布石
カッコいいエージェントの話なら、ジェームズ・ボンドかイーサン・ハントでも見ればいい、女性ならロレーン・ブロートンでもいいな。
残虐非道の殺しなら、シリアルキラーや乱射魔の方が、見せ場があるし、アベレージもあちらの方が上だ。
殺し屋の話?誰が見たいんだ、そんなもの?
(古人の箴言)
学校の図書室に行ったボクは、お目当ての本を見つける。
『可愛いアーメンガード あるいは、田舎娘の心 著者:H・P・ラヴクラフト』というタイトルの本。
なんというか、これを借りろと言われないと借りない本ではある。
「はい、1週間後にお返しください」
「司書さん、この猫なんですか?」
と、ボクは足元でアクビをする猫について聞いた。
「ああ、私常駐の司書さんがいない時の代理なんですけど、遠くから来てるので、飼っている猫を特例で連れて来ているんです」
「へえ……」
ボクがそうなんだ~みたいなリアクションをしてる足元で、猫がにゃあとアクビをした。
さて、なぜボクがまったく興味のない本を学校図書室から借りなければならないのか、という話について少し。
ボクは、実はこのバイトの雇用主にあったことはないし、そもそも顔すらしらない。
たまに携帯にメールが入るくらいで、しかもめんどくさいことに、本の中に伝えるメッセージの本体を入れてるよという内容なのである。
その本も趣味的な感じで、今までこのバイトを2回しているのだけれども、その時メッセージを送る用に使われた本のタイトルだけあげると
『アイスクリームシンドローム』
『ルール→ルゴール→ルシフェル→ルチャドール→ルイス・キャロル』
というような、ボクにはまるで興味のない本だ。
しかし、なんでそんなあからさまに怪しい雇用主のバイトをしてるのかというと、今通っている学校やら寮に入ることができたのが、彼?彼女?かはわからないが、雇用主のおかげだったりするから。バイトに一回行くことに、うん千万とかが自分に入るのが良いのだが、正直な話、わりに合ってるのかどうか。
しかし、このバイトを勤めないと、アントーニオではないけど、内臓やらナニやらで借金を返さなきゃならない。それは嫌なので、ボクはバイトを真面目に勤めるのであった。
「ふうん、その娘さんかわいいんですか。いいっスね」
マキちゃんが、パソコンとにらめっこしながら、言う。
「そんな他人事みたいに言わんくても、良いじゃないよ。ボクと君の仲じゃないですか」
「そんなこと言ってもやさしくする訳ないじゃないですよ。ビジネスパートナーなんだから、そのくらいの間柄で良いじゃないですか」
「いやだ、イチャイチャしたい~!」
「はい、ワガママ言わないでください」
というような中身のない会話をボクとしているマキちゃんは、ボクのバイトのお手伝いをしてもらってる同室の三つ編みで眼鏡少女という、萌えポイント高めな娘である。ボクと彼女が出会ったキッカケも、このバイトである。ボクの最初のバイトの時、マキちゃんが巻き込まれてしまったのである。このバイトの特性として、『目撃者はなんらかの形で記憶を消すか、目撃者自体を消さねばならない』というルールがあるのだが、マキちゃんはここで女は度胸とばかりに
「あたしを雇ってください!
そりゃ、メインの『仕事』は出来ませんが、サポートは出来るッス」
と、言って、ボクも彼女の『
「それにしても、今回は特別なお仕事なんスねえ」
「うん、あと1週間くらいで引退する仲間というかセンセイがね……」
夢を見ていた。今回の依頼人と会ったときのことだ。
―ゲンガイさん、おひお久しぶりですね
―ああ、そちらは成長したにゃあ、胸以外
―ははは、それで、どうしてワザワザ、ボクなんかに?
―なに、できる限り少な目なメンバーで、秘密裡にやらにゃいといけにゃいことがあってにゃ……
起きると
『センパイへ:一応必要なモノは置いておきます。私は、友だちと勉強会をするので、今日は居ません』
という置き手紙といっしょに、いわゆるメイド服と、『仕事用』の安そうな皮の腕時計とスーツケースがあった。
中身を確認。
それにしても、マキちゃんはオタクライフ満喫してるなあ。
勉強って、言う『技術開発』だから、なんも言えないけど。
ともあれ、着替えてバイトに行かにゃ。
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