第2話ピエール

そんなジョセフの大事な

宝物。

息子のピエールだ。


ピエールはパパのジョセフの事が

大好きだ。


生まれた時から世界王者のパパしか知らない。

いつもいつも判定の際パパの手が上がる。

その瞬間が、子供ながらにドキドキして

大好きだった。


しかし、ピエールも成長していく。

学校で家族だけではない他人との関わりを

持つ世界へと、いやでも身を置くことになる。


そこで聞こえてくる自慢だったパパへの

不満の声。臆病なチャンピオン。

1人も倒したことの無いチキンチャンピオン。


ピエールはその声が悲しかった。

怒りなど湧いては来ない。

ただただ、悲しかった。

自分か世界で1番強いと思っていたパパが

世間では非難されている。


パパはチャンピオンなのになんで、、、。


家に帰ればいつものように

強く優しいパパのジョセフがいる。


こんなに強くて優しい、、

負けたことも無い、、

世界チャンピオンなのに、、

ピエールには周りの声が理解出来なかった。


でも、心の片隅の奥。

固い鍵で閉ざされた奥底に

ピエール本人でも分からない

何か違和感があった。


その違和感が怖くて

その正体を知ろうとはしなかった。

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