第一章 コノオンナ

「オーナー、裏地のサンプル確認してください」

「社長、お祝いのお花が2つ届きましたが、どこに置きましょうか?」

「ラヴィさん、お電話です」


忙しい忙しい、カラダがもう一つ欲しいくらいだわ。

表側の私と裏方をやる私と。

昼からは週末の収録に合わせて、なにか新しい服を買わなくちゃ。


机に山積みになっている、生地サンプルや色見本。足元にもなんだか、4年くらい前の試作品があるけど…

まぁいっか。


《La vie》は私の店。

阪神大震災のあと、破格で目抜き通りにオープンした輸入靴下とランジェリーの店。


私の名前、

《森 愛美》にちなんで命名。

ラブと美、でラヴィ。


パリっぽくて、素敵ってよく言われるし、

ふだんも、マナミチャンじゃなくて

《ラヴィさん》って呼ばれちゃう。

私って、愛されキャラなのよね…。

見た目は繊細なのに、中身はオトコマエともよく言われちゃうけど。


再来月は私のお店、

《La vie》の20周年パーティーがある。

それまでにエステの回数券使わなくちゃ。


私、見た目には自信あるの。

学生時代はミスコンテスト入賞の常連だったし、田舎の母も乗り気で応募した宝くじの《幸運の女神》も経験済。

戎神社の福娘もしてきた。


惜しかったのは、

結婚が決まってから受けた

《ミス着物プリンセス》。

準ミス着物プリンセスだったことは、今でも腹立たしい!!


聞くところによると、優勝した子は東京出身の子で、絶対にバックにスポンサーがいた出来レースで、優勝は私のはずだったって、みんな言ってたもの。


足が短いのがバレるから水着になるのは苦手だったけど。

自分で応募したミスコンやモデルの仕事、人に見られて褒められることや注目されるのが大好きだったから…、

いまなら60歳からのモデル人生もありかな?って思うの。

だって周りの同年代で私、一番キレイでしょ?


そうそう、エステ。


10年以上通う、お気に入りの芦屋のエステ。マリーゴールドやラベンダーのブレンドオイルがお気に入りなのよね。

予約しなくちゃ。

特別対応してもらえるかもだし。

たぶんパーティーの御祝のお花も出してくれるだろうし、お菓子か何か持って行かなくちゃ。


だって私、神様が選んだ人間だもの。

なんだってユルサレル。


パパから昨日新しくしたばかりのiPhoneにLINEが入った。

【仕事がんばってるし、疲れてるやろう?今夜は「鮨芯」を予約したよ。何時に終われる?直接お店で待ち合わせにしようか?】


鮨芯か………

あそこは星1つじゃない。

パパも馬鹿の一つ覚えみたいに……。


元町の「秀すし」なら星3つなのに。グルメ友達に星1つの店に行ってるなんて知れたら馬鹿にされちゃうじゃない。

私はもっと、高級な女なんだから…。

まあ…、海老は美味しいし、

白木のカウンターがSNS映えするからいっか。

だけど、現地待ち合わせ?


私みたいにいい女が一人で待ち合わせだなんて寂しい。

タワーマンションから腕を組んで出なくちゃ。

誰かとすれ違ったら自慢出来るじゃない?今から主人とディナーです、って。


ああ、その為には。

【パパとならキレイにしていきたいから、マンションに一度帰って支度します。パパも帰ってきてください。デートだもの、楽しみです♥】


明日も仕事だし、今日はもう退社しちゃおうかな。

レースの切れ端とか、糸とか、見本帳、出しっぱなしだけど誰かが片付けるし。

スタッフは時給制で、少しでも働きたいだろうし。

各店全員が残業しても、合計1時間20,000円もしないし。

ややこしい残業計算とか、そんなのはパパと税理士がやるし。


シングルマザーとか、同棲相手がフリーターとか、三流会社のヒラ営業が旦那とか。

選ぶ男次第で人生、変わるのに。


…まあ、選ばれる側、

それもB反市場のなかで選ばれる彼女たちには選択肢なんかないだろうなあ…

カワイソウね、恵まれてる私が施してあげなくちゃね。

私って、スタッフ想いのオーナーでしょ。


さて、私は私の仕事をしなくちゃ。

仕事?

