第3話キャビン

キャビンはいつものように

朝食を作っていた。

家族思いの夫ジョセフ、

可愛い一人息子のピエール。

キャビンには1つも不満などなかった。


ジョセフがボクシングという危険と

隣合わせの仕事をしている事はもちろん

知っている。


しかしキャビンは試合を1度も見た事はない。

ジョセフと結婚したのは彼が世界チャンピオン

になった年。

世界チャンピオンになったら結婚しよう。

その言葉から2年後の事だった。


出会いはキャビンが務めていた病院。

ボクサーとして怪我したのではなく

ジョセフが風邪をこじらせて

病院に来たのが出会いだった。

ジョセフのたくましい体格でいて

でも、物静かで誰にでも丁寧な対応で接する

人柄に惹かれた。

ジョセフも綺麗で、しかし気取ることも無く

患者さんに真摯に向き合うキャビンに

同じように惹かれて行った。


2人が付き合うのに時間はかからなかった。


そして初めてのデートで

彼がボクサーだという事を知る。


ナースという職業柄、ボクサーという

職業がどれほど危険な事かは理解出来る。


そして、こんなに優しそうなジョセフが

ボクサーだなんて少し信じられない気もした。

しかし心配な気持ちよりもジョセフと一緒に

いたい。その気持ちの方が強かった。


ジョセフの全てを愛したい。いや、愛している。

そう思っていた。

しかし、彼女もそう、、、

心の片隅の奥。

固い鍵で閉ざされた奥底に

何か違和感があった。


その違和感の答え合わせはしないまま。

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