どんだけ! 異世界ファンタジー!
渋谷かな
第1話 どんだけ1
2021年 地球は異世界ファンタジーに見舞われた。
人々は魔王に名前を奪われて、名字だけになった。
「おはよう。」
この物語の鈴木17才の普通の高校2年生。名字だけで名前はない。
「おはよう。息子よ。」
鈴木の父。47才の社会人。
「おはよう。カワイイ息子よ。」
鈴木の母。47才の専業主婦。
「おはよう。お兄ちゃん。」
鈴木の妹。7才の小学1年生。
「おはよう。父さん。母さん。生意気な妹よ。」
これが鈴木家の朝の挨拶である。
「はあっ!? 誰が生意気な妹だ!?」
物語は4コマ漫画的にオチで進む。
「行ってきます。」
鈴木は冒険の旅に出かける。
「どこに行くのよ?」
といっても高校生なので学校だが。
「学校だよ。」
「え!? あんた学校に行くの!?」
親は息子が学校に行くことに戸惑う。
「行かなくていいの? ラッキー!」
鈴木は学校がサボれると喜ぶ。
「だって今日は日曜日で学校は休みよ。」
ズッコケる鈴木。
「クソッ!? お約束かよ!」
悔しがる鈴木は外出して歩いている。
「おはよう! 鈴木!」
そこに佐藤が慌てた様子で駆け足でやって来る。佐藤は鈴木の同級生の17才のお友達。
「おはよう。佐藤。おまえなにを急いでいるんだ?」
「何を言っているんだ!? おまえこそ呑気にしやがって!? 学校に遅刻するぞ!」
佐藤は学校に行くつもりだった。
「バカ野郎! 今日は日曜日だ!」
鈴木は自分の過ちは決して佐藤には言わない。
「なんですとー!?」
初めて驚愕の事実を知る佐藤は変な顔をする。
「なんてこった。今日が日曜日だなんて。」
不貞腐れる佐藤。
「気にするな。これが若さゆえの過ちという奴だ。」
慰める鈴木。
「青春だな。」
「そうだ。これが俺たちの青春だ!」
立ち直りの早い似た者同士の二人。
「お友達って、いいな。」
「ああ。俺たちは何があってもお友達だ。」
友情の絆を確かめる二人。
ウイーン!
そこに車が猛スピードでツッコんでくる。
「危ない!」
と言いながら佐藤を車に向けて突き飛ばす鈴木。
「ええー!? ギャアアアアアアー!?」
不意を突かれた佐藤は車に跳ね飛ばされる。
「俺たちは何があっても友達だ。ニコッ!」
「ふざけるな!」
佐藤は救急車に運ばれて退場。
「佐藤!? おまえは車に引かれて入院したんじゃ!?」
車に引かれた佐藤はピンピンしていた。
「治った! 気にするな。」
ご都合主義である。
「俺たちはどんな時も友達だ!」
「そうだ! 俺たちは身代わりに車に引かれさせられても友達だ!」
(鈴木、今度はおまえが地獄を見る番だ!)
顔は笑顔、心は恨み節でいっぱいだった。
「どいてくれ! 遅刻だ! 遅刻!」
そこに諸突猛進で高橋が書けてくる。高橋17才高校2年生。鈴木と佐藤のお友達。
「ここにも居たか。曜日も分からない奴が。」
「友として恥ずかしい。」
類は友を呼ぶ。似た者同士の3人。
「あはははは-! なんだ! 今日は日曜日か!」
高橋は豪快に笑って誤魔化していた。
「嫌だ嫌だ。曜日も分からない奴が友達だなんて。」
「まったくだ。恥を知れ! 恥を!」
自分は勘違いしなかったように高橋を攻める鈴木と佐藤。
「そんないいじめることはないじゃないか!?」
高橋は打たれ弱かった。
「あ、田中だ。カワイイ!」
「本当だ。なぜあいつも制服なんだ?」
鈴木たちは田中を見つける。初の女子である。田中17才高校2年生。
「こらー!? 俺の話を聞け!」
高橋は置いていかれた。
「おはよう。田中。」
「おはよう。鈴佐田。」
「鈴佐田?」
「あなたたちトリオを略したのよ。一人一人呼ぶのが面倒臭いから。」
田中にとって、鈴木、佐藤、田中は省略される様な存在だった。
「田中、おまえ何で制服を着ているんだ?」
「何を言っているのよ。学校に行くからに決まっているでしょ。あなたたち、頭が弱いの?」
田中は顔色一つ変えないで冷静に言い放つ。
「巻き込まれた!?」
佐藤と高橋も被害を被った。
「おい、田中。今日は日曜日だぞ。」
ピキーン!
何かを感じ取った田中の足が止まる。
「まあ、気にするな。誰にだって間違いはある。俺も今朝、学校に行こうとしたら妹に止められたんだ。」
自分の罪を田中には白状する鈴木。
「騙された!?」
佐藤と高橋は詐欺にあっていた。
「私は日曜日でも学校に行くの! それの何が悪いの! 私の勝手でしょ! (カー! カー!)」
見事に切り返す田中。
「カワイイ。恋のシーフだ。」
テレもブレもない田中の姿にハートを盗まれる鈴木。
「田中のいる時代に生まれて良かった。」
「どこまでも田中についていくぞ!」
佐藤と高橋も田中の熱烈なファンである。
「それはストーカーでダメだ。」
これは青春学園物語のはずである。
「クソッ!? 本当に日曜日に学校に来てしまった。」
しかし学校の校門は閉まっていて中には入れない。
「だけど閉まってるな。」
「諦めて帰ろうぜ。」
鈴佐田は嫌な学校を日曜日も見たくなかった。
「あれ? 田中、帰らないのか?」
しかし立ち尽くし学校を見つめる田中。
「開け! ゴマ!」
田中は魔法の呪文を唱えた。
「そんなもので開くわけがない。」
鈴佐田は真にウケない。
ガガガー!
その時、学校の校門が開き始めた。
「ゲゲゲッ!? 開いた!?」
鈴佐田は目の前の現象に驚く。
「有言実行! 私の辞書に不可能の文字はない!」
田中は日曜日の高校に侵入していく。
「本当に学校に入っちゃった!?」
「田中! カワイイ!」
「これでいいのだろうか!?」
これでいいのだ。既に主人公の鈴木を超える存在の田中。どうやって田中のような魅力的なキャラクターが生まれたのか? ただの日曜日に学校へ行くという三段オチの三人目。それが田中だ。
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