第2話 どんだけ2

「あれ? 伊藤先生だ。」

 日曜日の学校には鈴木たちの担任の伊藤先生がいた。

「こんにちわ。偉いですね。日曜日に学校ですか? あなたたちが、そんなに勉強がしたいとは知りませんでした。先生は嬉しいです。ウルウル。」

 伊藤先生は日曜日に学校で生徒に出会えて嬉しかった。

「好きな訳ないじゃん。勉強。」

 鈴佐田は勉強が好きではない。

「私は風に誘われて!」

 田中は我が道を行く。

「田中! カワイイ!」

 鈴佐田は完全な田中の僕である。流れだ。田中に喋らせれば、田中親衛隊がついてくる。完全なオチと奇跡的な遭遇を達成した。


「先生、何をやっているんですか?」

「月曜日からの異世界ファンタジーの授業の準備です。」

 2021年、日本の学校の授業にダンスに、ゲームや仮装通貨、それに異世界ファンタジーの授業が必須とされた。

「生きていくためには必要ですもんね。」

「その通りです。」

 ちなみに生きていくために必要ではない漫画で済む国語や、役に立たない方程式の数学、翻訳機があれば必要ない英語の授業なんかは軒並みカットされた。まさにデジタル化されたのであった。

「すごいですね。先生は剣が作れるんですね。」

 伊藤先生は剣を磨いていた。

「いえ、これはダンボールの剣ですよ。ニコッ!」

「え・・・・・・。」

 今時の高校生はダンボールの剣で実習を行う。


「小学生で紙の剣。中学生でプラスチックの剣。高校生でダンボールの剣。大学生で本物の剣を使用します。危ないから。」

「なんか納得ができない。」

 これが日本の異世界ファンタジー教育である。

「魔法なら分かりやすいですよ。小学生が小魔法。中学生が中魔法。高校生が大魔法。大学生が特大魔法。そして立派な社会人になるのです!」

「はい。そうですか。」

 これでいいのか? っと、鈴木たちは先生についていけなかった。


「俺は剣士。」

「俺も剣士。」

「僕も剣士。」

 鈴佐田は剣士が好きだった。

「同じパーティーに3人も剣士は要らないだろう。」

「そうだな。おまえ転職しろ。」

「嫌だよ。鈴木が剣士をやめればいいじゃないか。」

 言い争う鈴佐田。

「見苦し。」

 そこに田中が現れる。

「ま、まさか!? 田中、おまえも剣士になりたいとか言うんじゃないよな?」

「誰がおまえたちみたいなレベルの低い剣士見習いになるか。」

「剣士見習い!?」

「ガーン!?」

「そうか!? 僕たちはレベルが低かったのか!?」

 鈴佐田の3人は剣士ではなく、剣士見習い(小学生と同レベル)だった。

「じゃあ、田中。おまえの職業は何なんだよ?」

「私のジョブは・・・・・・女子高生。」

「女子高生!? そのままじゃないか!?」

 田中の職業は女子高生であった。

「おまえたち。何か勘違いをしているな。女子高生は全装備を装備可能、マックス9999攻撃を相手が倒れるまで連続で行えるスキルを持ち、攻撃・回復の両方の魔法が使える最強の戦士なのだ!」

「マジか!?」

 最強のジョブ、それは女子高生だった。


「なら男なら男子高校生が最強のジョブのはず!」

「俺も剣士やめて男子高校生になる!」

「僕も!」

 鈴佐田はジョブを男子高校生に転職する。

「これで俺たちも最強のはず!」

 しかし鈴佐田の様子が変だ。

「かしこさ30・・・・・・。」

「偏差値も35・・・・・・。」

「内申点も最悪・・・・・・。」

 鈴佐田は元々の本人の能力が低いので、まだ剣士見習いの方が能力が高かった。

「可哀そうな。生き物たち。」

 既に田中には鈴佐田は人間ですらなかった。


「何を騒いでいるんですか? 伊藤先生。」

 そこに王様と姫が現れる。

「王様と姫・・・・・・じゃなかった。渡辺校長と渡辺先生。」

 渡辺校長と渡辺先生は親子。

「わ~い。休日なのに伊藤先生に会えた。嬉しい。」

「私もです。渡辺先生に会えて嬉しいです。」

 伊藤先生と渡辺先生は両想いだった。

「こらー! うちの娘に近づくな!? おまえ、魔王だな!」

 校長は二人の間に入る。

「ええー!? そういう展開!?」

「こんな学校は嫌だ。」

 呆れる鈴佐田。


「フッフッフッ。バレてしまっては仕方がない。私は父親から娘を奪う魔王伊藤だ!」

「キャア! 伊藤先生! 私をさらってください!」

 ノリノリの伊藤先生と渡辺先生。

「返せ! 私の姫を返せ! 姫はお金持ちと結婚させるんだ!」

 娘を安月給の教師と結婚させたくない王様。

「おまえたち剣士だろ! 伊藤を倒して姫を取り戻せ!」

「いいえ。俺はただの男子高校生ですから。」

「あ、そっか。転職して男子高校生なっちゃったんだ。」

「先生には成績を人質にとられているので攻撃できません。」

 高校生の本音である。

「誰か!? 誰か姫を救ってくれる救世主はいないのか!?」

「私がやりましょう。」

 田中だ。

「カワイイ! 田中!」

「悪い奴にさらわれた女性一人すら助けることができないのなら、剣士などやめてしまえ!」

 騎士道精神に燃える田中。

「カッコイイ! 田中!」

 鈴佐田は田中にメロメロである。

「行きますよ。伊藤先生。」

 一瞬でトップスピードにのった田中が両手に剣を持ち伊藤先生に攻撃を仕掛ける。

「エンドレス9999!」

 田中の一撃、一撃に攻撃の限界数値の上限の9999のダメージを伊藤先生に与える。

「ギャア!? ウワア!? 死ぬ!? 助けて!? ・・・・・・。」

 伊藤は数発で気絶したが田中の攻撃は終わらない。

 ボキッ。

 その時、ダンボールの剣が砕け散った。

「脆い。脆すぎる。私に扱える剣はないのか。」

 まだまだ殴り足らないので納得していない田中。

「カワイイ! 田中!」

 普通は怖いと思う所だが、愛は盲目である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る