傷のない父さん

第1話ジョセフ

ここはある町の高級住宅街。

その角地、一等地に一際大きな大豪邸。

そこでジョセフは綺麗な妻のキャビンと

8歳になる

一人息子のピエールと3人で暮らしています。

そう。彼は成功者。

40歳になった今も現役の

ボクシング世界チャンピオン

28戦28勝。完璧なレコードだ。

然し彼にはKO勝ちが1つもありません。

決してパンチ力がない訳では無い。

しかし彼は絶対にリスクを侵さない。

だから、彼の試合はいつも賛否両論。

歴代最弱のチャンピオン。

ジョセフまたもや塩試合。

試合翌日の新聞に書かれる言葉も

こんな見出しばかり。

でも、彼には強い信念があった。

30勝したら引退し

あとは大好きな家族と自由気ままな

暮らしをする。

だから、五体満足でボクシングを

引退する。

今までボクシングに捧げた時間を

今度は全て家族に捧げる。

その為に彼は少しのリスクも侵さない。

その徹底ぶりは逆に彼の強さの象徴でもあった。

ジョセフは勤勉で練習もジムの誰よりも

こなした。毎朝のロードワーク、

ジムでの練習。

夕方まで必ず毎日決められたように

みっちりやる。

彼は信じている。

この先に家族で待つ楽しい未来が待っている事を。

まだ誰にも告げてはいないが

あと二試合、、、

それで引退する。

いままで通り、リスクを侵さず

怪我もせず、リングを降りる。

あと2回それを繰り返せば

俺の任務は終わる。