東京、神戸、名古屋の店のオーナーで、デザイナーでタワマン上階のマダムで美魔女。

それを維持するのが私の仕事。


アトリエと呼ばせている事務所から自宅マンションへ。

バゲットや、クロワッサン、甘いコンフィチュールの香り。

次の角を曲がると、ラベンダーサッシェが軒から吊るされていて、その2件隣はバリスタのいるカフェ。

通勤途中も映えなくちゃ。

まあ、私以外すべて背景だけどね。


大理石のモザイクと、大きな吹き抜け、センスよく配置された木々が印象的なエントランスをヒールを響かせて抜け、エレベーターホールへ。

もちろん高層階専用。

正直言うと…、最上階、ペントハウスが良かったし、新築マンションが良かった。

だって、私の頭の上に誰か住んでるのよ?

感じ悪い。


今住んでるのは西側のマンションだけど、

去年かな?東側のマンションのペントハウスが売りに出ていて。

パパに

「サロンみたいにして使いたいから買って」っておねだりしたけど、ダメだった。


ケーチ!けちんぼ!


パパは、節約と謙虚っていつも言う。

9つ違いのパパ。

この数年で急に年寄り臭くなって、私に説教が増えた。


朝からLINEで説教?既読スルーするわ。

「朝からテンション下げないで下さい」って抗議したこともあった。

でも、いうだけ無駄だし説教が長引くだけ。

まあいいけど。

単なる財布だし。

この前、なにかの甘えついでにこう言ってみたの。

「あなた稼ぐ人、私は使う人。バランスが取れていて素敵ね」って。

パパの表情はちょうど、私からは見えなかった。

でも間違いなく、仕方ないなあ、可愛いラヴィめ!って顔をしてたと思うの。


素敵に優しいパパがいて、私ってツイテルツイテル♥

これってヘブンリーワードって言うらしいわ。

カードキーで、玄関ドアを開ける。

パパの靴は2足だけ。いつも揃えて端っこにある。

私の靴はロングブーツにミュールにサンダル、スニーカー…。廊下まではみ出してる。

…私のも、片付けてくれたらいいのに。

先週の撮影会で借りた真っ赤な薔薇の髪飾りやブレスも廊下に倒れたLOUIS VUITTONのキャリーからはみ出してキラキラしてる。

…片付けてくれたらいいのに。


パパの気配を部屋に感じて

大袈裟にため息をついてみる。

スタッフには

「シアワセが逃げるから、ため息はダメだからね!シアワセ言葉を使いましょう!」って指導してるけど。


仕切り戸を開けると、服の山。

私はピンクが好き。白が好き。花柄が好き。

最近は赤も好き。

だって、女子をキレイに可愛く見せてくれる色だから。

ピンクは子宮の色、守ってあげたくなる色ナンバーワン♥


だから、《La vie》のイメージカラーはピンク。内装も外装も制服もショッパーバッグも名刺も、ピンク。

そして、薔薇。

《La Vie en rose》

薔薇色の人生、まさに私の人生ね?


2匹のブリティッシュショートヘア、サチとエミ。

子供がいない私の保険。

パパが溺愛してる。

私にあまり懐かない、可愛げの無い、SNS用の動くぬいぐるみ。

この前なんか、私の衣装部屋に勝手に入ってゲロとオシッコを

DIANE von FURSTENBERGのピンクのワンピとtoccaのブラウスにしてた、バカ猫。

パパにはナイショだけど、エサを2日あげなかった。

悪いことしたらお仕置きするでしょ?


