第11話 オークションすんなっ!

 私は夜会の前にリオン王子に呼び出された。

 久々のイケメン王子…眼福です!


「おい、娘…クレイグとあまり上手くいってないと聞く。呪いのことは聞いたな?」

 ちらと側に控えてるクレイグを見ると俯いて眉毛を下げている。


「……は、はい…。東の領地で発症者が出たとか…」


「そういうことだ!今年中にクレイグと子作りするか、夜会で無理矢理にでも好きな相手を見つけるかだが…俺も悪いと思っているのでお前を貰い受ける奴を手伝ってやろう!」


「えっ!?王子のご紹介ですか?」

 と言うとリオン様は


「甘えるな!お前を競に出す!」


「「は!?」」

 せ、競!?

 おいいいい!何だそれ!?出荷された家畜かいっ!?

 クレイグもポカンとしていたが


「お、王子殿下!!あんまりです!!競に出すなんて!!やはり彼女を食料として…」


「黙れ!クレイグ!!俺たちはともかく、大半の者は人間などただの下等生物で餌と捉えている!!お前の姪たちもそうだろうが!!こいつを夜会に出すと言うことはあまりにも危険。だから檻に入れるしか守る手立てはない!野放しにしていたら今度は足でも齧られるぞ?」


「そ、それは…。しかし、競にかけるなど!嫁ではなく家畜同然ではないですか!ジュリエットさんがあまりにも不憫な…」

 とクレイグが言う。そーだ!そーだ!


「競り落とした奴にはもちろん最終決定で最低限奴等の感覚では家畜との結婚権と子作り権を契約させる!呪いを解く為だ!」

 げえええ!!そ、そんな!権利とかで私は知らない男に貰われるのか!?


「それが嫌なら…」

 とリオン様はクレイグに鍵を渡した。


「これは?」


「その娘を入れておく檻の鍵だ。お前に渡しておく。オークションが始まる前にお前が決めろ!嫁を競にかけるかどうかギリギリまで悩め!いいなっ!!?」

 とリオン様は


「ではフィリスのところに行く!じゃあな!」

 とバタンと部屋から出て行かれた。


「………ええ…」


「つまりクレイグさん次第ということですね」

 チラリとクレイグを見ると悩んでいた。

 そりゃ…たぶん私を買うような変わり者の貴族は子作りが終わると食料として扱うだろう。いくらイケメンでも。


「………仕事に戻ります…」

 と言い、夫は鍵をしまい出て行く。


 残された私は…


「オークションねー。因みにいくらするのかしら?やはり貴重な人間だし金貨500枚かしら?高過ぎるって?ふふ!」

 と値段を考えてみたがもし物凄い価値低かったらどの道死ぬとしてもなんかショックである。

 もしかしたら私のことを餌としてみないいい男が頑張って買ってくれるかも知れないし!


 とイケメンを想像して私を救ってくれる人を思い浮かべるしかできなかった。


 *

 そして夜会の日…私は侍女長から白いウェディングドレスを着させられ、檻に入れられた。


「貴方もいろいろあったけど…さっさとクレイグ侍従長を誘惑できなかったのも責任があるのですよ?例え女として魅力がなくても迫るべきだったのでしょう!呪いが発症することも無かったのに…」

 と嫌味を言われる。


「いや、私もそこそこ可愛い方ですよね?ここの竜族の女性達と比べたらですけど!人間からしたら私ハイレベルなんですよ!!?何せ村1番ですしね!!」

 と強がると侍女長は


「ああ…そうね…そうだったかしら。私の若い頃と比べても私の方が勝ってるけどね」

 と完全に馬鹿にされてるし。

 ふざけんな!この爬虫類!!


「競の値段はいくらからスタートするのですか?」


「さあねぇ…私は何とも言えないけどあんた程度なら銅貨5枚くらいからじゃないかい?」

 低うううううう!私の価値低うううう!!

 そんな!?そんな感じなの!!?


