第12話 いろいろと誤解されたがうまくいった

 私の提案で空の上で停止して考える夫。


「え?キスですか?好きでもない人とできるんですか?」

 と常識的に聞き返された!


「いや…今年中に親密にならないと発症者増えるじゃん!」


「ううん、そうですが……」

 そんなに嫌なのか!!?私が人間だしそんな竜族からしたら可愛くもなんともない女だから?村で2番目でしかないから?

 くっそー!バカにしやがってえええ!!


「ならいいよ、竜族なんて絶滅しちゃえば…。私には関係ないことだしね!私を売った村だって滅べばいいのよ!けっ!」

 と私は拗ねた。侍女長にも魅力がないだの散々言われたしよぉ!


「うう、判りました。少し我慢を…」

 とクレイグが言い、あん?何が?と顔を上げたところでキスをされた!!


 ひっ!!


 いきなりで思考が止まり真っ白になる。

 ようやく離れたら私は赤くなり


「いきなりすんなっ!!バカっ!!言ってよする時!!」

 とガツンとまた頭突きした。


「いっ…痛っ!」

 と涙目のクレイグ。


「うう…そちらの提案なのに…まぁこれで少しは?」

 と細い目と目があったから恥ずかしくなりプイと逸らした。


「一仕事終えたみたいに言わないでよね!!」


「は、はあ…すみません…」

 とまた謝られた。

 呪いとか無かったらクレイグはたぶん私にキスはしないだろうな。義務的だし。


「……オークションはどうなったのかな?」


「…結局私が連れ出したので中止だと思います」


「……助けてくれてありがとう。クレイグさん…。来なかったら恨んでた!!」

 とぷくりと頰を膨らませる私を見てクレイグがグラリと落下しそうになったから慌てて抱きついたわ!


「ちょっとーー!しっかりしてよ!!落ちても貴方は死なないだろうけど、私は地面に激突したら確実に死ぬからね!内臓とか飛び出すからね!」


「いや、怖いです!す、すみません、不意打ち…」


「ん?何が?」


「ええ…いや、別に何でも…」

 と視線を逸らされた。

 この野郎!夫婦に隠し事は無しだろうが!!

 まぁ夫婦らしい事は…さっきキスしたか。

 いや、あれ不意打ちだったしな。


 バサバサとクレイグはそのまま私を抱えて買った家に帰ると管理人夫婦が迎えてくれた。


「お帰りなさいませ。おや、白くて綺麗な花嫁さんですね!!」


「ああ…そう言えば着てたね。これ借り物だし脱いで綺麗にしておかないとね」

 と私が言うと


「あっ…そうですね」

 とクレイグも同意した。そこは綺麗だからなんだのと言う所だが…。ま、まぁいいや。

 私は腹が減ったと言うとアマンダさんが温かいスープを出してくれた。


 もちろんドレスはさっさと脱いで普通のワンピースに着替えた。スープがドレスに跳ねたらいけないし。


 クレイグは夕食を終えると私と部屋に入る。

 さっきキスもしたし流れでこのまま押し倒されちゃうかもとはチラリと考えたが全然そんな事は無く…


「今日は疲れましたね。すみません眠いのでもう休みます」

 とソファーに行こうとしたから止めた。


「いいよ、今日はベッド使いなよ!私は閉じ込められてただけで今日の給金は無しだし!疲れてるならなおさら!」

 と夫にベッドを譲ろうとしたが


「いや、今日は心労の酷いジュリエットさんが使うべきです!」

 心労って…。まぁハゲに買われそうになり恐怖で舌噛んでやろうとか思ってたりはしたけど、ここまで抱えて飛んで腕も疲れてそうだし


「いや、いいよ私は!」


「いえ!そう言うわけには!」

 しつけぇな!譲ると言ってるのに頑固者め!

