第9話 魔法の難易度

  次の日の朝、起きてみると体から、放出している[何か]を感じ取った。


「(この放出してんのって……もしかしなくても……魔力じゃね?)」


 俺は、若干寝ぼけながら、ステータスを確認してみる。


(ステータス)


[名前]フィデリオ

[年齢]5歳

[種族]妖精種 クォーターノムルス

[強度]3/100

[力量]生力33魔力23筋力13速力20知力10器力10

[職業]「・魔法士 1/20(1/20)」

(一覧)

[技能]

・土魔法0/0(0/0)・水魔法0/0(0/0)

・筋力向上Ⅰ 2/10(0/30)・魅了耐性Ⅰ 1/10(0/10)

・暗算1/10(0/5)・魔力感知Ⅰ 1/10(0/10)

[称号]イシュリナの祝福を受けし者、誘惑に打ち勝つ者


 新たな技能に"暗算"と"魔力感知Ⅰ"が追加された。更に、筋力向上Ⅰも技能レベルが1上昇している事が分かった。


 暗算1/10(0/5):暗算する時に微弱補正。強度上昇時に知力を1つ上昇。最大で5つ上昇させる。


 魔力感知Ⅰ 1/10(0/10):魔力を感知出来る。強度上昇時に知力を1つ上昇。最大で5つ上昇させる。


 習得した技能は、とても良い物だった。その為に俺は、寝ぼけた状態の頭から一気に覚醒した。


「(これって……何も知らずに熟練度上げしていたら大変なことになったんじゃね? いや、ゲームじゃ無いけどさ……ゲームだったら、最悪キャラメイクから作り直さないとヤバイやつだろこれ。


 あっぶね〜! 現実世界で、やられるとは思いやしねぇよ……異世界の転生者って、称号破棄しておいて良かったわ。絶対あの称号って呪いだろ)」


 俺は、若干暑い気温の中顔をしかめた。


 まだ、強制取得した魅了耐性と言う、地雷要素の影響は無いない。もしかしたら、転生ポイントで技術を得る事は、本当に無害だったのかも知れない。だけど、俺の頭にはもう1つある可能性が浮かんでいた。


 それは、自身のステータス上に技能を表示しているだけで、実際にはハリボテの何の効果も無い、改竄だと言う事だ。つまり、ゲームに良くある何の効果もない装飾品と同じ可能性だ。


 もしも、そうだった場合、かなり致命的な問題だと思った。ステータスは、この世界では、身分証明書や履歴書として扱われる。そんな重要な物にどう言う手段でか、表示されている技能と実際の技能が乖離しているとなれば、信用もクソもない。異常者として扱われるのが、関の山だ。


 それから俺は、日課のランニングを終えて、朝食を食べた。その後、母の家事の手伝いを行いながら、魔力感知Ⅰが発現したこと報告する。


「母ちゃん! 今日ステータス確認したら魔力感知Ⅰが発現していたから、魔法の修行をして欲しい!」


「あら、少し遅かったね〜。私の時は1日で取得出来たけど、これはハーフとクォーターの違いならかしら? まあ、良いわ。後で行くからちょっと待ってなさいね」


 母は、俺が予想より遅く発現した事に驚いていたが、昼食の下ごしらえを行い、修行に付き合ってくれた。


「リオ、魔力感知が出来れば、お腹から放たれる魔力をある程度操作出来る様になるわ。さぁ! やってみて」


「ふっ……ぐぅっ……はぁぁぁっ……いや、出来ねぇよっ! 母ちゃん、なんかコツはないの?」


 俺は、母が言ったように行うが上手くいかず操作出来なかった事を母に伝える。


「コツね〜。う〜ん……アタシが師匠から教えてもらった時は、魔力を血液の様に循環させる。そして、魔力に方向性を与える様に想像しながら行うって習ったわ。


 あっ! ちなみに血は、身体を血管って管を通って、身体の中をグルグル回っているのよ」


 母は、懐かしそうに思い出しながら俺に助言をくれた。しかし、俺はそれ以上に師匠が誰か気になり質問した。


「へぇーそうなんだ〜。ん? えっと……ちょっと待って、母ちゃんの師匠って、どんな人なの?」


「あぁ、師匠は、アタシの父キースで、リオの祖父だよ。父さんは、アタシに魔法を教える時に条件として、師匠呼びが条件だったから……今でも癖で言っちゃうんだよね」


「(師匠とは、キース爺ちゃんの事だったか……そう言えばキース爺ちゃんは、魔法の天才だっけか?)


