在なのです!!」
と言った。
な、なんじゃそりゃあああ!!?
「もちろんその確率で奇跡的に結ばれた竜族もいます!!仕事をしなくなり子作りしか頭になくなるなんて私は嫌です!!」
クレイグさん仕事命だもんな!!
今日はお休みしたけど。
しかしそんな厄介な相手が出てきたら確かに私と子作りして呪いを消し去るのは無理だろう。
私的にも他の女とイチャイチャした夫なんか無理である。ごめんだ。
「!!何か後ろから気配を感じます!!追いかけてきてないですか!?これ!?」
とクレイグが言ったので私は彼の肩越しにひょいと後ろから顔を出して見てみると!
わっ!来てる!!
なんか!緑色の竜が凄い勢いで追いかけて来てる!!
「緑の竜が追いかけて来てるよ!!」
「そうですか!やはり!変な匂いがすると思ったら!これが番の匂いと言うものですか!?話に聞くに、番いは匂いで酔っ払いみたいになるとか聞いてます!私はお酒飲めませんからねぇ!」
とクレイグは速度を上げた!そして岩場が見えて来て急降下して細い隙間に入り込み逃げた。
後ろからボコオンという岩を破壊する音がした。怖っ!!
「どうすんのっ!?このままじゃ見つかっちゃうよ!相手も匂いで追いかけて来てるんだわ!」
と言うとクレイグが
「下に湖が!!潜ります!!」
「はっ!?ちょ!待てや!私息出来ないいいい!」
「合図したら思い切り吸っといてください!!」
「無茶苦茶な!!死ぬって!!」
しかし急降下し、湖目掛けて突っ込む気だ!
「はい吸ってーー!!」
もうやけだ!!私は大きく息を吸い込んだ。
ドボン!!
と湖に落ち、そのままクレイグは湖に潜った。
藻と岩の陰に隠れて必死で堪えた。
するとまもなく巨大な陰が湖に刺して通り過ぎていく。後もう少し!!
ついに陰は見えなくなり浮上を始めるクレイグ。ひいいいい!!息があああ!!
何とかガボっと顔を出した私とクレイグは岸まで泳ぎ難を逃れた。ひいい。なんて日だ!
ビショビショの服を絞り岩の影で休んだ。この辺りは岩しかないなのである。
「何とか撒きましたか?」
「どうすんの?また来るんじゃない?しかも家知られてるし職場もバレたらアウトだわ」
「城は許可がないと塔城できない筈です!私とジュリエットさんは働いてるから大丈夫ですが…うーん、このままだとあの家に帰り子作りできません!!」
「どうしてあの家を知られたの?会ったことも無いんでしょ?緑の竜だったわよ?」
「無いです、緑の竜なんて見たことないです!家も何で知ってるのか……そう言えば…巷で人気のお告げ師が最近番いの場所を知りたい娘に評判で金を取り商売してると報告があった様な気がします!それかも!」
「何それ!?いんちき商売なの!?」
「それはまだ検証してないんですよ!これから調査ということで後回しにされていた案件だと文官から聞いたことがあります!!」
「何それええ。もし違ったら何でもない女に追いかけられたってことぉ?」
「そうなりますが、向こうはお告げを信じきりある種の洗脳状態なのかも知れません…はぁ」
疲れたのかクレイグは岩に頭を預けた。
「大丈夫?私重かった?」
「重いわけないでしょう。私竜ですよ?精神的に疲れました」
それは私もだ。
「クシュン!」
とクシャミが出た。
「このままでは風邪を引きますね。どうします?」
「どうしますって…こんな所で乾かせられないし移動する?」
辺りを見回すと洞窟らしきものが見えた。
「あそこは?」
「そうですね。いきますか」
とまた私を抱えて飛び出した。ひいい。寒い。
洞窟に着いてガチガチ震えた。寒う!!
するとクレイグが羽でバサバサと風を起こして服を乾かそうとしている。いや寒いって!!それにクレイグはびしょ濡れだし。
「寒いわっ!!」
と頭突きした。
「イテッ!!」
しばらくガタガタと震えるしかなかった。
しかし限界だ!
「クレイグさん!寒いから抱きつくわよ!?」
「えっ!?」
「私は人間だし、このままだと寒くて病気になる!」
クレイグは
「で、でも…」
と口籠るが知らんわ。
ガバーと抱きついた!
お互いにびしょ濡れだけど仕方ない。つか体温少し暖かいのねクレイグ。流石竜。
旦那で暖を取ろう。
「はぁ、暖かいわ」
「そっ、そうですか…」
クレイグは赤くなり挙動不審だ。
「貴方…もしや私を好きになった?やだあ、可愛いもんね!私!村2番目だけど…」
「そんなことは気にしないでもいいですよ…2番目とか」
「ありがとう…」
なんか照れる。抱きついてるからか?これどうしよう。ドキドキしてきた。
私はクレイグのこと好きなのかな?
膝に乗った時やお肉を切り分けた時手を上から重ねられてドキドキした。クレイグが大胆な行動に出たから驚いて不覚にも私はドキドキしたし、それになんかその後見つめ合ったりして恋人同士ぽかった…。
それともさっきからの急展開に今頃になり心臓がドキドキしてるだけだろうか?湖に潜ったりしたし。あれは中々スリルがあった。
しかしそこでバサバサと洞窟の入り口から音がして緑の竜がこちらを睨みつけていた!!
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