「もっと上げて欲しいんですけど!!?せめて金貨まで!!」


「知らないよ!私が決めることじゃないんだよ!!まぁ…短かったけどあんたはよくやった方よ。フィリス様もあんたのことお気に入りだったしね」


「フィリス様…そ、そうですね。グス!私に癒しをありがとうございますとお伝えください」

 と私は檻の中で泣いた。


 時間は刻々と過ぎて行くしクレイグが来る気配もないな。これはもう終わった。

 それからあっさりと時間は来て…私は会場に引きずり出された。

 ザワッと檻の中を視線がギラリと光る。皆、私が登場すると目付きが爬虫類となった。やはり。私は家畜で食料としか見られてない!!うわあああ!現実と妄想は違うなぁ!


 しかも何か1番前にいるハゲが檻に近寄りはぁはぁと目をギラつかせている!


「どんなことをしてもワシが競り落としてやるからね!!」

 とヨダレを垂らしながら言ったのでゾッとした。こいつに買われる!?イケメンはどうした!!?せめてイケメンに買われたい!!

 しかしイケメン達は婚約者らしき女と踊っていたり談笑したりしていた。


 王子いいいい!!!


 とうとう競が始まろうとしていて一旦私は下げられた。


 そして漏れ聞こえる声がした。


「では!人間の花嫁の価格は…小銅貨50枚からだ!」

 低いっ!!おいいいい!!よりによって小銅貨から!?せめてもの大銅貨からやろ!!食料にしてもリンゴ3箱分くらいの値が付けられた。


 そこでハゲの声がして


「銀貨10枚!!」

 と吊り上がる。

 そこでザワリとした。

 いや、ザワリじゃねーーーよ!!!

 どうせなら金貨でザワリしてほしー!!

 しかも弱々しいくらい


「銀貨11枚」

 と声が上がる。おいいいいい!!


「銀貨15枚!!」

 とハゲがまた声を振り出した。

 シーンとしている。出せええええ!!

 このままではハゲに買われる!!

 もうこうなったら呪いとか知らん!舌噛んで死んでやるっ!竜族なんて絶滅しろ!

 リオン様やフィリス様には申し訳ないけど!!クレイグだって助けに来ないし!あいつも同罪やあ!!


 しかしそこでカチャリと鍵の開く音がしてクレイグが息を切らせていた。

 私が泣いていたのでハンカチを出した。


「ハッ!ハアッ!すみません!遅くなり!来賓の方々の案内をしておりました!!」

 て!仕事しとったんかいいいい!!


「うぐっ!!わ、私ハゲに買われる所なのに!!」


「はげ?ええと…ああ、メイウッド公爵様かなぁ!?でも間に合って良かった!!行きましょう?」


「いいの!私でクレイグさんは?」


「…ジュリエットさんが嫌ならここに残しますよ?」


「いやハゲより貴方の方が遥かにマシだわ」


「ひ、酷い言いようですね…」

 と焦っているがクスリと笑っているのでスネを蹴った。


「痛っ!!」


「ふん!!遅かった罰だわ!!」


「うう…すみません…」

 少し赤い顔して彼は私に手を差し出して


「では行きましょう!」

 と言う。初めて手を繋いだかも。

 と結局私は夜会を抜け出し、夫がまた私を抱えて空を飛んだ。星空をグングン進んでいる途中でクレイグが


「ジュリエットさん…私…本当はとても悩みました。このまま助けないことも。だって金持ちのイケメンを所望でしたし。私はイケメンでも金持ちでもないし」


「いや、だからハゲに競り落とされる所だったしそっちのがやだって言ってるでしょ?」


「そうですけど…お金はあるじゃないですか。いい暮らしがしたかったでしょう?」


「暮らせるか!!最終的に食われるんだから!!」


「まぁ…そうですけど…。束の間でも」

 そんなちょっとの贅沢など意味ないわ!!


「私…ジュリエットさんのこと…まだあまり恋愛対象に見れないんですが……」


「それは私もだわ…どうしよう?」

 呪いが進行してまた発症者が増えると王子に怒られるしなぁ。

 うーんと考えて


「と、とりあえず…キスくらいはしてみたらいいんじゃない?」

 と私は提案してみた。

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