扉を閉め忘れた私も悪いかもだけど、トイレ掃除と水換えもっと頻繁にパパにしてもらわなくちゃ。


パパがまた、GUのワゴンセールで580円!って自慢してるポロシャツを着てる。

私がプレゼントしたアルマーニに着替えさせなくちゃ。

…私が恥ずかしいじゃない。


磨かれたカウンターに、木目模様が浮かび出る。

溜塗の半月盆も小洒落ている。

箸置きはボタンくらいの大きさの、江戸切子だ。

カット面が間接照明に煌めく。

パパは私の右側に座り、板前さんと景気やら不動産やら小難しい話をしている。

耳に入ってくるチンプンカンプンな経済用語。『ランカスター』『見えざる手』…。


そんなこといいから、私を褒めなさいよ?

カウンター上から覗き込むかたちの、この店を予約したというから…、ジャストな角度で胸の谷間が見えるタダシショージの白いワンピースを選んだのよ?


男は好きでしょう?オフショルダー。

男は好きでしょう?白いワンピ。


「車海老、はいよ」


織部焼の厚い緑の釉薬に、紅白目出度い立派な江戸前の海老が載せられる。

「奥さん、海老好きだねえ」

「こちらの海老が日本一、いえ世界一好きなんです〜」

にっこり笑えば、どんな男もニヤける。


ほらね?


気に食わないのは調理場の仕切り暖簾前で澄ましている、大将のオクサマ。

なによ、食べに来てやってるんだから、たまにはうちの商品買いなさいよ。

まあ、似合わないだろうけど。


…ほんと、ニコリともしない。

ああ、妬いてるのね!なるほど!

大丈夫よ、1つ星の寿司屋の板前なんかに興味ないわ。


「奥さま、もう少し華やかなお洋服きたらいいのに。歳は私と同じくらいでしょう?」


…いいえ…私は。


「大丈夫よ、私よりもしかしたらお姉さんかしら?大丈夫、もっと明るいお色を召したほうがいいと思うわ」


…私、今年42歳です。お客様商売なので、主役はお客様だとおもって、背景色を選んでいるんです。

「うちのは美大出てましてね、カラーコーディネーター?なんとかも獲ったらしくてね。器やら照明やら暖簾やら、みんなこいつが見繕ってくれたんですよ。」


やだ、その見た目で私より6つも年下なの?パパの義妹も地味で老けてるけど、恥ずかしくないのかしら。見た目どうしようもない人はアタマで勝負するしか無いのよね、カワイソウ…。

少し慈悲の気持ちが芽生えてきたわ。


「……あら、そうなの……」

隣を見ると、パパは私が顔を真っ赤にして恥をかかされてるのに、スマホ片手にトイレに向かうところ。猫背気味の背中がちらっと見えた。

私が悪者みたいじゃない、失礼しちゃう!


「シャンパン、今日はなにかいいのあるかしら?」

パパがいないうちに注文するのなんて、いつものこと。

それって、可愛くて美しい嫁の特権でしょう?

値段も見ずに大将任せで泡を頼んで、右手で箸置きを弄ぶ。

もちろん、誰かに見られてることを意識しながら。


2カラットなら、これ位の大きさだったろうな…。

またモヤモヤが湧き出してきた。

…今年、ハワイで結婚25周年のお祝いを企画した。

自分ひとりで。

テレビや雑誌でよく見る、関東在住のアラフィフウェディングプランナー。

もしかしたら、大々的に私の25周年をブログとかでアップしてくれるかも?

そうしたら取材とか、オファーあるかも?

…そんな打算があった。

オンシーズンで、ハレクラニもカハラもロイヤルハワイアンも満室。

飛行機もビジネスは取れなくて、エコノミー&修学旅行生と同じフロアのシェラトンだった。それでも、久々のハワイにドレス。私はウキウキしていたの…、耳にハイビスカスを付けたりして。


にも関わらず!

