第4話:きらまりの

綺良「漫画、続けてみたら?」


夏休み最終日、綺良に言われたこの一言が茉里乃の人生を大きく変えた。

二学期が始まると、茉里乃は授業そっちのけでノートに漫画を描き続ける日々を送っていた。

ストーリーは綺良がアドバイスしてくれた。

なんだか綺良の頭の中を覗いているようで、茉里乃は描いていてとても楽しかった。

そのストーリーとは、不思議な力を持った主人公の占い師が一万円で百万円の夢を叶えるというもの。

綺良が茉里乃の家で書き起こしていた「やりたいことリスト」を漫画の題材にしたのだった。

漫画に付き物のペンネームは二人の名前を合わせて『きらまりの』にした。

茉里乃は一話描き終わるたびに綺良にノートを手渡し、綺良も嬉しそうにその漫画を読んでいた。

気がつくとノートは『きらまりの』の世界で溢れかえっていた。


あっという間に二学期も終わりに近づき、もうすぐ冬休みになる。

『きらまりの』の世界を描いたノートは5冊目に突入していた。

そして、そのストーリーはとうとうこの日、最終回を迎えたのだ。

最後のコマを描き終えると、茉里乃はこれまでの人生で味わったことのない達成感を感じていた。

同時に授業の終わりを知らせるチャイムが教室に鳴り響いた。

茉里乃は物語の結末をいち早く綺良に読んでもらおうと、大きく背伸びをしながらチラリと隣の席に視線を移した。

しかし、そこは空席だった。

さっきまで隣に居たはずなのに。

冬休みを目前にして、綺良は茉里乃の前から姿を消した。



つづく。

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