宵崎家の遺産
枝川捜査官の日常
「ねえ、エロ動画の見過ぎだよ!!!」
同居人にそう言われた男は、振り返ってこう返す。
「ああ、気づかなかった、ごめん」
「いやいいんだけどね、そんなことよりもう出勤の時間だよ」
「わかった。……こんなこともあろうかとスーツで良かった」
「ほんと、こいつは……」
ガヤガヤと雑踏をかき分けて、男が立ち入り禁止のヒモを通り抜ける。
「ああ、枝川さん、もう現場に出ていいんですにゃ?」
と、制服を着た猫警官に言われた枝川は、こう返す。
「うん、始末書書いておしまいって感じ」
「へえ、女性絡みの不祥事でそんな軽い処分だったんですにゃ」
「まあ、直後にそれどころじゃなくなったからね」
猫警官に軽く揶揄された枝川は、苦笑しながら返す。
枝川は連合警察ニューラグーン支庁、通称ニューラグーン警察所属の捜査官だった。しかし、とあるスキャンダルで駿江島へ栄転という左遷になる。現在はここ駿江島で数少ない重要事件を捜査する仕事についている。
「それで、どうしたの?」
と、枝川に聞かれた猫警官は、こう返す。
「つい先日、この島最大に銀行で強盗がありにゃしてね、まあ本土の連中があらかた調べた後始末ということですにゃ」
猫警官と話しながら、枝川は犯行現場である銀行の中に入り、ある金庫の前に立った。
「ここで?」
「はいにゃ、証言者によると、強盗がなにか作業していた音がしてたとか」
「どんな音?」
「ドリル音とか、とにかくいろいろですにゃ」
「ふうん」
と、相づちを打ちながら、金庫の中に入る。
そこは事件当時のままになっているのか、とてもぐっちゃぐちゃになっていた。
「うわあ、めんどくさそうだなあ……」
「はいはい、わたしも手伝いにゃすから」
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