パパは手帳とスマホとをにらめっこ。アラモアナショッピングも、日陰で荷物番をしてるだけ。

内緒で白いタキシードを用意していたのに、当日無摺り出した。


「イヤだ。着たくない。この歳で白タキシードなんか。お前だけ写してもらえばいいやろう」


…涙がポロポロでた。

いつもの泣き真似は、洗面所とかお風呂場で水滴を付けたり、ボディーソープを滲みさせて涙を出すんだけど。

この時ばかりは大泣きした。

だって、カメラマンとか観光客とか、色んな人にワタシを見てもらかったんだもの。

シアワセなワタシを。


結果的にはもちろん、タキシードを着てもらって、バルーンや熱帯植物に囲まれたムーディーな写真を数百カット、撮影してもらったわ。


ほら、なんでも思い通り。


日本に帰国する前日、

アラフィフコーディネーターのフミヨさんに耳打ちされたの。

「何か記念のジュエリー買ってもらったら?いいお店知ってるの。ハリー・ウィンストンにルースを卸してる信頼できるお店に連れて行ってあげる、ラヴィさん可愛いから特別に」

「うわあ、嬉しい!大好きフミヨさん!」


二つ返事でパパとフミヨさん、フミヨさんのダーリンで日系のケイレブと4人、真っ赤なMUSTANGコンバーチブルに乗り込んだ。

陽射しは気になるけど、これよこれ。

髪を靡かせてオープンカー。

本当は私が助手席に乗りたいんだけど。

だってフミヨさんより、私のほうが絵になるし。

まあ、仕方ないけど。


「ピンクダイヤが欲しいなあ…」

「ラヴィさんにぴったり!ピンクはラヴィさんカラーだもの!これに決まりね!」 

チラッと横を見ると、パパがひとこと。

「24金て無いんですか?換金性もあるし…」

もちろんレディー2人で抗議したわ。


「Diamonds Are a Girl’s Best Friend 」

マリリンモンローが出てる有名な映画、「紳士は金髪がお好き」の歌詞のフレーズらしいけど、私は知らない。

フミヨさんがパパを論破してくれたわ。


サイズ直しを徹夜で特別にしてもらった、ファンシーカットのピンクダイヤをメレダイヤが囲った、コンビ台のデザインの指輪。

この子はこんな経緯で私の薬指に光ってるの。ホントは2カラットのが欲しかったし、…もう少し濃いピンクの石に見えていたの、現地では。

でも、さすがに1400万は買ってくれなくて。860万で妥協しちゃったの。最終日チェックアウトのとき、カウンターで受取ったピンクのリボンが掛けられた白いボックスに有頂天。

いつもより長めに、パパに人前でハグしたわ。

指輪、今もサイズ感は微妙なんだけど、カウンター席に座る時はたまに着けてる。


大将のオクサマも、着席してオシボリ勧めた時から目がずっと釘付けだったの、知ってるんだから。


ああ、いい気分。


会計を済ませて、店からマンションまでの小径をパパに腕を絡ませて歩く。

もちろん、バストトップがパパの二の腕の柔らかいところに当たるように計算して。

タイサンボクがふわりと香る。

双子座の満月が私にパワーをくれる。


「ねえパパ、今日のお月様は牡牛座の私に才能や資質、実り、豊かさ、満たされている事を改めて実感させてくれるんですって。ねえ…パパ?」

上目遣いはお手の物だ。

「ひとり旅、私の周りでブームなの。私もしてみていい?お土産買ってくるから、してきてい〜い?」

「いいよ、気をつけてね。娘たちは僕と2人きりだから甘やかしてしまうね。」

「おやつばかりで肥満にさせちゃイヤよ。」

「はいはい」


……ほら、なんでも私の思い通り。

私は神様が選んだ人間なんだから。


「トンネルを抜けるとそこは…」

いま、私はヒトリ、列車に揺られている。

私は、都会だなんて口が裂けても言えない田舎で生まれた。

だからなんだか、この感じが懐かしくて。

少しだけ、田舎町で生まれた素朴で無垢な私のこと教えてあげる。少しだけね。


駅というものは徒歩圏内に無く

バス停、というものさえ近くに無かった。

ただ、水の恵みは常にあったし、今も自慢の兄が田舎暮らしを満喫している。父は雇われ農夫だったらしいけれど、私がものごころついた時にはもう、自宅で在宅の紙花作りをしていた。