 俺の納得した表情を見て母は説明を続けた。


「先ずは、お腹から放たれる魔力を意識しなさい。胸や頭に向かわせて、右肩から右腕や右足を通り左足、左肩、頭、胸、お腹に戻して循環させる。


 慣れてきたら、お腹に戻さず頭、胸、右側、左側、胸、頭と少しずつ意識を少なくするのよ。そうすれば、自然な魔力操作が出来るやうになるわ」


 母のまるで血液の様な説明は、とても想像がしやすかった。その為に俺は、早速両目を瞑り魔力感知に集中して言われた通りに行う。母は更に続けて説明を行う。


「魔力操作がある程度出来れば、リオなら魔語を覚えて直ぐに魔法を使えるわよ。本当は、魔力操作の後に[魔力変質]を行う必要があるわ。でも、魔法適正がある人は、その属性の変質はやらなくて良くなるからね」


 母が説明を終わると俺は、一度中断してふと疑問に思った事を問いかけてみた。


「それじゃ、魔力変質ってなんで必要なの? 魔法士って魔法適正がある人が発現出来る職業でしょ? 無駄じゃない?」


「それはね……魔法士が、適正以外の魔法を使う時に必要な技能なのよ。例えばリオが、火属性の魔法を使うためには、魔力から適正属性の魔力を分離させた、純粋な魔力の[無属性魔力]を抽出させる事が必要なのよ。


 それを変質させて、火属性魔法を使うには、[魔力変質]と[魔力分離]という技能が、最低でも必要なのよ。また、無属性魔力はそのまま、無属性魔法として使えるのよ」


 俺の質問に母はマシンガントークをする。


「無属性魔法ってどんなのがあるの?」


「無属性魔法は、契約魔法の様な特殊な魔法が多いわ。特に魔力防御は、適正以外の魔法を受け続ける必要がある。そして、それは、体に耐性という形で適正を生み出すから、かなり重要な魔法になるわ」


 母は右人差し指を立てて丁寧に説明する。


「でも、魔法って、火水風土の基本属性魔法と光闇の上位魔法の合計6つだよね。無属性魔法を入れたら7つじゃないの?」


「勿論だけど、一般的には、そう言われているわ。でもね、そもそも魔法習得が難しすぎて、一般の人はその属性自体がある事すら知らないのがあるわ。


 アタシは、師匠が使えたから努力して覚えたけど……あっ! もし使えるとしたら獣人種かな?」


 母は少し首を傾げ頭を悩ませる仕草を行うと、思い出したかの様に声を上げた。


 獣人種とは人間を元に獣の特徴を持つ種族のことである。主に犬人・猫人・鳥人・馬人・熊人・兎人・蛇人・豚人・蜘蛛人等の総称で有る。


 比率は最大でも人:獣=50%:50%で例えば猫人なら耳が猫耳で腕や足の毛が毛深く、尻尾が有るのが特徴で有る。馬人なら下半身が馬で上半身が人の特徴がある。


「獣人種って、無属性魔法が得意なの?」


「そうじゃないわ。獣人種は他の種族に比べても五感が敏感な種族なのよ。その為に体内魔力(ナド)操作に関して言えば、アタシ達妖精種と比べても劣らない程優秀だわ」


「ヘェ〜そんなに優秀なの」


「うん、そうよ。でもね、属性魔力を変質させた時に出る、魔力の僅かな不快感さえも敏感に感じ取ってしまう種族でなのよ。


 普通なら、魔力の融和性によって、無意識に感じないようになるわ。でも、獣人種は、長い年月を経て体外魔力(ゴド)操作が衰退し、魔法を覚え辛い種族になったそうよ」


 魔法を変質する時は、才能が有ろうが無かろうが、僅かな不快感を与える。しかし、獣人種は、五感が鋭すぎるが故に本来、無意識的に感じ取れない筈の不快感を、感じてしまうそうだ。


「(変質時の不快感とは、恐らく魔法使用時に多分あるんだろうなぁ)」


「す〜ふぅ……す〜ふぅ……す〜ふぅ」


 俺は、そう納得してより断続的で、長い深呼吸を行い集中力を高め魔力操作の修練を再開した。


「(よし……まずは、お腹から胸に魔力の流れを変えてみよう。ゆっくり……やろう。どうせ、この後は、やる事があっても、出来ることは無いし)」


「あっ! 忘れていた……リオ、明日から何だけどね、アタシと父ちゃんは、冒険者稼業を再開するわ。だから、お義母さんの家に行くから、そのつもりで、ね?」


 修練を再開した俺を見て母は、何かを思い出したかの様に追加で話した。


「お母さん? ってどっちの婆ちゃんなの?」


 俺は、再度修練を辞めて、母にどっちの祖母かを聞き直した。


「父ちゃんの方だよ。アタシは、自分の両親を父さんや母さんって呼んで、父ちゃんの両親をお義父さんやお義母さんって呼んでいるわ」


「うん。分かった。母ちゃんも冒険に気をつけてね」


「うふふっ心配してくれたのね。とても嬉しいわ! ありがとうね。まぁ、最初の内は冒険者としての勘を取り戻す為に時間を費やすから、そこまで無理はしないけどね。


 父ちゃんは、ちょくちょく冒険に行っていたし、他の団員も直ぐこっちに拠点を移すって連絡が来たからね」


 そう言うと母は俺の頭を撫でながら優しい顔でそう呟いた。俺はこそばゆかったが、邪険にせず大人しく頭を撫でられた。その後母は家事を再開し俺も修練を再開しその日が終わった。

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