 私がさっさとソファーに横になると


「あっ!私のソファーに!」

 とガタガタ揺らし始めるので


「こらあ!揺らすな!!寝れないでしょ!」


「だったらベッドへどうぞ!!」

 と夫が言う。くっ!ソファーを揺らし睡眠を邪魔してベッドで寝かせようとしているわね?その手には乗らない!ベッドで寝るのはあんたよクレイグ!


 頭に来たので頭突きをかましたりスネを蹴ったり腹パンチしたりしてドタドタ部屋中を暴れた。


「痛っ!痛いですっ!」


「ならそっちがベッドで寝なさいよおお!」


「いや、ジュリエットさん、慣れないウェディングドレスずっと着てて疲れたでしょ?」


「うるさいなぁ!あんなの着た所で大して可愛くないの知ってるわよ!会場の竜人達もそんな可愛くないとか言ってたし!2番目どころか家畜よ!!」


「そんなことないです!可愛いと思います!」


「と、思いますって!何じゃこらああ!」

 ドスドスと胸を叩く。


「すみません!!」


「謝んな!!」

 といつしか私は床に座り込みシクシク惨めさに泣いた。私ってほんと大したことない2番目でしかない娘。村でもポーリーナには勝てなかったけど他にも気立てのいい可愛い娘もいた。勝手に2番目と思ってた?可愛くする努力もしてみたけど、ここでは通用しない。しかも食料として見られているし。


 おろおろしていた夫は意を決して私を優しく抱きしめ背中をポンポンとした。小さい子をあやすみたいに。


「すみませんでした。なら一緒に使いましょう!そもそも夫婦なのですしね。お互い疲れているし、直ぐに眠れるでしょう…」


「……うん。明日も仕事あるね」


「そうですね…早く眠りましょう」

 と私とクレイグは一緒の布団に入りお休みなさいと言い合い数秒して二人ともぐっすりと眠った。


 *

 朝…ジュリエットさんが起きる前に起きた私は可愛らしい寝顔を見た。瞬間ドクリと心音がした。ジュリエットさんは私のことを特に何とも思っていない。私も特に思ってないはず。


 まぁリスみたいに頰を膨らませてたのが思いの外可愛くて落下しそうになったけど。


 昨日のキスも言われたからしてみただけだし。その後も普通だったし。何もなく眠ったけど。


 仕事が一通り終わると走っていき、思わず鍵を開けて連れ出したけど…呪いを解くために彼女を強制的に好きにならないといけないのかな?


 義務?


 王子に言われたからには…。他の金持ちにあのまま買われていたらたぶん彼女は最終的にはあの中の誰かの胃袋に入るのみだった。


 同情?


 私は義務と同情しか感じられないのだろうか?


 恋愛感情は?


 あの時クッキーを食べたのは同情?あんなに走って鍵を開けたのも?可哀想だから?


 それは…酷いかもしれない…。つまり私は同情で彼女の夫となってるわけで。

 飼っていた犬も双子に食われる前はとても可愛がっていた。迷子になりこのままでは野垂れ死ぬ。そう思って。あれも同情?


 でも今回は人間だ。

 もし私の種族が人間なら?

 ジュリエットさんは金持ちでもない男の嫁にはならないだろうなぁ…。はぁ。

 と落ち込んでいると嫁が起きた。ボーッとして私を見ると


「ぎゃっ!!?」

 と言い飛び起きた!!

 しばらく停止していたが思い出したのかポンと手を打った。


「おっはよう!クレイグさん!さっさと朝食食べてお城に行こう!ぐっすり眠ったからもう大丈夫だよっ!」

 と笑う。


「いえ…今日はお仕事をお休みします」

 と言うと驚いた目で私を見るジュリエットさんが


「え?え?何で??どうしたの??ていうか私クレイグさんがいないとお城にドレス返したり行けないし私も仕事できないんだけど?」


「はい!なのでジュリエットさんもお休みです!!今日は私…貴方と恋の仕事…いや恋をする努力をします!!」

 と言ってにこりと笑って見せた。



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