赤とか白とか、クレープみたいな紙を折って重ねて、黄色い花芯の周りに貼っていくんだけど、気の遠くなる作業よ。

脚を悪くしちゃって…。

仕方ないか。家族のために稼がなくちゃいけなかったしね。

私は絶対に金持ちの男と結婚する、って誓ったわ。


そのころの家計はというと、尼崎市出身の靴職人の末娘だったお母さんが、実家を手伝って支えていた。

貧しかったけれど…

靴墨が染みたお母さんの手や顔を、シンデレラみたい、私はシンデレラの子供!と信じてた。

とーってもオシャレさんで、お母さんのワンピースは未だに母の日には着てSNSにアップして偲んでいるのよ。

ほら私って、お母さんっ子だから。


地元の小学校に上がる頃には、私はクラスで目立つ容姿に成長していて、隣村の男子中学生が親のミゼットを盗んで何人かで見に来るようになっていたの。


そんな男子中学生のカノジョから、ひっぱたかれた事もあったかしら。


高学年に入ると、背も一気に伸びた。ゆるくウエーブした髪は、外国の女優さんみたいだと、父兄参観で噂された。

一部の若い女性教師以外、教職員はみんな私の味方だった。

率先して、彼らの前でだけは

花の水換えをし、机や黒板を拭き、職員室に質問をしに行った。

クラスの子達の話に聞き耳をたてて、先生あのね、って報告した。

ホウレンソウっていうの?

昔から出来ていたのよね。

…必ず、美華ちゃんという、ずんぐりむっくりで地味な顔の女の子と一緒に行動していたわ。

私がより、可愛く見えるように。


私には、専門学校を卒業するまで、

もしかしたら現在も?

彼女しか親友はいないかも。

だって、みんな私を妬んでいるから、みんなと合わなかったの。

仕方ないじゃない。

私はシンデレラのムスメなんだから。


そうね、今も各店舗のスタッフは私より可愛くなくてダサい子、老けてる人をセレクトしてる。

だって主役は私だもの。


やれば出来るんだけど、やりたくなくて、勉強。

こんなに見た目が大切なのか、って美容本やダイエット、メイクにしか興味を持てなかった。


県内最低偏差値の普通科高校に入学したけど、勉強がついていけなくて。

3年夏の中間試験でカンニングしたら、試験官が若い新卒の女の先生でまさかの停学。

女は私を嫌いだから。

…まあ、高校生活なんて大人になってからはバレないからいいけど。

いま周りで知ってるのはパパだけ。

イメージ壊れちゃうから、スタッフやお客様には内緒ね。


高校を卒業してすぐの

外国人とのねるとんパーティー、もちろん引き立ててくれる、美華を連れて参加したの。

その時、別の彼氏がいたんだけど…そこで、パパと出逢いました。

パパは日本人よ、九州男児。

パーティーの仕掛け人、主催者だったの。

当時はサラサラの茶髪をキムタク風にセンターパーツにしてサイドを流していてね、renomaのソフトスーツがイケてた。一番金回りが良さそうだったわ。プリマクラッセのセカンドバッグを小脇に抱えてた。

時代はバブル。

付き合いかたもゴージャスだった。ホテルでの食事に、会うたびにプレゼントと花束。

彼は私にこう言ってプロポーズしたわ。

「誰も知らない世界を見せてあげる」って。そこからが私、

ホントのシンデレラなの。


いくつかのトンネルを抜けて

今、「福知山駅」に着いて、

乗換のホームに立つ。

風も無くて、雪が降る音が聞こえてきそう。

映画のヒロインみたいね、私。


キラキラにスワロフスキーを付けたiPhoneに、着信。

ピンクの〈彼〉専用着信画面。

きっと私いま、

最高に綺麗な笑顔になってる。

左から右へ、スクロール。

「今、着いたわ。」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る